コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
令和6年度第11回開催 川崎マイラーズSIII 他
正月開催のメインは、開催時期が変更となって2年目となる川崎マイラーズ。2番手につけた船橋のムエックスが直線突き放しての圧勝で重賞初制覇となりました。鞍上は張田昂騎手でした。
2日の最終レースに行われた川崎2000シリーズ・百人一首賞(B2B3選定馬)は、先行勢が競り合う縦長の展開で、中団で脚を溜めたタイセイストラーダがゴール前で差し切りました。鞍上は今野忠成騎手でした。
4日の川崎ジャンプアップシリーズ・黒豆賞(C1)は、1番人気に支持された野畑凌騎手のレグノが直線を向いて先頭に立ちましたが、後方追走から直線大外を追い込んだ7番人気ヘクトプリンセスがハナ差とらえて勝利。鞍上は新原周馬騎手でした。
今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)
2025年1月3日(金)川崎マイラーズ
優勝馬ムエックス
内枠に入ったアランバローズは迷わずの逃げで、勝ったムエックスは楽に2番手につけました。先行5頭が一団となって、向正面では6番手以下が大きく離れる展開でした。アランバローズはハミを噛んでかかり気味の先行で、最後は苦しくなって後退しましたが、先行勢は必ずしもハイペースだったわけではなく、アランバローズ以外の4頭が前残りの決着となりました。
なかでもムエックスは直線を向いて先頭に立つと、あっという間に突き放しました。張田昂騎手は、逃げたアランバローズをぴたりとマークして自信を持って乗っていました。前走マイルグランプリ2着から2カ月半ぶりでしたが、張田京調教師が間隔をあけて大事に使ってきたのもよかったと思います。
5馬身離されましたが、2着にギャルダル、3着にリンゾウチャネルと、先行した実績馬が上位に入りました。リンゾウチャネルの安藤騎手はここ2年ほどで一気に勝ち星を伸ばしましたが、このときも外枠からスッと内に入れて先行集団の5番手、うまく乗っていました。
離れた6番手以下からは唯一、野畑騎手のオメガレインボーが直線追い込んできましたが、それでも5着まで。道中の位置取りとしてはやはり離されすぎたと思います。
2025年1月2日(木)百人一首賞
優勝馬タイセイストラーダ
向正面からスタートする2000メートル戦で、最初の3~4コーナーからやや縦長になりましたが、スタンド前の直線ではペースが落ち着きました。そこで動いていったのが矢野騎手(マルカンブロンド)で、一気にハナに立ちました。それに3頭がついていって先行集団は4頭。5番手以下はやや離れてさらに縦長になりました。
途中から先行した4頭は厳しいペースだったようで、中団から後方にいた馬たちの勝負になりました。直線半ばで一旦抜け出したのは笹川騎手のサヨノフィールドでした。序盤は矢野騎手と同じような位置にいましたが、矢野騎手が動いていったときも中団でじっとしたままでした。この馬が勝ったかに思えましたが、ゴール前で差し切ったのが、さらにうしろから追ってきた今野騎手のタイセイストラーダでした。笹川騎手も今野騎手も、ペースを読んで絶好のタイミングで仕掛けて、どちらが勝ってもという展開でしたが、タイセイストラーダに最後のひと伸びがありました。
1周目でペースアップした先行4頭の中には1番人気のキタノヒーロー(張田騎手・5着)、2番人気のトーホウボルツ(御神本騎手・14着)がいました。矢野騎手が動いていったところで、人気馬ゆえに勝ちに行ったぶん、思った以上に厳しいペースになったのかもしれません。
2025年1月4日(土)黒豆賞
優勝馬ヘクトプリンセス
ハナをとった山崎騎手(パワポケウイング)がマイペースの逃げに持ち込んで、抜群の手応えで直線を向きましたが、3番手から直線を向いて先頭に立ったのは、野畑騎手のレグノでした。正攻法で完全に勝ったようなパターンでしたが、新原騎手のヘクトプリンセスが馬場の真ん中を一気に伸びて差し切りました。
新原騎手は1番枠でしたが、後方2番手からの追走で、3~4コーナーでは思い切って大外をまくってきました。川崎の4コーナーは、勢いをつけてきたらそのまま外を回して正解です。それにしても最後の伸びはすばらしかった。
1番人気のレグノは惜しくもハナ差2着でしたが、これで負けたのでは仕方ありません。野畑騎手は道中の姿勢はいいのですが、追ってくるときに長手綱で上体を動かし過ぎるところがあります。川崎ではリーディングの上位を争うところまで来ていますから、そのあたりを直せばもっと成績はよくなるかもしれません。