コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和4年度第5回開催1日目1R 他

8月1~5日の開催では若手騎手の活躍が目立ちました。初日の第1レースでは小林捺花騎手のセカイノアベマルが離れた3番手から直線で前の2頭をとらえて抜け出しました。この日、小林騎手は2勝、2着3着各1回という活躍でした。 2日、JRAとの条件交流・オーガストスター賞では、増田充宏騎手のリーチアディールが4コーナーで前が壁になったところ、外に切り替えて差し切りました。 3日、恒例の川崎ジョッキーズカップ第8戦では、池谷匠翔騎手のミッシーコルザが逃げ切りました。これで池谷騎手は今年の同シリーズでポイント5位に浮上しました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2022年8月1日(月)3歳8

優勝馬 セカイノアベマル

 このレースは、前2頭が飛ばしていきました。増田騎手(ダイセンコウ)がハナに立って、1番人気の笹川騎手(ツウツウ)は何が何でも行きたかったのか、2コーナーあたりまで競りかけて行きましたが、外枠なので2番手に控えるべきだったと思います。 小林捺花騎手のセカイノアベマルは最低人気でしたが、4kgの減量で、前が速くなったことで展開も向きました。3番手でも前2頭からはかなり離れた位置で、3コーナー過ぎでもなかなか映像に映ってきません。小林騎手は、道中でヒジを締めているのがいいです。4コーナー手前でバランスを崩してラチにぶつかりそうになる場面もありましたが、うまく立て直しました。直線を向いて左ムチに持ち替えて追ってくる格好もいいです。追ってくるときも手綱も短く持って、上体があまり左右にブレません。直線半ばで前2頭をとらえて、最後までしっかり伸びてきました。あとはもう少し足腰をきたえられるといいです。

2022年8月2日(火)オーガストスター賞

優勝馬 リーチアディール

増田騎手のリーチアディールは、控えて中団の内を追走しました。3コーナーからの仕掛けもじっくり待って、4コーナーを回るところでは前に3頭が並んで、どこから抜け出そうかという態勢でした。直線を向いて、内から1頭目と2頭目の間を突こうとしましたが、すぐに狭くなって前が完全に壁になってしまいました。それで切り替えて3頭の外に持ち出しました。500kgを超える大型馬なので、一瞬の瞬発力勝負は難しいと思いますが、それにしてもあの態勢からよく差し切りました。前が空いていればすんなり抜けられたと思いますが、これは増田騎手がうまく乗りました。

2022年8月3日(水)2022川崎ジョッキーズカップ第8戦

優勝馬 ミッシーコルザ

2馬人気ミッシーコルザの池谷騎手が逃げ切りました。スタートして少し押して行きましたが、池谷騎手は無理に行くわけでもなく、また道中でも無理に抑えるでもなく、フワっと馬の気持ちで乗っていきます。馬への当りもやわらかいです。 2番手の小林騎手(エリートバイオ)はスタートして気合をつけたら、少し持っていかれるようなところがありましたが、すぐに折り合いをつけて2番手に控えました。さらに2コーナーあたりでも馬が行きたがるような場面がありました。あそこでうまく抑えられていれば、最後はもう少し粘れていたかもしれません。 直線を向いても2頭が後続を離したままで、うしろから伸びてくるような馬もあまりいませんでした。小林騎手はやや一杯になって4着。池谷騎手のミッシーコルザは、道中で楽をさせたぶん、後続を寄せ付けないまま楽に逃げ切りました。 直線で唯一伸びてきたのは、12番人気でしたが、伊藤裕人騎手のサンベリーニだけでした。後方追走からの直線一気で、伊藤騎手はたまにこういう乗り方をします。