コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和6年度第13回開催 啓蟄特別 他

 昨年はネクストスター東日本が行われた3月上旬の第13回開催でしたが、今年同競走は浦和での開催となったため、令和6年度の最終第13回開催(3月3~7日)では重賞は組まれませんでした。
 初日のメイン、啓蟄特別(B3)は最後方からの追走となった8番人気、カタルシスが直線大外から豪快に差し切りました。鞍上は川崎で期間限定騎乗中の吉原寛人騎手でした。
 5日に行われた恒例の川崎ジョッキーズカップ第1戦は、1番人気に支持された野畑凌騎手のサザンフルーヴが2番手から直線半ばで先頭に立つと、ゴール前迫った神尾香澄騎手のシヴァシンをハナ差しのいでの勝利となりました。野畑騎手は翌6日第7レースで通算300勝を達成、この開催では9勝を挙げる活躍でした。
 6日の最終12レースに行われた鳴門賞(C1)は、好スタートから2番手につけたリコーベレッタが3コーナーで一気に先頭に立つと、並びかけてきたカレンタクトを直線で振り切っての勝利。鞍上は佐野遥久騎手で、今開催は4勝を挙げました。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2025年3月3日(月)啓蟄特別

優勝馬カタルシス

 御神本騎手のヒノデミッチーが先頭に立って、並びかけた新原騎手のモトサンも無理には競りかけず、1コーナーの手前で隊列が決まってペースも速くはなりませんでした。それでも勝ったカタルシスはスタートもよくないですし、押しても行けず、縦長の展開で今回も最後方からでした。
 1番人気の笹川騎手(ツカサレヴズ)は4番手から直線を向いて先頭のモトサンをとらえてという正攻法の勝ちパターンに持ち込みましたが、結果3着。
 カタルシスの吉原騎手は3コーナーから動き出して大外から進出。4コーナーでもまだ前とは離れた中団でしたが、あそこからよく伸びて差し切ったと思います。落ち着いたペースで縦長の展開では、普通なら2コーナーを回ったあたりから動きたくなるところですが、吉原騎手はじっと我慢していました。これは吉原騎手の腕で勝ったように思います。
 佐野騎手のチューウィーは10番人気でしたが、人気のツカサレヴズを追いかけるように位置取りを上げて、ゴール前はよく伸びました。一旦はツカサレヴズを交わして先頭に立ちかけて、佐野騎手は勝ったと思ったかもしれません。惜しくもクビ差でしたが、あれでうしろから差されたのでは仕方ありません。

2025年3月5日(水)2025川崎ジョッキーズカップ第1戦

優勝馬サザンフルーヴ

 藤江騎手(ツワモノ)がすんなりハナに立って、2番手は4頭横一線のまま1~2コーナーに入っていくかと思いましたが、外の野畑騎手(サザンフルーヴ)が1コーナーを回るところでも勢いを緩めず押して行きました。おそらく思ったよりペースが上がらなかったので、2番手を取りに行ったのでしょう。野畑騎手はゲートを出て積極的に位置を取りに行くのがいいところです。それが勝ち鞍が伸びている要因でしょう。2番手を取りきったことで、向正面で息を入れることができました。
 藤江騎手が直線でも先頭で、野畑騎手は4コーナー手前から手を動かしていましたが、それでもまだ余裕はあって、ゴール前で差し切りました。後方を追走していた神尾騎手(シヴァシン)も一気に迫りましたがハナ差届かず。神尾騎手もうまく乗っていたので、これは惜しかった。
 野畑騎手は積極的に先行したのが、最後のハナ差先着につながったと思いますし、押して行って最後まで粘らせるのも野畑騎手のいいところです。
 やはり後方追走だった伊藤騎手(ガリンシャ)もゴール前よく伸びて3着。逃げた藤江騎手が粘って4着。縦長の展開でも、先行2頭と後方から追い込んだ2頭での決着になりました。

2025年3月6日(木)鳴門賞

優勝馬リコーベレッタ

 矢野騎手のスターアドミラルが内枠からハナに立って、佐野騎手のリコーベレッタは外枠からでもスッと2番手につけました。佐野騎手はゲートを出すのもうまいです。
 3コーナー過ぎではスターアドミラルが徐々に後退したので、リコーベレッタは自然と先頭に立ちました。3番手から山崎騎手のカレンタクトが並びかけてきましたが、直線ではリコーベレッタがあっさり突き放しての強い競馬でした。外枠でもスタートで2番手につけられたのがひとつ勝因でしょう。
 それにしてもスターアドミラルは直線ずるずる下がって最下位でした。矢野騎手は追ってなかったので、おそらくどこかに違和感があったのかもしれません。