コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第13回開催 川崎記念 他

1月25〜29日の開催でメインとして行われたJpnIの川崎記念は、船橋のカジノフォンテンが逃げ切ってオメガパフューム以下を完封。10年ぶりに地方馬の勝利に導いたのは張田昂騎手でした。 恒例の佐々木竹見カップジョッキーズグランプリは、コロナ禍によって残念ながら南関東所属騎手限定での開催となりました。第1戦は山崎誠士騎手、第2戦は酒井忍騎手と、2戦とも川崎所属騎手が勝利を収めました。 川崎記念後の最終レースに組まれた2021川崎ジョッキーズカップ第1戦は、昨年のこのシリーズで3勝を挙げ優勝した古岡勇樹騎手が、なんと13番人気で勝利。このレース、年をまたいで3連勝としました。   今回はこの4レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2021年1月27日(水)川崎記念

優勝馬 カジノフォンテン

斎藤
カジノフォンテンがすんなり逃げました。
竹見
スタートして先頭に立つと、張田騎手はすぐに抑えました。ダノンファラオも競りかけてこなかったので、道中はゆったりしたペースに持ち込むことができました。折り合いもついて、気持ちよく走っていました。
斎藤
最初のスタンド前で、中団よりうしろにいたオメガパフュームが位置取りを上げてきました。
竹見
川崎の2100mはペースが緩むので、これは正解です。このペースで後方にいたのでは届きません。
斎藤
最後の直線ではカジノフォンテンが突き放しての完勝でした。
竹見
4コーナー手前でカジノフォンテンの手ごたえが楽なままだったのに対して、そのうしろのダノンファラオ、タービランス、オメガパフュームらはすでに一杯に追われていて、手ごたえがまったく違いました。このあたりで勝負があった感じでした。
斎藤
カジノフォンテンは東京大賞典2着から、グレード初勝利がJpnIになりました。
竹見
カジノフォンテンはこの1年でかなり力をつけました。行ければ行くし、行く馬がいれば控えることもできるし、自分でペースをつくれるところがこの馬の強みです。道中は耳を立てて遊びながら走っている感じで、だから折り合いもつきます。ハナに行ってもそれほど掛かって行く馬でもないし、こういう馬は乗りやすいと思います。541キロと馬格もあるし、バランスがとれていてすごくいい馬です。張田騎手が思い切ったレースをしたのもよかった。
斎藤
最後、後続の有力馬は詰められず、オメガパフュームがなんとか2着を確保したまででした。
竹見
オメガパフュームはこれ以上のレースはできなかったと思います。前が競り合ってペースが速くなれば差し切ることもできたかもしれませんが、そうはなりませんでした。オメガパフュームも、ダノンファラオも、これで負けたのでは仕方ありません。勝ったカジノフォンテンを褒めるべきでしょう。

2021年1月26日(火)佐々木竹見カップジョッキーズGP マイスターチャレンジ

優勝馬 アルジョンブラン

斎藤
勝った山崎誠士騎手のアルジョンブランは、好位の5番手あたりにつけました。
竹見
スタートダッシュが速いですから、外枠からでも、内の馬が見ながら、うまく内目の好位をとりました。向正面で外から町田騎手(オレオレサララ)が位置取りを上げて行ったときも山崎騎手は動きませんでした。おそらく自信があったのでしょう。
斎藤
直線では前にいた馬の間から抜け出しました。
竹見
4コーナーでは前3頭が並んで壁になっていて、あそこは外に出すのが普通ですが、内でじっとしたままでした。よほど馬に力がないと、あそこから割って出てこられません。山崎騎手はそれだけ余裕を持って乗っていたと思います。
斎藤
外から伸びた大井の和田譲治騎手(バンダイクブラウン)が2着でした。
竹見
向正面ではまだ中団よりうしろ、4コーナーでもまだ6、7番手あたりで、直線ではよく2着まで伸びてきました。馬の持ち味をうまく生かしました。

2021年1月26日(火)佐々木竹見カップジョッキーズGP ヴィクトリーチャレンジ

優勝馬 ノボリターン

斎藤
勝った酒井忍騎手のノボリターンは中団からでした。
竹見
スタートしてかなり追っていきました。それでも中団でしたから、そういう脚質の馬なのでしょう。1番人気ですが、あまり行きっぷりがいいよくありません。向正面でもずっと追っていました。
斎藤
逃げた保園翔也騎手(スターギア)が最後の直線でも単独先頭で、そのまま逃げ切るように思えましたが。
竹見
競りかけて来る馬もいなかったので逃げ馬には楽なペースで、普通ならそのまま逃げ切れる展開でした。ただ、保園騎手は4コーナー手前から追い出していました。仕掛けるタイミングが少し早かったかもしれません。結果論ですが、直線を向くまで我慢していれば逃げ切れたかもしれません。
斎藤
そして酒井騎手がゴール前の一瞬で差し切りました。
竹見
酒井騎手は1コーナーでラチ沿いをとってからは、ずっと内を走ってきました。直線では内がきれいに開いて、ゴール前でよく伸びました。1番人気だったとはいえ、これは酒井騎手の好騎乗で勝ったと思います。酒井騎手は肘をぐっと締めて、手綱を馬の首に付けて乗る姿勢がいいです。

2021年1月27日(水)2021川崎ジョッキーズカップ第1戦

優勝馬 イダテン

斎藤
勝ったのは13番人気、古岡勇樹騎手のイダテンでした。
竹見
スタート後は外から増田騎手、山崎騎手が行く気を見せて、内の町田騎手も譲らなかったので、3頭が競り合って、1、2コーナーで隊列が決まるまでペースが速くなりました。古岡騎手は人気薄ということもあったと思いますが、後方からゆったり追走しました。
斎藤
向正面の中ほどで、中団よりうしろにいた馬たちが一気に動きました。
竹見
向正面でペースが落ち着いたので動いて行ったのでしょう。それにしても古岡騎手は馬群の中を縫うように、うまく位置取りを上げていきました。
斎藤
4コーナーでもまだ中団あたりで、直線では行き場がないように見えました。
竹見
直線半ばでごちゃつくようなところがあって、それでも古岡騎手は外に進路を探してうまく抜けてきました。判断もよかったし、3キロ減とはいえ、よく差し切りました。古岡騎手は、追ってくるときの手綱の持ち方、ステッキの使い方や姿勢もよくなりました。このシリーズは、昨年末から3連勝ですね。私が選ぶベストジョッキーで、新人賞に選んでよかった。