コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和3年度第8回開催 鎌倉記念 他

 10月11〜15日の開催でメインとして行われたのは2歳馬による鎌倉記念。大井のママママカロニが断然人気に支持されましたが、勝ったのは北海道から遠征のシルトプレ。鞍上は大井の笹川翼騎手でした。  またこの日はヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドも行われ、第1戦を古岡勇樹騎手が見事勝利しました。  そして14日に行われた2歳の特別戦、アキアカネ特別でも古岡騎手がゴールドレーベンを初勝利に導きました。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(インタビュー・構成/斎藤修)

2021年10月13日(水)鎌倉記念

優勝馬 シルトプレ

 大井のゴールドジュニアを圧勝して人気になっていたママママカロニですが、スタートして最初の直線で、まわりを囲まれて行き場をなくしてしまい、馬が頭を上げていました。これは運が悪かった。そのあと1〜2コーナーを回るあたりで外に持ち出すことができたと思いますが、矢野騎手は前に馬を置いての追走でした。もしかして、砂をかぶせるレースを経験させるということはあったかもしれません。向正面では外から御神本騎手のプリサイスニードルに先に行かれて、外に持ち出すタイミングをなくしてしまいました。4コーナー手前でようやく外に持ち出しましたが、直線でいざ追い出されても、馬はすぐには反応できせんでした。ゴール前ではよく伸びてきましたが、競馬をしたのは最後の100メートルだけでした。前半ごちゃついたところがあって、馬が一旦は走る気をなくしてしまったのかもしれませんが、もったいないレースでした。どこかでもう少し早めに外に持ち出すタイミングがあればよかったと思います。今回は負けてしまいましたが、こういう厳しいレースを経験して、もっと強くなると思います。  勝ったのは笹川騎手のシルトプレで、北海道からの遠征馬でした。好スタートから絶好の外目3番手。向正面で御神本騎手が動いてきたのを見て仕掛け、前を譲りませんでした。これが勝因でしょう。ママママカロニとは、スムーズにレースができたかどうかという差も大きかったですが、門別では同じ距離も経験していて、直線でもよく伸びました。

2021年10月13日(水)ヤングジョッキーズシリーズTR川崎・第1戦

優勝馬 トキノステラ

 古岡騎手(トキノステラ)は中団よりうしろに下げて、内に入れての追走でした。スローペースでしたが、勝負どころの3コーナー手前あたりでもまだ手が動いていませんでした。スローペースであの位置からでは、早めに動きたくなるところですが、落ち着いて乗っていました。3〜4コーナーでも内でじっとしたまま、4コーナーを回るところから追い出して直線を向くと、うまく前が空きました。そのあと直線での脚が際立っていたように、終いの脚を生かす騎乗だったのでしょう。そのあたりの作戦は、主戦の櫻井光輔騎手から聞いていたのでしょう。道中も完璧で、好騎乗でした。左利きということで、左のステッキの使い方がうまいです。  神尾香澄騎手(デルマダイヤモンド)も3着に入る好走でした。道中は古岡騎手と並んでの追走で、3コーナー手前から、古岡騎手より先に動いていきました。このタイミングからの仕掛けはよかったと思います。4コーナーでは大外に出しましたが、3〜4コーナーでは馬群が固まっていたので、外を回してくるのは仕方ありません。姿勢もよくなったし、追い方もデビューしたころよりだいぶよくなってきました。

2021年10月14日(木)アキアカネ特別

優勝馬 ゴールドレーベン

 ハナをとった矢野騎手のビヨンドザレシピが飛ばして、縦長の展開になりました。好スタートを切った古岡騎手のゴールドレーベンは気合をつけて行きましたが、前が速いと見たのか、1コーナーの手前で抑えて内に入れたのはよかったと思います。前半は4番手からの追走でした。  古岡騎手は3コーナー手前まで楽な感じでの追走で、徐々に位置取りを上げていきました。余力を残したまま前との差を詰めることができたので、直線で追い出されてからはよく伸びました。  2着の今野騎手(ハピネスシチー)は、前とは離れた中団を追走していました。このハイペースであれば、ちょうどいい位置だったと思います。徐々に位置取りを上げてきて、3コーナー過ぎでは勝ち馬のうしろにつけました。ゴール前ではゴールドレーベンに迫りましたが、今回は勝ち馬を褒めるべきでしょう。