コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第3回開催 関東オークスJpnII 他

6月13~17日の開催は重賞2本立て。14日に行われた川崎スパーキングスプリントは、森泰斗騎手のコパノフィーリングが逃げ切り勝ち。デビュー3年目の池谷匠翔騎手のコウギョウブライトがゴール前で差を詰めましたが、惜しくも2着でした。 15日に行われた3歳牝馬によるJpnIIの関東オークスでは、浦和のスピーディキックに南関東牝馬三冠の期待がかかりましたが、残念ながら3着。勝ったのはJRAのグランブリッジ。山崎誠士騎手が手綱をとったJRAのラブパイローが逃げて2着に粘りました。 恒例の川崎ジョッキーズカップ第6戦は、この4月にデビューしたばかりの新原周馬騎手が4コーナー6番手から鮮やかに差し切りました。新原騎手はこの開催で5勝を挙げる活躍でした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年6月14日(火)川崎スパーキングスプリントSIII

優勝馬 コパノフィーリング

勝ったコパノフィーリングは枠順(3番)がよかった。隣(4番)のキモンルビーと同じ馬主で、外の馬があまり無理に主張するわけにはいきませんから、最初は競り合っていましたが、キモンルビーの御神本騎手が引きました。コパノフィーリングの森泰斗騎手は3コーナー手前から単騎での逃げになって、3~4コーナーでは息を入れることができました。枠順が逆だったら、結果はまた違っていたかもしれません。 池谷匠翔騎手のコウギョウブライトは5番手あたりから前を見ながらの追走でした。直線を向いてキモンルビーの真後ろにいましたが、ムチを持ち替えて外に持ち出して、キモンルビーを交わして2着。池谷騎手はデビューの頃から姿勢は良かったですが、手綱を短く持って追ってくるところなどはだいぶ良くなりました。積極的に前に行くようになったのもいいと思います。 中越琉世騎手のダンディーヴォーグが追い込んで4着。中越騎手は以前に比べると、しっかり追ってきて馬を動かせるようになりました。ただ、馬の上で体が大きく見えてしまうので、小さく見えるような姿勢に直したほうがいいと思います。

2022年6月15日(水)関東オークスJpnII

優勝馬 グランブリッジ

スピーディキックが好スタートを切って一旦は先頭に立ちましたが、山崎誠士騎手のラブパイローは最初からハナに行くつもりだったのでしょう。そのラブパイローがレースを引っ張って、最初のスタンド前でもそれほどペースは遅くはならなかったので、掛かっていくような馬もいませんでした。向正面に入ったあたりから山崎騎手が徐々にペースアップして、隊列はさらに縦長になりました。 グランブリッジも好スタートを切りましたが、ラブパイローを行かせてすんなり直後の2番手につけました。3コーナー過ぎからは前3頭の勝負になって、グランブリッジが残り100mでラブパイローをとらえると、そこから一気に突き放して3馬身差をつけました。この距離も合っていたのでしょう。 ラブパイローは、ハナをとるのにかなり脚を使いましたが、道中はうまく溜めて、後続に脚を使わせて、最後グランブリッジには3馬身差をつけられましたが、よく粘りました。2100mの逃げ馬としては、ほぼ完璧なレースをしたと思います。 1番枠のスピーディキックは行く馬を行かせて控えたら、あの位置(内目の3番手)をとるしかありません。勝ち馬と枠順が逆で、外の好位をとれていれば、勝つまではどうかわかりませんが、もう少し際どいレースになっていたかもしれません。ラブパイローをとらえられずの3着で、三冠はなりませんでしたが、最後は伸びていたので、2100mの距離には対応できたと思います。4着に川崎のトキノゴールドが入りましたが、スピーディキックから8馬身離れていましたから、スピーディキックはやはり南関東の中では力が抜けています。距離延長でその差がさらに広がりました。

2022年6月15日(水)2022川崎ジョッキーズカップ第6戦

優勝馬 エクストリーム

1番人気に支持された小林捺花騎手(タカラチーター)が逃げましたが、逃げるつもりで気合をつけていったら馬が行く気になってしまい、抑えがきかなくなってしまいました。向正面では2番手以下を離して、さらにその後ろもバラバラの縦長の展開になりました。ただ4キロ減もありますから、思い切って逃げたのは悪くないです。あとはもう少し抑えがきけば最後も粘れたと思います。 離れた2番手を追走していた藤江渉騎手(マジェスティアスク)が3コーナーからつかまえに行って、直線半ばでとらえたときは勝ったと思ったのではないでしょうか。ただやはり前が飛ばしていたので、そのタイミングでも早すぎたかもしれません。 勝った新原周馬騎手(エクストリーム)はかなり離れた中団から。向正面では前とは15馬身くらい離れていたでしょうか。4コーナーでもまだ離れた6番手で、一気に追い込みました。前がオーバーペースになって、展開に恵まれた面もありましたが、よく差し切りました。新原騎手は追ってからの姿勢がいい。手綱も緩んでいないですし、このレースに限らずペースを読んでうまく流れに乗っています。