コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第10回開催 全日本2歳優駿JpnI他

 12月12~16日の開催でメインとして行われたのは、JpnIの全日本2歳優駿。直線、1番人気のペリエールが先頭に立ちましたが、ゴール前はJRA3頭の接戦となって、デルマソトガケが抜け出しました。鞍上は松若風馬騎手でした。  13日の3歳1組特別・雉鳩(きじはと)特別は、1番人気古岡勇樹騎手のヘレンキムゼーが逃げ切ったかと思ったところ、ヴィブエアーが差し切りました。鞍上の町田直希騎手は、この開催6勝を挙げる活躍でした。  全11戦によって争われた川崎ジョッキーズカップ・ファイナルは、岡村裕基騎手のシントーネネが4コーナー手前で先頭をとらえると、そのまま押し切りました。なおシリーズ総合優勝は、2勝、2着3回でダントツの151点を獲得した今野忠成騎手でした。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年12月13日雉鳩(きじはと)特別

優勝馬 ヴィブエアー

 スタートして、矢野騎手(フェデフルール)が行くような勢いでしたが、1コーナーを回るところで古岡騎手のヘレンキムゼーが先頭に立ちました。内枠なので、自然にハナを取ることができました。  勝ったヴィブエアーの町田騎手は、スタート後の直線から手を動かして、向正面からムチが入って、終始追い通しでした。ズブイというか、追って追って、ようやく終いに伸びてきました。  古岡騎手はマイペースに持ち込んで、完全に逃げ切ったパターンでしたが、町田騎手がゴール寸前でハナを差とらえました。古岡騎手はうまくレースを運んで、これで負けたのでは仕方ないですし、町田騎手もよく差し切ったと思います。これは町田騎手の腕で勝ったようなレースです。  3着には小林捺花騎手(ラスティンボーイ)が入りました。スタート後は外の矢野騎手を前に行かせて、うしろを確認しながら内に入れて3番手の絶好位につけました。直線を向いたところでは古岡騎手の内に行こうとしましたが、スペースがないと見て外に切り替えました。ステッキの使い方も力強くなってよくなっていますし、うまく乗ったと思います。

2022年12月14日(水)全日本2歳優駿JpnI

優勝馬 デルマソトガケ

  好スタートを切った矢野騎手のスペシャルエックスが楽に先頭に立ったかと思いましたが、大外枠から一気にマルカラピッド(小沢大仁騎手)がハナをとりました。それでペースが速くなって、縦長の展開になりました。  人気のペリエールは4番手で、オマツリオトコが5番手、勝った松若風馬騎手のデルマソトガケは、そこからやや離れての中団。ペースを考えると、結果的にいちばんいい位置につけていました。  3コーナー過ぎ、福永騎手(ペリエール)が抜群の手応えで前をとらえにいったところでは勝ったような勢いでした。横山武史騎手(オマツリオトコ)はこれを懸命に追っていきました。デルマソトガケは中団で息を入れて楽にレースを進められたぶん、ゴール前で外から差し切りました。人気の2頭を前に見ながら、レースをしやすかったと思います。  人気のペリエールは、オマツリオトコにも内から交わされて3着。先頭に立つのが早かったという人もいるかもしれませんが、川崎コースでは、あそこで先頭に立つのは仕方ないと思います。テンが速くなったぶん、レースの上りが41秒0かかりました。これは勝った馬を褒めるべきでしょう。ペリエールは3戦目、デルマソトガケは6戦目というキャリアの違いもあったかもしれません。

2022年12月14日(水))2022川崎ジョッキーズカップファイナル

優勝馬 シントーネネ

 新人の野畑騎手(グレル)が逃げて、今野騎手(ナガタドール)が2番手、騎手戦はどうしてもペースが速くなります。向正面では縦長になって、勝った岡村騎手(シントーネネ)は中団、1番人気の池谷騎手(ノーブルテラ)はさらにうしろからという位置取りでした。2頭とも外枠だったので、スタートして自分の取りたい位置をとれたということもあったと思います。川崎の1500mや1600mの多頭数のレースでは、内で包まれてしまうより、むしろ外枠のほうがレースをしやすいこともあります。  岡村騎手は3コーナー過ぎで一気に先頭をとらえ、池谷騎手もこれを追ってきましたが、岡村騎手が振り切りました。岡村騎手は今年あまり勝てていませんでしたが、久しぶり(10月12日以来)の勝利になりました。  上位は勝負どころから外を通って位置取りを上げてきた馬たちで、結果的に今回は、10番より外枠の馬が掲示板独占となりました。