コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和3年度第13回開催 エンプレス杯JpnII 他

 2月28日〜3月4日の開催でメインとして行われたのは、牝馬によるJpnIIのエンプレス杯。前走TCK女王盃でクビ差2着に惜敗していたJRAのショウナンナデシコが、ゴール前、一瞬の脚を使って抜け出しました。鞍上は吉田隼人騎手でした。  その日の最終レースに行われた、恒例の川崎ジョッキーズカップ第3戦は、7番人気、藤江渉騎手のミッシーコルザが逃げ切りました。  最終日に行われた3歳馬の特別戦、雲雀(ひばり)特別は、エーススパークルが4コーナー6番手から豪快に差し切りました。鞍上は町田直希騎手でした。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年3月2日(水)エンプレス杯JpnII

優勝馬 ショウナンナデシコ

 サルサディオーネは相変わらずスタートダッシュがよく、それが強みにもなります。川崎の2100m戦は、普通なら1周目のスタンド前でペースが落ちますが、サルサディオーネが逃げるとほとんどペースが落ちません。それゆえ折り合いに苦労する馬もいませんでした。  スタートで出遅れたレーヌブランシュがそのスタンド前で位置取りを上げてきましたが、ペースが落ちたわけではないので先頭をとらえるところまでは行けませんでした。ただ出遅れなくても好位にはつけていたでしょうし、位置取りを上げていくときもそれほど無理をしていませんから、レーヌブランシュは出遅れの影響はそれほどなかったと思います。位置取りを上げていった判断も悪くなかったです。  勝ったショウナンナデシコは、サルサディオーネをマークする位置で折り合いもついていました。内でじっとしたまま、直線を向いたところでは、レーヌブランシュが外から寄ってきて進路がなくなりましたが、ラチ沿いにわずかにできた進路から抜け出すときの脚色が際立っていました。このメンバーでは力が一枚抜けていました。

2022年3月2日(水)2022川崎ジョッキーズカップ第3戦

優勝馬 ミッシーコルザ

 スタートではミッシーコルザの藤江騎手が気合を入れていきました。2番枠でもあり、行くと決めていたのでしょう。緩みのないペースで行って、直線でもバテることなく、ゴール前はさすがに一杯になりましたがよく粘りました。ダッシュ力があるので思い切って行って、溜めずに馬の行く気に任せて逃げたのがよかったと思います。  1番人気に支持された増田騎手のタカラチーターは2番手につけていきました。向正面で口を割るような感じで行きたがっていましたが、それでも勝負どころで食い下がっていました。4、5番手にいた今野騎手のワンラヴが上がって2着に入っただけで、うしろから来る馬がいないという、前残りの競馬になりました。

2022年3月4日(金)雲雀(ひばり)特別

優勝馬 エーススパークル

 スタートしての直線では前4頭ほどが競り合って縦長の展開になりました。ハナを切ったサザンローズの神尾騎手にはおそらくそういう指示があったのでしょう。ベルタントの和田騎手もハナに行ければという勢いでしたが、枠順もあってさすがに控えました。  勝った町田騎手のエーススパークルは離れて中団からの追走でした。4コーナーでは射程に入れた前の馬たちが壁になっていたので、大外に持ち出しての差し切りでした。ゆったり進めていったエーススパークルに展開が向いたし、うまく流れに乗った町田騎手の好騎乗でした。  直線で先行勢はさすがに一杯になりましたが、それでも3番手を追走した本田騎手のソウルストライクが2着に入り、2番手だったベルタントも3着に粘りました。この2頭は人気にもなっていましたが、神尾騎手の強引な逃げがなくマイペースで進められれば、勝ち負けになっていたかもしれません。