コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
令和2年度第4回開催 スパーキングレディーカップ 他
7月13~17日の開催でメインとして行われたJpnIIIのスパーキングレディーカップは、JRAのファッショニスタがゴール前の接戦を制して連覇達成。鞍上は川田将雅騎手でした。 最終日のメイン、B2・B3級による三浦すいか特別は、9番人気、櫻井光輔騎手のヤマニンウリエルが、ゴール前の追い比べから抜け出しました。また最終レースに行われた恒例の川崎ジョッキーズカップ第3戦は、13頭立て11番人気、田中涼騎手のイズミシンホニーが見事に逃げ切り勝ちを収めました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)2020年7月15日(水)スパーキングレディーカップ
優勝馬 ファッショニスタ
- 斎藤
- 予想通り、逃げたのはサルサディオーネでした。
- 竹見
- サルサディオーネはなんとかハナを取ることはできましたが、内のファッショニスタの行きっぷりがよく、ハナを取り切るまでにかなり脚を使ってしまいました。外枠だからということはありましたが、それにしてもこのときはスタートしてのダッシュがいつもほどではなかったように思います。対してファッショニスタの川田騎手は、サルサディオーネを行かせて2番手に控えました。
- 斎藤
- 道中は流れがそれほど速くならなかったこともあって、結局前に行った3頭での争いになりました。
- 竹見
- 3コーナー過ぎではファッショニスタの川田騎手はかなり追っていて、むしろメイクハッピーのルメール騎手のほうが手応えはあるような感じでした。
- 斎藤
- ゴール前は3頭の追い比べになりました。
- 竹見
- 直線でもメイクハッピーのほうが勢いがあるように見えましたが、ファッショニスタは並ばれてからが強かった。川田騎手は中央でリーディングを争っているように、今年は乗れているということもありますが、人気馬に乗ったときに勝たせるパターンを知っています。サルサディオーネは、スタートでもっと楽にハナを取れれば勝っていたかもしれません。それでも矢野騎手はよく3着に粘らせたと思います。
2020年7月17日(金)三浦すいか特別
優勝馬 ヤマニンウリエル
- 斎藤
- 勝った櫻井騎手のヤマニンウリエルは、縦長の展開で中団よりうしろからの追走でした。
- 竹見
- 水の浮く不良馬場では前残りになることが多く、テンから仕掛けて行く馬が多いので、どうしても縦長の展開になります。ヤマニンウリエルは、もともとうしろから行く馬なので、最初から行く気もなかったのでしょう。
- 斎藤
- 櫻井騎手は向正面から一気に位置取りを上げていきました。
- 竹見
- 向正面から思い切って行ったのはよかたと思います。直線では1番人気の本田騎手(ルーレットスピナー・2着)が内で我慢して、これが勝っていてもおかしくなかった。2番手を追走していた矢野騎手(コアコンピタンス・4着)も粘るところ、櫻井騎手が一気に差し切りました。仕掛けのタイミングに、流れもハマりましたが、人気がなくて、この道悪で、これはよく勝ったと思います。櫻井騎手は勝つパターンがわかってきてだいぶよくなりました。ただ、体を揺するように乗っているのが気になります。それと直線で追うときに後ろを振り返るような仕草をしますが、馬が脚をぶつける原因にもなるので、このあたりは直したほうがいいでしょう。
2020年7月17日(金)2020川崎ジョッキーズカップ第3戦
優勝馬 イズミシンホニー
- 斎藤
- 勝った田中涼騎手はまわりの出方を見ながら先頭に立ちました。
- 竹見
- スタート後は外枠の阪上忠匡騎手(ロータスブロッサム)がハナを取るような勢いでしたが、田中騎手は内の馬も気にしながら、ハナを譲りませんでした。水の浮く不良馬場ですから、思い切ってハナに行ったのはよかったと思います。
- 斎藤
- 向正面でも馬群にあまり動きはありませんでした。
- 竹見
- 田中騎手は自分のペースで行けたのがよかったと思います。1番人気の町田騎手(ロサデラルス)は3番手につけていましたが、3コーナー過ぎで後退して最下位。中団から追ってきた酒井忍騎手(チャーミングリボン)、山林堂信彦騎手(イマジンラヴ)が、ゴール前一気に迫って2、3着でした。直線では勝ち馬以外の先行馬がいずれも失速してしまったところを見ると、イズミシンホニーはよく勝ったと思います。
- 斎藤
- 2017年9月以来の勝利でした。
- 竹見
- それにしても11番人気です。雨の馬場でうまくハナを取れたからということはあったかもしれませんが、よく勝ったと思います。近走では逃げることがなかったので、馬も驚いて走ったのではないでしょうか。馬場も味方したと思います。