コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和3年度第1回開催 クラウンカップ 他

4月19〜23日の令和3年度第1回開催では、神尾香澄騎手がデビュー。22鞍に騎乗し、残念ながら初勝利はなりませんでしたが、最終日の第2レースで3着に入る健闘を見せました。 この開催でメインとして行われた3歳馬によるクラウンカップは、船橋のジョエルが4コーナー6番手から鮮やかに差し切りました。鞍上は、川崎記念をカジノフォンテンで制した張田昂騎手。管理する張田京調教師と親子での重賞制覇となりました。 その日の最終レースで行われた2021川崎ジョッキーズカップ第3戦は、櫻井光輔騎手が騎乗した8番人気カネショウベリーが接戦の2着争いに4馬身差をつける快勝となりました。 22日のメイン、幸(さいわい)オープンは、大井の9歳馬アングライフェンが1番人気にこたえて直線で抜け出しました。鞍上は今野忠成騎手でした。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(インタビュー・構成/斎藤修)

2021年4月21日(水)クラウンカップ

優勝馬 ジョエル

 ハナをとった左海騎手のジョーロノが緩みのないペースで逃げました。ジョエルの張田昂騎手はスタートは互角に出ましたが、前の争いには加わらず、前半は中団の内を追走、向正面では外に持ち出して、ペースアップした向正面半ばからはムチを入れて追い通しでした。3、4コーナーあたりでは前の5頭にやや離されて、張田騎手はちょっと焦っていたかもしれません。ズブいところがあって、追われて力を発揮するタイプなのでしょう。直線での伸びが際立っていました。  今回は前のペースが流れたこともありましたが、距離が伸びればさらに強いレースをすると思います。直線の長い大井ならもっといいかもしれません。張田騎手は、川崎記念でもそうでしたが、思い切ったレースをするところがいいです。  1番人気のギガキングは後方からの追走でした。1番枠ということもあって、和田譲治騎手は一旦下げて、外に持ち出してという展開をあらかじめ考えていたのかもしれません。向正面から一気に仕掛けていって、直線では先頭に立ちかける場面もありましたが、今回は勝ったジョエルが強かった。  逃げたジョーロノは、直後を追走してきた馬たちが着外に沈んだところを見ても、決して楽なペースではありませんでした。その流れできわどい3着によく粘ったと思います。前半、的場騎手のノートウォージーに突かれて厳しいペースになりましたが、それがなければ、もっと楽に行けて、結果は違っていたかもしれません。

2021年4月21日(水)2021川崎ジョッキーズカップ第3戦

優勝馬 カネショウベリー

 勝ったカネショウベリーは去年の10月以来の休み明けでした。それでもゲートを出てからのスピードが他馬と違っていました。櫻井騎手は積極的に行ったのはよかったと思います。逃げたランタンの2番手につけて、競りかけてくる馬もいなかったので、すぐにペースが落ち着いたのも勝因のひとつです。3コーナー過ぎでは手応え十分のまま逃げ馬をとらえにかかりました。馬が行く気になったので、抑えずに行かせたのはよかったです。4コーナー手前から追い出して、後続が来る前に一気に勝負をつけました。直線まで追い出しを待っていたのでは、このような圧勝はなかったかもしれません。  櫻井騎手の好騎乗、好判断でした。こういう積極的な騎乗をしていればもっと成績が上がってくると思います。櫻井騎手は、追ってくるときの姿勢も以前よりだいぶよくなりました。あとは自分の頭がぶれてしまうのが気になります。  4馬身差で2着争いは大接戦となって、大外を伸びてきた町田騎手のマイネルミシシッピでした。川崎コースでは、4コーナーで馬群がごちゃついたら思い切って外に出して正解です。

2021年4月22日(木)幸(さいわい)オープン

優勝馬 アングライフェン

 逃げたのはヒカリオーソでしたが、それほどペースは速くなりませんでした。スタンド前では長距離戦らしくペースが落ち着いて、勝ったアングライフェンは中団で我慢して折り合いをつけました。1番人気もあって、今野騎手は自信もあったと思います。道中は手応えも十分でした。向正面では伊藤裕人騎手のジョーダンキングが動いて行きましたが、今野騎手はまだ動きませんでした。3コーナーあたりから流れが速くなって、そこで外から一気に仕掛けて行きました。4コーナーで先頭に立ってからは後続を寄せ付けませんでした。9歳でも、さすがに中央のオープンで好走していただけのことはあります。  2着には、直線で外に持ち出した矢野貴之騎手のフレッチャビアンカが伸びてきましたが、勝ったアングライフェンは、今野騎手の仕掛けのタイミングがよかったと思います。