コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
令和7年度第8回開催 鎌倉記念 他
10月13~17日の開催では、2歳馬による重賞・鎌倉記念が行われました。勝ったのは北海道から遠征のベストグリーンで、4コーナーで先頭をとらえると直線突き放して4馬身差の圧勝となりました。全日本2歳優駿JpnIが最大目標とのこと。
同日第7レースに行われた川崎2000シリーズ・和田塚賞は、2番手から3コーナー手前で先頭に立ったカネトシシュキンが、ゴール前一気に迫ったファイナルワンダーを半馬身差でしのいで勝利。鞍上は山林堂信彦騎手でした。
16日第5レースに行われた川崎ジャンプアップシリーズ・大太刀賞は、大外枠から逃げたリュクスレオンが直線後続を突き放して5馬身差の圧勝。転入後4戦目での初勝利となりました。鞍上の町田直希騎手は、この開催7勝、2着4回で開催リーディングとなる活躍でした。
今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)
2025年10月15日(水)鎌倉記念
優勝馬ベストグリーン
レースは競馬場で見ていましたが、ベストグリーンはパドックでも目立っていました。500キロを超える馬体で、全体のバランスがよく見えました。
スタート後の直線では前3頭が競り合うような感じで先行して、ベストグリーンはそのうしろ4番手。あえて馬を前に置く位置でレースをしたのではないでしょうか。
向正面では後方から矢野騎手(ララメテオ)が仕掛けて一気に先頭に立ちました。それでもベストグリーンの小野騎手は慌てることなく、ほとんど手綱を動かしていません。よほど自信があったのでしょう。落ち着いて乗っています。3コーナー過ぎで外から一気に上がって行くときも、まだ目一杯追っているわけではなく、軽く手を動かしているだけです。直線を向くと、並ぶ間もなく前の2頭をとらえて突き放しました。このレースぶりなら、中央からどんな馬が来るかはわかりませんが、全日本2歳優駿でもいい勝負ができるでしょう。
2025年10月15日(水)和田塚賞
優勝馬カネトシシュキン
スタートでは山林堂騎手(カネトシシュキン)が行く気を見せましたが、その外から神尾騎手(コスモキルカス)が、何が何でもという感じで来たので、山林堂騎手は控えました。神尾騎手は、調教師からそういう指示があったのかもしれませんが、かなり無理して行きました。それでも先頭に立ったところで抑えればよかったのですが、そのまま後続を離しての逃げで、ちょっと飛ばし過ぎでした。
カネトシシュキンは離れた2番手でしたが、そのあとはペースが落ち着いて、1~2コーナーあたりで息を入れることもできて、実際にはマイペースで逃げているのと同じ展開になりました。コスモキルカスが一杯になった向正面で自然な形で先頭に立つと、1番人気のヴォルオヴァンがぴたりと追ってきましたが、3番手以下は離れました。その後続勢が3コーナー過ぎではすでに追い通しだったのに対して、山林堂騎手の手応えはまだ楽でした。直線では単独先頭に立って、ゴール前ではさすがに脚が上がっていましたが、なんとか粘り込みました。
ゴール前、一気に迫ったのは、笹川騎手のファイナルワンダーでした。3コーナーでは中団の8番手あたり、4コーナーでもまだ前とは差のある5番手。好位勢が勝ち馬を早めに追いかけたのに対して、笹川騎手は脚を溜めて直線勝負に賭けて追い込みました。惜しくも届きませんでしたが、よく半馬身差まで迫りました。
勝ったカネトシシュキンは、先行争いから早めに2番手に控えて、マイペースに持ち込めたのが勝因でしょう。それにしても2000メートルのレースで、スタートであれだけ競り合って、よく勝ちました。
2025年10月16日(木)大太刀賞
優勝馬リュクスレオン
勝ったリュクスレオンは、大外(13番)枠でも町田騎手が一気にハナを取りに行きました。内で抵抗する馬もいなかったので、すんなりハナに立って、1コーナーの手前でペースを落とせたのが勝因でしょう。リュクスレオンは川崎でのここまで3戦で逃げたことはありませんでしたが、調教師からそういう指示があったのか、最初から逃げるつもりだったのでしょう。途中からペースが落ち着いたわりに、縦長になったことも、この馬にとっては楽な展開になりました。
ぴたりと2番手を追走した山林堂騎手(クロームウルフ)が2着でしたが5馬身離されました。1番人気の笹川騎手(フリューゲルクー)は中団から向正面で早めに動いて来ましたが3着。町田騎手の思い切ったレースぶりが際立ったレースでした。
