コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和6年度第3回開催 関東オークスJpnII 他

 6月10~14日の開催は重賞2本立て。習志野きらっとスプリントトライアルの川崎スパーキングスプリントは、ゴール前接戦となって、大井のプライルードが浦和のエンテレケイアをアタマ差でしりぞけ、1、2番人気での決着となりました。

 JpnIIの関東オークスは、1番人気に支持されたJRAのアンデスビエントが逃げ切り7馬身差で圧勝。鞍上は昨年デビューしたばかりの田口貫太騎手でした。なお、2着から7着は南関東所属馬がほとんどを占める結果でした。

 恒例の川崎ジョッキーズカップ第5戦は、6着馬までコンマ2秒差という大接戦のゴールとなって、大外を豪快に追い込んだ小林捺花騎手のシンデレラワルツが勝利。クビ差で2着には今年デビューした加藤雄真騎手のラムダが入りました。

 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2024年6月11日(火)川崎スパーキングスプリント

優勝馬プライルード


 900m戦ということで前に行った馬たちの決着になりましたが、4コーナーで少しごちゃつくような場面がありました。

 2番枠からラチ沿いを回ってきたプライルードは4コーナーでうまく外に持ち出しましたが、これは本田正重騎手の好判断でした。直線では追ってからぐんぐん伸びてきました。

 一方でエンテレケイアは直線を向いたところで前の2頭(ノボベルサイユ、ティアラフォーカス)が壁になるような感じで、内に進路を取りました。

 ゴール前は2頭の際どい決着になりましたが、最後にプライルードが先着したのは、4コーナーから直線でスムーズに運べたぶんだったかもしれません。

 惜しくもアタマ差で2着だったエンテレケイアは、4コーナーを回るときに勢いがありましたから、あそこに行くしかありませんでした。2頭の間を抜けられればまた違っていたかもしれませんが、それでもうまく内に切り替えて伸びて来ました。決して下手に乗ったというわけではなく、直線ではしっかり伸びていましたから、1、2着はほんの少しの展開のアヤだったと思います。

 1、2番人気での決着で、直線半ばまでこの2頭と競り合って3着だったティアラフォーカスも4番人気でしたから、能力通りの結果でした。

2024年6月12日(水)関東オークスJpnII

優勝馬アンデスビエント


 好スタートを切った1番人気のアンデスビエントが逃げて、1周目の3~4コーナーを回るところまでは飛ばしていましたが、スタンド前ではペースを落としました。人気馬に行かれたのでは、ほかの馬も抑えて追走していくしかありません。2コーナーあたりまではゆったりとしたペースで進んで、向正面に入って徐々にペースを上げていきました。アンデスビエントは直線で一気に後続を突き放しましたから、馬も強かったですが、田口貫太騎手のペース判断もよかったと思います。

 御神本騎手のミスカッレーラはぴたりと2番手の絶好位につけました。2コーナーあたりから前に並びかけていってもよかったと思いますが、徐々にペースアップしていたのでそうもいかず、直線の追い比べで突き放されてしまいました。力の違いもあったと思います。

 グラインドアウトの赤岡騎手は中団で脚を溜めて、3コーナーあたりから一気に動いていきました。4コーナーでミスカッレーラに内から並びかけたあたりでは赤岡騎手のほうが手応えはよく見えましたが、ミスカッレーラの方がしぶとく粘りました。

 ミスカッレーラのうしろ、3、4番手につけていた中央のメイショウヨシノ、イゾラフェリーチェあたりが早めに動いていけばペースが上がったと思いますが、向正面でもじっとしたままで、あまり積極的には仕掛けていきませんでした。位置取りはよかったと思いますが、3コーナーからのペースアップに対応できませんでした。この2頭は川崎のコースに適性がなかったのかもしれません。

2024年6月12日(水)2024川崎ジョッキーズカップ第5戦

優勝馬シンデレラワルツ

 このジョッキーズカップではよくあることですが、先行争いからペースが上がって縦長の展開になりました。逃げた本田紀忠騎手のミッシーコルザは直線まで先頭でしたが、ゴール前でうしろから一気に来られて6着。2番手につけた佐野遥久騎手のサヨノミニスターは最下位でした。

 勝った小林捺花騎手のシンデレラワルツは、スタートがあまりよくなく、馬も頭を上げていました。最初の直線では馬群の中に入れて行って、あまりスムーズな競馬にはなりませんでした。こういう馬はグッと抑えて、馬群の外につけていったほうがいいと思います。中団を追走して、勝負どころで位置取りを下げてしまいました。それでも直線で大外に持ち出して一気に追い込み、最後はよく差し切りました。勝ったからよかったですが、ちょっとロスの多い競馬でした。小林騎手は、追ってからなかなかいいところがあるし、ステッキの使い方もいいのですが、道中で仕掛けていくときにお尻をつくのを直したらもっとよくなると思います。

 新人の加藤雄真騎手(ラムダ)は、内の5番手で、前が飛ばしたことを考えると一番いい位置につけたと思います。直線を向いて、前にいた今野騎手(キーファイン)の外に持ち出したあたりなどは落ち着いていました。ゴール前で一旦は先頭に立って、勝ったと思ったのではないでしょうか。惜しくも2着でしたが、うまく乗ったと思います。

 1番人気の今野騎手は無理せず好位の3番手。逃げていたミッシーコルザをゴール前できっちりとらえていますから、これで負けたのでは仕方ありません。