コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第2回開催 川崎マイラーズSIII 他

5月16~20日の開催でメインとして行われたのは川崎マイラーズ。フルゲート14頭中、重賞勝ち馬が11頭というメンバーが揃った中で、川崎のファルコンビークが5歳で重賞初制覇。鞍上は本田正重騎手でした。2着にはゴールドホイヤーが入り、川崎所属馬のワンツーとなりました。 同日第3レースに行われた3歳馬の特別戦、三ちゃん食堂杯では、野畑凌騎手のエクスプローラーが4コーナー9番手から直線一気を決め、逃げた新原周馬騎手のベリングキャットが2着。12番人気、9番人気という人気薄同士で、今年デビューした新人騎手のワンツー決着でした。 最終レースに行われた恒例の川崎ジョッキーズカップ第5戦では、デビュー2年目の神尾香澄騎手が縦長の展開を向正面からのロングスパートで差し切りました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年5月18日(水)川崎マイラーズSIII

優勝馬 ファルコンビーク

ファルコンビークの本田騎手はスタートで出ムチを入れて行きましたが、プレシャスエースの左海誠二騎手が外からでもハナを主張してくることは、ある程度想定していたのでしょう。本田騎手は1番枠でも無理には行かず、すぐに控えて外に持ち出し、2番手を確保しました。プレシャスエースが緩みのないペースで逃げたため、道中は縦長の展開になりました。 ファルコンビークは、直線でも先頭だったプレシャスエースを一気に抜き去りました。スタートで控えて2番手につけたこと、3コーナー過ぎでも脚を溜めることができて、直線勝負の脚を残していたことが勝因でしょう。本田騎手は流れを読んでうまく乗りました。今回が5歳での重賞初制覇でしたが、さらに強い相手でも勝負になりそうです。 2着争いはうしろから押し寄せた中から、ゴールドホイヤーがゴール前で一気に伸びました。一時期調子を落としていましたが、だいぶよくなってきたようです。今回は勝った馬にうまく乗られました。

2022年5月18日(水)三ちゃん食堂杯(3歳2)

優勝馬 エクスプローラー

新原騎手のベリングキャットがハナを主張して、野畑騎手のエクスプローラーはゲートを出て追っていっても行き脚がつかず、前がカベになったこともあって後方からになりました。 縦長の展開になりましたが、結果的に逃げたベリングキャット、2番手のゼンコウテイが2、3着に残ったことを考えると、前のペースはそれほど速かったわけではありません。ベリングキャットは、ゼンコウテイに競りかけられることなく、3、4コーナーでもうまく脚を溜めることができました。直線を向いたところでは新原騎手が逃げ切ったかという感じでしたが、大外に持ち出した野畑騎手のエクスプローラーがぐんぐん伸びてきました。人気薄でも馬がよく走りましたが、これは野畑騎手を褒めてもいいでしょう。 野畑騎手も、新原騎手も、追ってから上体もあまりぶれないですし、手綱を緩めずに追ってこられるところはいいと思います。

2022年5月18日(水)2022川崎ジョッキーズカップ第5戦

優勝馬 カリューウコン

このレースも縦長になりました。前3頭が競り合っていって、今野騎手のゴールドフレイバーが向正面に入っても離れた4番手。神尾騎手のカリューウコンは互角のスタートでも控えて中団よりうしろで、向正面から徐々に位置取りを上げていきました。 今野騎手が3コーナーから前をとらえに行って、4コーナーでとらえたところでは勝ちパターンかに思いましたが、それでも少しタイミングが早かったのかもしれません。さらにうしろから追ってきた神尾騎手が直線であっさり抜き去りました。レースの上り3ハロンが42秒8もかかって、勝った神尾騎手は41秒1でしたから、やはり前は競り合って飛ばしすぎました。もうすこしどこかでペースが落ち着けば今野騎手が勝っていたかもしれませんが、縦長の中団よりうしろから行った神尾騎手にはその流れがうまくハマりました。 神尾騎手はデビューした当初は手綱が緩んでいたこともありましたが、最近は追ってくるときにも手綱が緩まなくなって、だいぶよくなりました。