コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
平成28年度第13回開催 川崎記念 他
1月から2月にかけての開催では、恒例の佐々木竹見カップ・ジョッキーズグランプリが行われました。第1戦で勝利し、第2戦でも3着に入った浦和の繁田健一騎手が優勝。15回の歴史で単独最多となる3度目の優勝となりました。 その日の最終レースとして行われた『王者の眼差し賞』では、昨年還暦を迎えた大井の的場文男騎手が、船橋・本田正重騎手との一騎討ちを制しました。 そして今年最初のJpnI、川崎記念は、地方初参戦のオールブラッシュが逃げ切り勝ち。鞍上のクリストフ・ルメール騎手は川崎記念3勝目となりました。 今回はこの4レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)2017年2月1日(水)川崎記念
優勝馬 オールブラッシュ
- 斎藤
- ルメール騎手のオールブラッシュがハナを奪って、ひとつ内の枠だった武豊騎手のケイティブレイブが2番手に控えました。
- 竹見
- ルメール騎手は抜群のスタートを切って、押して行きました。おそらく最初から逃げるつもりだったのではないでしょうか。その勢いがあったので、武騎手は控えざるをえなかったと思います。
- 斎藤
- スタンド前でペースが落ち着いたところでミツバが仕掛けていきました。
- 竹見
- 2番手の武騎手も抑えていたし、ペースが落ちついたので、ミツバの横山騎手は仕掛けたと思います。これはこれでよかったと思います。ただ、無理にハナまでは取りに行かずに控えたので、ルメール騎手のオールブラッシュにはいい流れになりました。
- 斎藤
- 直線ではあっという間にルメール騎手が突き放しました。
- 竹見
- 全体的に流れはそれほど速くなかったですし、3コーナーから全体がペースアップしたときにもルメール騎手は抑えたまま。4コーナーまでじっくり溜めていました。ルメール騎手のペース配分がよかったです。好騎乗でした。
- 斎藤
- 人気のサウンドトゥルーはゴール前追い込みましたが2着でした。
- 竹見
- 前半から仕掛けて最後に伸びるという馬ではないので、後方からになったのは仕方ないと思います。勝ち馬以外の馬はとらえきっているので、今回は勝ったルメール騎手を褒めるべきでしょう。
- 斎藤
- 接戦の3着争いで先着したのは、中央馬ではもっとも人気のなかったコスモカナディアンです。
- 竹見
- コスモカナディアンは先行集団のうしろからの追走でした。3、4コーナーでは経済コースのラチ沿いぴったりを回ってきたのが、最後のわずかな差になったと思います。
2017年1月31日(火)マイスターチャレンジ
優勝馬 フロジストン
- 斎藤
- 逃げたのは1番人気、丸野騎手のミッドジェラート。勝った繁田騎手のフロジストンは3番手の内につけました。
- 竹見
- 繁田騎手は、3番枠から追っていって3番手の内、絶好位につけました。先行争いにはならなかったので、ペースはあまり早くなりませんでした。
- 斎藤
- 3、4コーナー中間、繁田騎手は前の2頭をとらえればという展開でした。
- 竹見
- 繁田騎手は4コーナーまで引っ張ったまま。手ごたえ抜群だったので、4コーナーを回るところで前2頭の外に持ち出して、追い出したら楽に交わすだろうと思って見ていたのですが、意外に苦労しました。前も楽なペースだったのでしょう。それでも最後は抜け出しました。道中で脚を溜めたぶん、最後に切れる脚が残っていました。それにしても繁田騎手は、このシリーズでの活躍が目立ちます。
- 斎藤
- ゴール前、兵庫の下原騎手と、森泰斗騎手が一気に伸びてきました。
- 竹見
- 下原騎手はスタートでダッシュがつきませんでした。それで後方から。森騎手もそのうしろから。3コーナー過ぎでは2頭とも思い切って外に持ち出して、直線でもそのまま外から伸びました。終いの脚に期待してのレース運びだったと思います。
2017年1月31日(火)ヴィクトリーチャレンジ
優勝馬 スーパーノヴァ
- 斎藤
- 森騎手が思い切って逃げて、矢野騎手が2番手。勝った山崎誠士騎手は中団よりうしろからの追走でした。
- 竹見
- 森騎手のエメンタールベルンは、普段はあまり行く馬ではないのですが、スタートで勢いをつけたら掛かってしまいました。1600メートルくらいの距離ならよかったと思いますが、このクラスの2100メートル戦としてはハイペースになりました。1周目のスタンド前ではペースが落ち着いたところもありましたが、向正面でまたペースが上がったので、展開はかなり縦長になりました。
- 斎藤
- 勝った山崎騎手は3、4コーナーから一気にまくってきました。
- 竹見
- かなりペースが流れていたので、道中は後方で脚を溜めて、最後に賭けたのでしょう。ペースの読みがよかったです。直線を向いてからの脚は際立っていました。
- 斎藤
- 4番手を追走していた中野省吾騎手が直線一旦は先頭に立って、2着に粘りました。
- 竹見
- 中野騎手は互角のスタートからすぐに好位につけました。3コーナー過ぎから仕掛けて行って、うまく乗ったと思います。直線でもなかなか勝ち馬に交わさせずに粘りました。先行勢はほとんどが崩れたなかで、残ったのは中野騎手のエスシーカレントだけ。勝ち馬とは3/4馬身差です。一番強いレースをしたのが、中野騎手のエスシーカレントでした。繁田騎手は中団追走から、内の経済コースを回ってきて3着でした。
2017年1月31日(火)王者の眼差し賞
優勝馬 サウスデイウォーク
- 斎藤
- 向正面では左海誠二騎手の大逃げとなりました。
- 竹見
- 左海騎手のヴィグシュテラウスは掛かって行っていますから、離れた2番手、的場騎手のサウスデイウォークが実質、逃げているのと同じです。いつもは3、4番手の好位から進めて差しきれない馬が、今回、外枠からの発走でしたが、積極的に行ったのがよかったです。
- 斎藤
- 直線は、本田騎手のデルマハンニャと一騎打ち。結果的に人気上位馬での決着になりました。
- 竹見
- 1番人気の本田騎手は、的場騎手のうしろの内をぴったり追走しました。3コーナー過ぎでは的場騎手の外に持ち出して、早くも一騎打ちという感じになりました。メンバー的にもこの2頭の力が抜けていました。最後は的場騎手が交わさせずに粘りました。サウスデイウォークは、このクラスならもっと早くに勝っていてもよかった馬です。本田騎手のデルマハンニャはブリンカーを付けていました。ブリンカーを付けている馬が追い比べになると、横が見えないので交わしそうでも交わせない時があります。