コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和6年度第12回開催 報知オールスターカップSIII 他

 2月4~8日の開催では、22回目を迎えた佐々木竹見カップジョッキーズグランプリが行われました。第1戦は若干20歳で愛知代表となった塚本征吾騎手が制し、第2戦は川崎で期間限定騎乗中の吉原寛人騎手(金沢)が勝利。総合優勝は、3着・1着の吉原騎手で、塚本騎手は2位。そして第2戦で2着に入った野畑凌騎手が3位の表彰台に立ちました。
 この開催の重賞は、川崎記念トライアルの報知オールスターカップ。昨年、川崎記念を制し、NARグランプリ年度代表馬となったライトウォーリアが断然人気に支持されましたが、勝ったのは浦和のヒーローコールで、ライトウォーリアを半馬身差で振り切っての逃げ切りでした。鞍上はJRAの内田博幸騎手でした。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2025年2月4日(火)佐々木竹見カップジョッキーズGP マイスターチャレンジ

優勝馬シンメロワン


 逃げたのは宮川騎手(タイセイスパート)で、2000mという距離もあって序盤からペースが落ち着いたものの縦長の展開になりました。
 勝った塚本騎手(シンメロワン)は差のない3番手を追走して、4コーナーで前をとらえるときにも手応えはまだ余裕がありました。離れた4番手から下原騎手(ウロボロス)が追ってきましたが、差を詰めることはできませんでした。
 塚本騎手の3番手追走はおそらく調教師の指示もあったでしょうが、いいタイミングで追い出しました。塚本騎手は姿勢もいいし、追ってくるときも上体がぶれません。勝負服が笹川騎手と似ていますが、追ってくるスタイルも笹川騎手と似ています。まだ若いですから、これからもっと勝ち星を増やしてくるのではないでしょうか。
 中団を追走していた吉原騎手(ダルジェント)は、4コーナーで内を突いて直線ではそのまま内を伸びて3着でした。吉原騎手は川崎での経験も豊富ですから、さすがにいいコース取りをします。

2025年2月4日(火)佐々木竹見カップジョッキーズGP ヴィクトリーチャレンジ

優勝馬ヴィブエアー


 1600m戦ですが、このレースも1コーナーを回るあたりで縦長の展開になりました。
 勝った吉原騎手(ヴィブエアー)は、スタートから仕掛けていって、ハナに立つような勢いでしたが、内からも外からも来たので、控えて先行集団の5、6番手、いい位置につけました。3~4コーナーで内から位置取りを上げていくと、4コーナーを回るところでは前に2頭だけ。進路ができた外に持ち出すと、あとは前の2頭を交わすだけという完璧な勝ち方でした。
 野畑騎手(サラサグッドワーク)は縦長の後方2番手からの追走でした。4コーナーでもまだ中団のうしろでしたが、直線大外に持ち出すと、そのまま一気に前に迫りました。前が流れたぶん、後ろからでも上位争いに間に合いました。勝てはしませんでしたが、野畑騎手の好騎乗でした。
 3着だった山本騎手(カナールショウヘイ)は、4コーナーで吉原騎手が外に出していったところ、内を突いていきました。外を選択していたら、吉原騎手のさらに外を回らされることになるので、内を突いたのは正解です。直線、よく伸びてはいましたが、最後にやや離されての3着は、現状の能力の差でしょう。

2025年2月5日(水)報知オールスターカップ

優勝馬ヒーローコール


 このレースは、スタートしてから最初の3コーナーまでで、ある程度勝負がついたと言ってもいいかもしれません。昨年逃げ切っていたライトウォーリアが今回も逃げるかと思いましたが、ヒーローコールの内田騎手は好ダッシュから気合を入れていって、ハナを譲りませんでした。外枠だった吉原騎手は、あまり競りかけていっても共倒れになりますから、3コーナーを回るあたりでとうとう引かざるを得ませんでした。
 4コーナーではライトウォーリアがヒーローコールをとらえにかかって、そのまま抜け出すかと思いましたが、直線ではヒーローコールがもう一度前に出て、あとは差を詰めさせず、半馬身の差を保ったままゴールとなりました。
 ヒーローコールは、逃げて2着3着で勝ち切れないレースが多かったですが、バテることもないですから、最後までもたせられたのは内田騎手の腕でしょう。スタートしてからライトウォーリアの吉原騎手との駆け引きで、譲らなかったのは内田騎手の好判断でした。内田騎手はこの馬には初騎乗ですが、内田騎手ほどになれば返し馬でどんな馬かだいたいわかります。それで、逃げないと勝てないと判断したと思います。2頭とも逃げて最後までバテないという、同じような脚質ですから、今回その持ち味をより発揮させたのが内田騎手でした。内田騎手が先輩の意地を見せた、いいレースでした。