コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和6年度第6回開催 スパーキングサマーカップ(SII) 他

 8月5~9日の開催では、真夏のマイル重賞・スパーキングサマーカップが7日(水)に行われました。先行争いから飛ばして逃げたアランバローズが粘るところ、縦長の中団を追走したフォーヴィスムがゴール前で差し切って重賞初制覇となりました。鞍上は吉原寛人騎手。そして管理するのは、この日の第1レースで地方競馬通算1500勝を達成した内田勝義調教師で、これが通算1501勝目となりました。
 同日第3レースで行われた2歳馬によるオオクワガタ特別は、直線を向いて神尾香澄騎手のピンクタオルチャンが先頭に立ちましたが、最後方を追走していたレッドサラマンダーが大外を追い込みクビ差とらえて勝利。鞍上は新人の佐野遥久騎手でした。
 この日の最終レースに行われた川崎ジョッキーズカップ第7戦は、2番手から3コーナー過ぎで先頭に立った藤江渉騎手のナムラキャッツが直線後続を寄せ付けず完勝。2着にはブービー人気、中越琉世騎手のメイワノワが入って3連単は17万円超の波乱決着でした。藤江騎手はジョッキーズカップ第1戦に続いてのシリーズ2勝目、74ポイントでトップに立ちました。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2024年8月7日(水)スパーキングサマーカップ

優勝馬フォーヴィスム


 アランバローズが譲らず逃げてのハイペースで、前半から縦長の展開になりました。勝ったフォーヴィスムは中団からの追走でしたが、馬群がかなりバラけたので、1番枠でもいつでも外に持ち出して仕掛けていけるような展開でした。
 フォーヴィスムの吉原騎手は3コーナーから位置取りを上げていって、直線ではアランバローズが逃げ切るような勢いでしたが、ゴール前でとらえて2馬身差は完勝でした。前走もそうでしたが、この馬は終いにいい脚を使います。中央から移籍してなかなか勝てませんでしたが、前走のトライアル(スパーキングサマーチャレンジ)でようやく勝って、今回も強いレースを見せました。
 トライアルで2着だったリンゾウチャネルも、3番手から直線でよく伸びてきました。
 アランバローズはもう少し抑えていけばよかったと思いますが、スタート後は内のポリゴンウェイヴも行く気を見せましたから、それを制してハナを主張したことで勢いがついてしまいました。それで無理に抑えると折り合いがつかなくなってしまうので、結果的にハイペースで飛ばして逃げることになったのは仕方ないでしょう。内枠にポリゴンウェイヴがいなければもう少し楽に逃げられたでしょうが、そのあたりが逃げ馬の難しいところです。それでもよく2着に粘りました。

2024年8月7日(水)オオクワガタ特別

優勝馬レッドサラマンダー

 レッドサラマンダーは1番枠でしたが、前走も最後方からの追走だったように、佐野騎手は前に行く気はなかったようで、先行集団からはかなり離れた最後方からの追走でした。佐野騎手はこの馬のデビュー2戦目から、今回で3回目の騎乗でしたが、終いにいい脚を使うのがわかっていての騎乗でしょう。
 3コーナーから仕掛けていって、4コーナーでようやく先行5頭のうしろにつけると、直線は大外からグングン伸びて差し切りました。佐野騎手はこういう馬で勝てたのは自信になると思います。大事に使っていけばよくなってくると思います。この脚質なら、直線の長い大井でどんなレースをするかを見てみたいです。
 神尾騎手のピンクタオルチャンは、先行集団の3、4番手ラチ沿いで、折り合いもついて一番いい位置につけました。4コーナーではうまく馬群をさばいて、直線で抜け出したところでは勝ったと思ったのではないでしょうか。これで負けたのでは仕方ありません。勝った馬が強すぎました。

2024年8月7日(水)川崎ジョッキーズカップ第7戦

優勝馬ナムラキャッツ

 佐野騎手のミッシーコルザが好ダッシュでハナをとって、藤江騎手のナムラキャッツも外枠(7枠12番)からでも出ムチを入れてピタリと2番手につけました。藤江騎手は3コーナーで手応え十分のまま先頭に立って、直線では後続を寄せ付けませんでした。馬の力もあったと思いますが、外枠でも思い切ってスタートから2番手につけたのが勝因でしょう。2着、3着が中団や後方からの追い込みだったところ、前につけて直線突き放す強いレースをしました。
 2着争いは接戦になりましたが、中団につけていた人気薄のメイワノワがゴール前で抜け出しました。中越騎手は追ってから手綱を緩めずしっかり追ってきます。ただ道中の姿勢が少し高いので、そのあたりは直したほうがいいかもしれません。
 この開催で怪我から復帰した新原騎手のゴールドフレイバーは、6番手あたりを追走して、3コーナーから前をとらえに行って直線半ばまでは単独2番手でしたが、ゴール前で一杯になって4着でした。1番人気ゆえに勝ちに行っての競馬だけにしかたないでしょう。