コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成30年度第12回開催 川崎記念 他

1月28日から2月1日の開催のメインはJpnIの川崎記念。勝ったのはミツバで、7歳でのJpnI初制覇となりました。鞍上は和田竜二騎手でした。 そしてこの開催の恒例は、佐々木竹見カップジョッキーズグランプリです。2着、4着の森泰斗騎手(船橋)、4着、2着の戸崎圭太騎手が同ポイントとなりましたが、メインレースで先着した戸崎圭太騎手(JRA)の優勝となりました。なお第1戦を制したのは山本聡哉騎手(岩手)、第2戦を制したのは赤岡修次騎手(高知)でした。 そして31日のメイン、多摩川オープンで直線鮮やかに抜け出したのは6番人気のトキノパイレーツ。鞍上の森下博騎手は63歳8カ月で、地方競馬の最年長勝利記録を更新しました。 今回はこの4レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年1月30日(水)川崎記念

優勝馬 ミツバ

斎藤
逃げたのはサルサディオーネでしたが、1周目のスタンド前でオールブラッシュが動いていきました。
竹見
サルサディオーネが抑えてスローになりかけたところ、オールブラッシュの田邊騎手が仕掛けていったことで、レース全体でペースが落ちるところがほとんどありませんでした。ただオールブラッシュにしてみれば、そこで一気にハナに立てればよかったですが、サルサディオーネの丸山騎手が譲らなかったので苦しくなりました。
斎藤
人気のケイティブレイブは3番手の内でした。
竹見
福永騎手にしてみれば、早いうちに外に出したかったと思いますが、コパノチャーリーにぴたりと外に付かれて出すタイミングがなく、ようやく外に出せたのは3コーナーでコパノチャーリーが後退してからでした。
斎藤
サルサディオーネも後退して、4コーナーからは、オールブラッシュ、ケイティブレイブ、ミツバ、3頭の争いになりました。
竹見
ミツバにとっては、オールブラッシュがペースを上げてくれたことでレースがやりやすくなりました。直線を向いて、2頭の間の狭いところを突くことになりましたが、勢いからして外を回していてもおそらく勝てたでしょう。ただケイティブレイブの内で半馬身くらいのところに迫っていましたから、そこから下げて外に持ち出すわけにはいきませんでした。ペースアップしたところで一旦下げて、3コーナーから勝負に行ったのが勝因でしょう。和田騎手はうまくペースを読みました。2着だったケイティブレイブは、馬の行く気に任せて好位を追走していましたから、これで負けたのでは仕方ありません。外枠に入って外を回ってこられたら、また結果は違っていたかもしれません。

2019年1月29日(火)佐々木竹見カップジョッキーズGPマイスターチャレンジ

優勝馬 シカゴジャズ

斎藤
1番人気になった山本聡哉騎手が逃げました。
竹見
ダッシュがよかったのは山口勲騎手のミッキーオフィサーでしたが、山本聡哉騎手のシカゴジャズは外枠だったこともあって仕掛けて行きました。ここ2戦も逃げていましたから、おそらくハナに行くことは内田調教師からも言われていたのでしょう。
斎藤
縦長の展開になりましたが、結局は前に行った4頭での決着でした。
竹見
離れた2番手が山口騎手で、森騎手、戸崎騎手も、3、4番手のいいところにつけて行きました。それにしても勝ったシカゴジャズは2着に8馬身ですから、ここでは力が違いました。この馬はB級に入っても通用しそうです。森騎手のブルベアアオジソは好位でうまく脚を溜めて、最後はよくミッキオフィサーをとらえたと思います。

2019年1月29日(火)佐々木竹見カップジョッキーズGPヴィクトリーチャレンジ

優勝馬 タニノホウザン

斎藤
逃げたのは、第1戦で4着だった戸崎騎手のケイティーテンリウでした。
竹見
戸崎騎手は、スタート後はけっこう追って行きました。その後、隊列が決まったところでうまくマイペースに落としました。内枠だったので、多少無理してでもハナに立ったのはよかったと思います。
斎藤
勝った赤岡騎手のタニノホウザンは好位のうしろ、ラチ沿いでじっとしていました。
竹見
ペースは遅くも早くもなく、好位につけた馬にはいいペースだったと思います。
斎藤
戸崎騎手のケイティーテンリウは直線でも先頭で、逃げ切るような勢いでした。
竹見
直線半ばあたりでは、この馬に勝たれたと思いました。ただ赤岡騎手のタニノホウザンは、直線はよく伸びて差し切りました。ゴール寸前でした。4コーナーから直線を向いたところで思い切って外に出したのがよかった、これが勝因でしょう。川崎コースをよく知っている赤岡騎手だからこそ勝ったようなものです。好騎乗でした。

2019年1月31日(木)多摩川オープン

優勝馬 トキノパイレーツ

斎藤
逃げたのは今野騎手のウェイトアンドシー。森下騎手のトキノパイレーツは6番手あたりの外目を追走しました。
竹見
前走報知オールスターカップでは、森下騎手は2番手につけて行きましたが、今回控えたのはよかったと思います。
斎藤
森下騎手は、3コーナー手前から位置取りを上げて行きました。
竹見
タイミング的に仕掛けるのが少し早いかと思って見ていました。ただ、直線で先頭に立って、またムチを入れたら突き放しました。今回はオープンでも重賞クラスの好調馬がほとんどいないメンバーでしたから、ここでは能力が一枚上でした。トキノパイレーツはここにきて状態がよくなっていたようで、大事に使っていけば、これから出世するのではないでしょうか。