コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和3年度第9回開催 ローレル賞・ロジータ記念 他

 11月8〜12日の開催は重賞2本立て。9日に行われた2歳牝馬のローレル賞は、北海道から遠征のスティールルージュがゴール前の接戦を制しました。鞍上は北海道の桑村真明騎手でした。  翌10日、3歳牝馬のロジータ記念は、船橋のカイカセンゲンがゴール前で抜け出し、2013年カイカヨソウと母仔制覇となりました。鞍上は張田昂騎手でした。  その日の最終レースとして行われた恒例の川崎ジョッキーズカップ第9戦を勝ったのは、3番人気ヤマニンプルニエに騎乗した増田充宏騎手でした。これで増田騎手は同シリーズでトップに立っている古岡勇樹騎手(91ポイント)と4ポイント差の2位タイにつけました。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(インタビュー・構成/斎藤修)

2021年11月9日(火)ローレル賞

優勝馬 スティールルージュ

 勝ったスティールルージュは、逃げたジョーストーリーを2番手で追走しました。3、4コーナー中間から追い通しでしたが、直線でも先頭で粘っていたジョーストーリーをとらえると、最後までしっかり伸びました。こういう不良馬場は得意なのかもしれません。北海道の2歳馬が川崎に遠征してくるとコーナーで外に膨れたりすることがありますが、この馬は初めての左回りでもうまく走っていました。門別では1200メートルまでしか経験がありませんでしたが、長く追ってきてもバテていませんから、距離はもっと長くてもいいと思います。門別と同じ右回りで直線の長い大井コースになれば、さらに能力を発揮するかもしれません。  2着のプラチナプライドは、スタートこそ互角でしたが、そのあとのダッシュがあまりつかず、1番枠でラチ沿いのまま5、6番手の位置取りでした。ひとつ前の3番手あたりにつけていれば結果は違ったかもしれません。大井のように直線の長いコースなら5、6番手から中団の位置取りでもいいのですが、川崎コースではもう少し前の位置が欲しかった。直線を向いたところで前の2頭が壁になって、御神本騎手は一瞬行き場に迷う場面がありました。最後はハナ差でしたから、それがなければ差し切っていたかもしれません。ただそれはあくまでも結果論で、川崎コースの4コーナーは、内にこだわるか、外に持ち出すかの判断は難しく、運次第ということもあります。

2021年11月10日(水)ロジータ記念

優勝馬 カイカセンゲン

 勝ったカイカセンゲンは、前半は中団馬群の中を追走していましたが、2コーナーを回るあたりで外に持ち出し、向正面でペースが上がったところでは、ムチを入れて間を追っていきました。上りがかかる流れになって、2番手から先頭に立って粘っていたウワサノシブコを差し切りました。これは張田昂騎手がうまく乗りました。カイカセンゲンだけでなく、3着のイヤサカ、4着のハピネスマインドなど、終いの脚を生かした馬が上位に来ました。  ウワサノシブコは積極的にケラススヴィアにプレッシャーをかけるように追走していきました。もう少し抑えていったほうがいいような気はしますが、他の馬と並んで競り合うほうが力を発揮できるのかもしれません。逃げたケラススヴィアが離そうとすると、すぐに差を詰めに行っています。向正面からペースが上がるタイミングも早かったですし、前2頭は相当厳しい流れになったと思います。うしろから来るのをもう少し待ってからの仕掛けでも良かったと思います。ゴール前では勝ち馬に交わされましたが、それでも最後はよく粘りました。この長い距離も合っていたと思います。  期待されたケラススヴィアは、ハナを取るのにスタートからかなり脚を使ってしまいました。外のウワサノシブコにぴたりと付かれて、最初の3コーナーまで速い流れになりました。関東オークスでは2着に粘りましたが、今回は息を入れる場面がなく、2100mという距離を考えると厳しい競馬になりました。ケラススヴィアにはこの距離は少し長いかもしれません。

2021年11月10日(水)2021川崎ジョッキーズカップ第9戦

優勝馬 ヤマニンプルニエ

 スタートで大外の田中涼騎手(サワセンミラクル)が気合をつけて行きましたが、枠順もあってハナを取ったのは藤江渉騎手(オビワンズドーン)でした。その直後に増田充宏騎手(ヤマニンプルニエ)、神尾香澄騎手(サンガツココノカ)が続いて、結果的に先行した4頭のうちの3頭、前残りの決着でした。  藤江騎手が3コーナー過ぎで一杯になると、田中騎手が楽な手応えのまま先頭に立って直線を向きましたから、そのまま勝ったかと思ったのですが、増田騎手が内を突いて伸びてきての追い比べは見応えがありました。最後は半馬身、増田騎手が前に出ましたが、好位の内で脚を溜めて、展開的にもうまくいきました。  田中騎手は9番人気でしたが、直線を向いたところでは勝ったと思ったでしょう。道中は2番手で我慢して折り合いをつけて、うまく乗っていました。これで負けたのでは仕方ありません。  2着から差はありましたが、神尾騎手が3着に粘りました。騎乗姿勢はだいぶよくなりましたが、もう少し手綱を短く持てるようになるといいと思います。