コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第1回開催 クラウンカップSIII 他

4月4~8日の新年度の開催、メインとして行われた3歳馬によるクラウンカップは、リヴィフェイスが逃げ切ろうかというところ、浦和のフレールフィーユがゴール前でとらえての勝利。鞍上は大井の和田譲治騎手でした。 そしてこの開催では川崎から3名の新人騎手がデビューしました。初日の第5レースでは、アイディアリストに騎乗した新原周馬騎手が1番人気にこたえて勝利。また7日の第5レースではボルドーアランに騎乗した野畑凌騎手が12頭立て10番人気ながら見事に初勝利を収めました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年4月6日(水)クラウンカップSIII

優勝馬 フレールフィーユ

大外枠からリヴィフェイスがハナをとって、真ん中6番枠のフレールフィーユは和田騎手がまわりを見ながら行く馬を行かせ、外に持ち出して3番手につけました。 向正面に入ってペースが落ち着くと中団からフウトが一気に動いていきました。フレールフィーユはうしろから一気に来られたためすぐには反応できず、3コーナー手前あたりでは前からやや離され、位置取りを下げてしまいました。リヴィフェイスは直線でも単独先頭で勝ちパターンかに思えましたが、フレールフィーユがゴール前で差し切りました。4コーナーあたりで前をとらえにいくのに脚を使ったためにどうかと思いましたが、強い競馬をしました。追って脚を使えるタイプなので、おそらく1600メートルではまだ距離不足で、このあと直線の長い大井になれば、さらに楽しみです。ペースアップしたところで反応できるようになれば、もっと強くなると思います。 フウトの矢野騎手は仕掛けるタイミングがちょっと早かったかもしれません。それでも先頭まで行ききってしまえばまた結果は違っていたかもしれませんが、逃げていたリヴィフェイスの森騎手は先頭を譲りませんでした。リヴィフェイスは逃げて持ち味を発揮するタイプで、直線では3着以下とは差を広げていますから、これは勝った馬を褒めるしかありません。

2022年4月4日(月)C3七八

優勝馬 アイディアリスト

新原騎手(アイディアリスト)は外目の枠でも積極的に出していって、逃げたヴィヴァルトの2番手につけました。調教師からおそらくそういう指示があったのでしょう。 1番人気に支持されていたし、逃げ馬をぴたりとマークして、直線ではそれを交わすだけという展開で、4コーナーを回って追い出すタイミングもよかったと思います。4番手にいた櫻井騎手(トレヴァー)がゴール前で迫ってきましたが、新原騎手は慌てることもなく振り切ってという好騎乗でした。 新原騎手は追っているときも上半身がほとんどブレないところはすごくいいです。ただ道中の姿勢は頭が少し高いかもしれません。 新原騎手は翌日の900メートル戦(5日、第6レース)で2勝目を挙げました。ゲートを出るタイミングもいいですし、思い切って逃げて、2着に7馬身差をつける圧勝でした。3キロの減量があるうちは、やはり思い切って逃げたほうがいいです。

2022年4月7日(木)C3四五六

優勝馬 ボルドーアラン

ボルドーアランの野畑騎手は外枠(12頭立て11番)でも積極的に行きました。7番の森騎手(ブルベアベージュ)も行く気を見せましたが、1~2コーナーで外の野畑騎手の勢いを見て控えました。野畑騎手は序盤で競り合うことなく、外枠にもかかわらず先頭を譲ってもらう形になったことがひとつ勝因でしょう。 3コーナー過ぎで森騎手に並びかけられて一杯になっている感じでしたが、直線でもバテることはありませんでした。道中はあまりハミがかからず、フワフワして本気で走っていないような感じだったので、馬はあまり消耗していなかったのかもしれません。外枠でブリンカーをして、楽に先頭に立たせてもらったことですべてうまく運ぶことができました。 野畑騎手は、道中でも追ってくるときでも手綱が長くてブラブラしていることがあるので、もう少し手綱を短くできるといいかもしれません。