コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成29年度第13回開催 エンプレス杯 他

2月26日~3月2日の開催でメインとして行われたのは、牝馬によるJpnIIのエンプレス杯。昨年、3歳ながらスパーキングレディーカップを制していたアンジュデジールが勝って、川崎でダートグレード2勝目。鞍上は横山典弘騎手でした。 3月1日に行われた、クラウンカップトライアル・つばき賞は、全日本2歳優駿で8着だったサザンヴィグラスが人気にこたえて逃げ切りました。また同日メインに行われたB1B2の早春特別は、ゼンノウラヌスが好位から抜け出しての快勝。ともに鞍上は、川崎で期間限定騎乗中の吉原寛人騎手でした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2018年2月28日エンプレス杯

優勝馬 アンジュデジール

斎藤
サルサディオーネが逃げて、1番人気のプリンシアコメータは2番手、勝ったアンジュデジールは好位につけました。
竹見
アンジュデジールは、スタートダッシュがあまり良くありませんでした。それでも最内枠だったこともあって、無理せずそのまま内の3番手につけ ることができました。
斎藤
2周目の3コーナー過ぎまで、ほとんど隊列は変わりませんでした。
竹見
遅くもなく速くもなく、道中は淡々としたペースで進みました。3コーナー過ぎでは、ほかの馬が追い出しているところ、アンジュデジールの横山騎手の手ごたえは楽なまま、4コーナーまで追い出しを我慢していました。
斎藤
直線ではサルサディオーネが逃げ切るようにも見えました。
竹見
サルサディオーネの丸山騎手は、思い切って逃げたのがよかった。それでマイペースに持ち込んで、直線でも粘っていました。それでもアンジュデジールが差し切ったのは、追い出しをギリギリまで我慢していたぶんでしょう。横山騎手は、中央のレースを見ていても、追い出しを我慢して乗るようなことがよくあります。
斎藤
プリンシアコメータは、なんとかサルサディオーネをとらえての2着でした。
竹見
斤量55キロと、それほど背負っていたわけではないのですが反応がいまひとつで、思ったほど伸びませんでした。それでも最後はよく2着を確保したと思います。地方勢では笹川騎手のラインハートが、内でよく粘って4着に入りました。

2018年3月1日つばき賞

優勝馬 サザンヴィグラス

斎藤
吉原騎手のサザンヴィグラスが逃げて、瀧川騎手のヴオロスが2番手。そのまま道中は隊列がほとんど変わりませんでした。
竹見
スタートして、瀧川騎手はかなり気合を入れて行っているので、先頭に行ければ行く気だったと思います。それでもサザンヴィグラスのほうが内枠だったのでハナに行くことになりました。3コーナーあたりから瀧川騎手は前に並びかけようとしていましたが、吉原騎手は相手が来ればそのぶんだけ仕掛けて、前に出さないようにしていました。
斎藤
先行2頭の一騎打ちになりました。
竹見
的場騎手のシェーンリートも、3コーナーあたりでは2頭の直後につけていましたが、直線では差をつけられてしまいました。1、2番人気で57キロと56キロ、斤量も背負っていましたが、2頭は力が抜けていました。着差は3/4馬身ですから、もし枠順が逆だったら、瀧川騎手のヴオロスのほうが逃げることになって、結果は逆になっていたかもしれません。

2018年3月1日早春特別

優勝馬 ゼンノウラヌス

斎藤
勝ったゼンノウラヌスの吉原騎手は内の4番手につけました。
竹見
11番枠からのスタートで、うまく内に入れました。外を回るよりはと思って、内を狙っていたと思います。バラバラの縦長の展開になったので、前はちょっと速かったのかもしれません。先行勢はほとんど崩れて、前を争った馬では、真島騎手のディアクーシーが4着に粘っただけでした。
斎藤
吉原騎手は、4コーナーから直線で、狭いところを抜けてきました。
竹見
4コーナー手前で、吉原騎手の手ごたえはまだ楽なまま。外には森騎手のコスモフットライトがいて、うしろから庄司騎手のロジストームも来ていたので外に出すこともできず、前が壁になって抜けるところがありませんでした。直線を向いて、かなり余力を残していたので抜け出せましたが、前にいた馬の間を抜けるときは、声をかけていたかもしれません。吉原騎手は、前さえ開けばどこからでもという感じだったと思います。ゼンノウラヌスは余裕のある勝ち方で、上のクラスに入っても勝てると思います。