コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成29年度第11回開催 報知オールスターカップ 他

正月開催恒例のメインとして行われた報知オールスターカップは、大井のディアドムスが直線で後続を突き放す圧巻のレースを見せました。鞍上は、名古屋の岡部誠騎手でした。 元日のメインに行われた迎春盃は、2番手追走から直線で抜け出した櫻井光輔騎手のドリームエルダーが、ゴール前で押し寄せた後続を振り切り8番人気での勝利となりました。そして4日の最終レース、末広特別は、最後方を追走したヤマニンバリトンが直線一気を決めての快勝。鞍上は山崎誠士騎手でした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2018年1月3日(水)報知オールスターカップ

優勝馬 ディアドムス

斎藤
スタートでは、金沢のメイジンと、川崎転入初戦で阿部龍騎手が騎乗したスーパーステションが競り合って行きました。
竹見
前の2頭は、2100メートルの距離を考えると、ちょっと飛ばし過ぎました。最初の3コーナーではスーパーステションがコーナーを回れずに外に膨れてしまいました。今回、初めての左回りで、調教はやっているんでしょうが、やはり調教とレースは違います。
斎藤
勝ったディアドムスは、中団の内を追走しました。
竹見
スタンド前ではペースが一気に落ち着いて、馬群が一団になりました。岡部騎手のディアドムスは、いい位置取りではあるんですが、ずっと中団の内に包まれたままでした。それでも向正面で的場騎手(キスミープリンス)が仕掛けていったところでようやくペースが上がって、レースが動きました。
斎藤
岡部騎手は4コーナー手前でようやく外に持ち出すことができました。
竹見
たしかに3コーナーまでは外に持ち出せるところがありませんでした。ただ3~4コーナーの中間で、前のトロヴァオ(御神本騎手)が手ごたえよく行ってくれたこと、さらに外にいた和田騎手のトーセンハルカゼが一杯になって下がってくれたことで、前4頭の後ろに空間ができて、そこを突いてうまく外に持ち出すことができました。岡部騎手はディアドムスには4回目の騎乗で、能力があることはわかっていますから、落ち着いて乗っています。もし和田騎手に手ごたえがあって外から被せられていたら、直線まで外に出せるところはなかったかもしれません。
斎藤
ディアドムスは直線で一気に伸びました。
竹見
追い出されてからの伸びが他の馬とはまったく違っていました。前走でも勝っていますが、大井の長い直線なら、さらに強いレースをするのではないでしょうか。トロヴァオが、3~4コーナーの手ごたえほどは直線伸びず3着でした。こちらはこの距離は少し長かったのかもしれません。

2018年1月1日(月)迎春盃

優勝馬 ドリームエルダー

斎藤
ドリームエルダーの櫻井騎手は、外枠からのスタートですんなりと2番手につけました。
竹見
外枠に入って好位につけられればと思って見ていましたが、そのとおりのレースになりました。縦長の展開になって、前は少しペースが速かったかもしれませんが、積極的に前に行ったのはいいと思います。
斎藤
逃げた真島大輔騎手のペプチドアポロを終始ぴたりとマークして、3~4コーナー中間で先頭に立ちました。
竹見
無理に抑えず、馬の行く気に任せて先頭に立ったのがよかったです。タイミング的には先頭に立つのが早かったかもしれませんが、結果的にそれでよかったと思います。
斎藤
直線では単独で先頭に抜け出しました。
竹見
ゴール寸前で後続の2、3頭が一気に来ましたが、最後はよく粘らせました。直線を向いて追い出し、一気に後続との差を広げたぶん、粘れたんだと思います。この馬は今までは中団あたりからレースをしていましたが、積極的に2番手をとって、早めに先頭に立ったことで結果につながりました。減量があるうちは、無理して控えずに、どんどん先行していったほうがいいです。

2018年1月4日(木)末広特別

優勝馬 ヤマニンバリトン

斎藤
このレースでも前2頭が競り合って行きました。
竹見
真島騎手(ドリームミリオン)が出ムチを入れて行く気を見せ、外の瀧川騎手(ソワンドタイガー)も譲りませんでした。まるで900メートル戦のような先行争いでした。こういう場合は外の瀧川騎手が遠慮すべきでしょう。結果的にこの2頭は(12頭立て)11着、12着での入線でした。
斎藤
勝った山崎騎手のヤマニンバリトンは、前走に続いて最後方からの追走でした。
竹見
互角のスタートでしたが、ダッシュ力がないのか、押して行っても最後方でした。
斎藤
さすがにスタンド前でも縦長の展開でした。
竹見
前で競り合った2頭にリンゴカン(仲野光馬騎手)もついていって、離れた4番手のハナリュウセイ(服部茂史騎手)あたりがいいペースでした。結果的に、そのハナリュウセイが3着に粘りました。
斎藤
山崎騎手は3~4コーナーで大外から進出しました。
竹見
向正面の中間、残り半マイルあたりから徐々にペースを上げていって、直線大外一気でした。山崎騎手は以前にこの馬に乗っていたとはいえ、昨年7月以来の乗替りにもかかわらず自信満々で乗っていました。終いの脚がいいのはわかっているからでしょう。前が競り合ってくれたことも、この馬にはよかったと思います。