コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和元年度第13回開催 川崎記念 他

1月最終週の開催は、JpnIの川崎記念に、恒例の佐々木竹見カップジョッキーズグランプリが行われました。 川崎記念は、昨年のJBCクラシックでJpnI初制覇を果たしたチュウワウィザードが格の違いを見せての圧勝。鞍上は川田将雅騎手でした。 佐々木竹見カップの舞台は水の浮く不良馬場となってしまいました。第1戦は、兵庫の吉村智洋騎手が直線で抜け出して快勝。第2戦は、12番人気だった北海道の石川倭騎手が直線での追い比べから抜け出しました。優勝は、第1戦2着、第2戦4着だった岩手の山本聡哉騎手でした。 そしてその日の最終レースに行われた王者の眼差し賞を制したのは、山崎誠士騎手のブルベアブロンゾでした。 今回はこの4レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年1月29日(水)川崎記念

優勝馬 チュウワウィザード

斎藤
ハナを主張したのは最内枠に入った森泰斗騎手のケイティブレイブ。勝ったチュウワウィザードは好スタートを切りましたが、控えての追走でした。
竹見
チュウワウィザードは外枠だったので、川田騎手はほかの馬の出方を見ながら、どこからでもという感じだったのではないでしょうか。ヒカリオーソはスタートでジャンプするような感じで出遅れたこともありましたが、あえて控えるレースをさせたのではないでしょうか。出遅れてもスタートしてすぐはミューチャリーと同じようなところにいたので、行く気があれば仕掛けて前に行けたと思います。
斎藤
普通ならペースが緩む1周目のスタンド前でも、ほとんど隊列が変わりませんでした。
竹見
今回はそれほどペースが緩むことがなく、折り合いを欠く馬もいませんでした。ただそのぶん、逃げたケイティブレイブには厳しい流れになりました。
斎藤
チュウワウィザードは4コーナーでも手応え抜群のまま抜け出しました。
竹見
勝ったチュウワウィザードはちょっと能力が抜けていました。好位につけての抜け出しですが、どんなレースをしても勝ったと思います。ヒカリオーソは今回、控える競馬で2着に健闘しました。こういう展開のレースを経験すればまた強くなる可能性はあります。今回は控えて正解でした。昨年の戸塚記念のあと一息入れて、馬体もふっくらとしてよくなりました。3コーナー過ぎで一旦は先頭に立ったミューチャリーもこの相手に4着はよく粘りました。

2020年1月28日(火)佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ マイスターチャレンジ

優勝馬 シゲルルビー

斎藤
逃げたのは森泰斗騎手。山口勲騎手、吉村智洋騎手が続きました。
竹見
水が浮くドロドロの馬場だったのは残念でした。吉村騎手はスタートはあまりよくありませんでしたが、積極的に好位をとりに行って3番手につけました。
斎藤
吉村騎手は、4コーナーでは、あとは前の森騎手をとらえるだけでした。
竹見
吉村騎手は外枠で泥をかぶらない好位をとれたことが勝因でしょう。こういう馬場では、よほどのハイペースにでもならない限り、ある程度前に行かないと勝負になりません。逃げた森騎手もゴール前で一杯になりながら3着に粘りました。2着に入った山本聡哉騎手は、前半は中団からの追走で、それでも徐々に位置取りを上げてきて、4コーナーでは勝った吉村騎手のすぐ後ろまで来ていました。勝ち馬よりも速い上りタイムで差を詰めて、山本騎手は好騎乗でした。

2020年1月28日(火)佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ ヴィクトリーチャレンジ

優勝馬 ビマジョ

斎藤
このレースは先行勢が粘れず、勝ったのは中団からの追走だった石川倭騎手でした。
竹見
吉原騎手とルメール騎手が競り合いながら先行。吉原騎手はどうしてもハナを取りたかったのでしょう、ムチを入れて行ったら折り合いを欠いてしまいました。競りかけて行ったルメール騎手の馬は気性が悪く、それで抑えがきかなかったのかもしれません。縦長の隊列になって、前は明らかにオーバーペースでした。
斎藤
直線は横に広がっての追い比べとなりました。
竹見
前半が速くなったぶん、先行勢の行き脚が鈍った3コーナーあたりから、石川騎手が一気にまくってきました。さらに前半は最後方に近い位置にいた福原騎手も追ってきて、前と後ろががらりと入れ替わっての決着となりました。先行勢で残ったのは1番人気だった岡部誠騎手(3着)だけ。新人の福原騎手はゴール前よく伸びて2着に入りました。水が浮く先行有利な馬場でも、先へ先へという馬が何頭かいると、このレースのように前半脚を溜めていた馬の追い込みが決まることがあります。勝った石川騎手は12番人気、2着の福原騎手は8番人気という波乱の決着になりました。

2020年1月28日(火)王者の眼差し賞

優勝馬 ブルベアブロンゾ

斎藤
このレースも縦長の展開になりました。
竹見
逃げたのは1番人気のキングオブライフ、山口達弥騎手でした。最初の直線で外から何頭かに競りかけられたぶん、ハナを獲るまでにかなり脚を使いました。これではさすがにペースが速く、4コーナー手前で一杯になってしまいました。2番手で追ったミシェル騎手はさらに早く3コーナーで後退してしまいました。
斎藤
勝った山崎誠士騎手のブルベアブロンゾは3番手からの追走でした。
竹見
前2頭とは離れてポツンと3番手、ハイペースでも無理をしないギリギリの位置でした。2着、3着、4着の馬は、それぞれ中団よりうしろから直線伸びて来ましたから、それで3番手から押し切ったブルベアブロンゾはそれだけ力があったんだと思います。こういう不良馬場も合っているのかもしれません。