コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第4回開催 スパーキングレディーカップJpnIII 他

7月4~8日の開催でメインとして行われたJpnIIIのスパーキングレディーカップは、JRAのショウナンナデシコが断然人気こたえて勝利。エンプレス杯からのダートグレード連勝を4に伸ばしました。 この開催では新人の野畑凌騎手が4勝を挙げる活躍を見せました。初日4日の赤翡翠(あかしょうびん)特別では、8番人気のキョウエイメジャーで直線を向いての追い比べから抜け出しました。また恒例の川崎ジョッキーズカップ第7戦では、1番人気のパンディーロで堂々と逃げ切り6馬身差の圧勝でした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年7月6日(水)スパーキングレディーカップJpnIII

優勝馬 ショウナンナデシコ

ショウナンナデシコとサルサディオーネがともに58キロを背負いました。ショウナンナデシコは、1番枠から逃げたサルサディオーネをぴたりと2番手で追走しました。吉田隼人騎手にも想定していたとおりの展開だったと思います。サルサディオーネは逃げるしかないので、もしこの枠順が逆だったらどうだったでしょう。 枠順もペースも展開もショウナンナデシコに向いたものとなりました。サルサディオーネをぴたりとマークしていって、3~4コーナーではサルサディオーネの森騎手が追い出していたのに対して、ショウナンナデシコの吉田騎手の手応えはまだ楽なまま。このあたりで勝負ありという感じでした。 レディバグの戸崎騎手は、前2頭が行くのはわかっていますから、終いの脚に賭ける競馬で縦長の中団から。向正面の中間あたりから動いていきましたが、戸崎騎手ですから、そのあたりの仕掛けどころはわかっていました。それにしてもゴール前はよく伸びてきました。最後はクビ差まで迫りましたが、斤量が3キロ差あったことを考えると、ショウナンナデシコは着差以上の強さです。レディバグも今後、牝馬ダート路線で活躍が期待できそうです。 サルサディオーネは3着でしたが、58キロを背負っていることを考えれば、むしろよく粘ったと思います。

2022年7月4日(月)赤翡翠(あかしょうびん)特別

優勝馬 キョウエイメジャー

キョウエイメジャーの野畑騎手はスタートで仕掛けてハナを取りに行きました。外で好スタートを切った古岡騎手(シルヴァギンジ)がすぐに控えて、先頭に立ったキョウエイメジャーも折り合いがついたので、すぐにペースが落ち着きました。1~2コーナーを回るところで14頭が団子状態になってというスローペースですから、中団よりうしろでは掛かっている馬が何頭かいました。 向正面でもペースがあまり上がらなかったので、後方にいた今野騎手(トラストカトレア)が一気に動いてきました。先頭の野畑騎手は、楽に行っているところに一気に来られましたから、急には動けずラチ沿いで控える形になりました。4コーナーではまわりを囲まれる形になってどうかと思いましたが、直線を向いたところで先頭のトラストカトレアの外がぽっかり空いたので、野畑騎手はすぐに外に切り替えて、そこから抜け出すことができました。もし直線を向いて前がカベになっていれば、行き場をなくすところだったので、運も味方しました。直線半ばで抜け出すと2馬身差をつけての完勝。スローペースに落として道中で溜められたぶん、直線に使える脚が残っていました。 向正面で一気に動いた今野騎手のトラストカトレアは2着。仕掛けるのが少し早かったかもしれません。もう少し待ってから動けばよかったようにも思いますが、ただそれも結果論です。勝った野畑騎手がうまく乗りました。

2022年7月6日(水)2022川崎ジョッキーズカップ第7戦

優勝馬 パンディーロ

野畑騎手のパンディーロは、抜群のスタートを決めると、競りかけてくる馬はいませんでした。1番人気だったこともありますが、ハナに行けば強いことをほかの騎手もわかっていたのかもしれません。向正面では縦長の展開になりました。 野畑騎手は向正面から徐々に差を広げて、直線でもまったく寄せ付けずの完勝。好位につけて追走してきた今野騎手のラソワドールに6馬身差をつけました。ここでは馬の能力が違いました。道中は無理に抑えず、馬の行く気に任せて気分良く逃げさせたのもよかったと思います。3キロの減量も馬にとっては相当楽です。 もし競りかけてくる馬がいれば難しくなったかもしれませんが、行きたがる馬を抑えすぎず、気分良く逃げさせるという、デビューしたばかりの騎手にはなかなかできることではありません。追ってからの姿勢もしっかり乗れています。