コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和3年度第10回開催 全日本2歳優駿 他

 12月13〜17日の開催のメインはアメリカのケンタッキーダービーへもつながる国際交流の全日本2歳優駿。断然人気にこたえデビューから3連勝としたのはJRAのドライスタウト。鞍上は戸崎圭太騎手でした。  その最終レースに行われた川崎ジョッキーズカップファイナルは、ドロスに騎乗した古岡勇樹騎手が8番人気ながら直線で鮮やかに抜け出し、2年連続で年間チャンピオンとなりました。  最終日第10レースの川崎競輪・郡司浩平KEIRINGP杯は、山崎誠士騎手のシゲルルビーが直線半ばで抜け出して快勝。先行勢ハイペースの総崩れ、後方からレースを進めた馬たちの決着で、5番人気→13番人気→14番人気という波乱の決着となりました。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(インタビュー・構成/斎藤修)

2021年12月15日(水)全日本2歳優駿(JpnI)

優勝馬 ドライスタウト

 真ん中あたり(8番枠)からカイカノキセキが先頭に立って、勝ったドライスタウトは外目の枠からすんなり2番手につけることができました。前半はペースが落ち着きましたが、3コーナー手前からペースアップして、4コーナーで先頭に立ったときも手ごたえは楽なまま。直線で追い出されると、あっという間に後続を離しました。この開催は全体的に時計が速かったこともありますが、それにしても1分40秒を切る1分39秒2という勝ちタイムは速かった。520キロという大型馬なので、広いコースならさらに強いレースをするかもしれません。  スタートで13番のライアンが躓いてバランスを崩して、隣のマリンスカイにぶつかって、さらに内のシルトプレにも接触して、よく落馬しなかったと思います。その隣の枠が勝ったドライスタウトで、少しスタートが遅れていたら、これに巻き込まれているところでした。そういう意味では好スタートを切っていたのも勝因のひとつです。  2着のコンバスチョンも3着には5馬身差をつけて能力の高さを見せました。勝ち馬を前に見る5番手あたりを追走して、直線よく伸びましたが、今回は勝った馬が強すぎました。松山弘平騎手は最近中央での活躍も目立っていますが、思い切ったレースをするのがいいと思います。

2021年12月15日(水)2021川崎ジョッキーズカップファイナル

優勝馬 ドロス

 逃げたのは櫻井騎手(ミッシーコルザ)で、勝った古岡騎手(ドロス)は馬なりで6番手あたり、馬の気持ちに任せて流れに乗っていった感じです。古岡騎手は、常に落ち着いて乗っているのが結果につながっていると思います。  4コーナーあたりでは楽な手ごたえで前をとらえにかかった拜原騎手(マイネルミシシッピ)が勝ったような勢いでしたが、古岡騎手はそれを楽に差し切りました。直線追ってくるときのステッキの使い方もうまいですし、減量騎手は逃げ・先行で結果を出すことが多いですが、古岡騎手は直線で差して勝つようなレースが目立ちます。

2021年12月17日(金)川崎競輪 郡司浩平KEIRINGP杯

優勝馬 シゲルルビー

 勝った山崎騎手のシゲルルビーは後方からの追走。そのうしろに3頭いて、結果的にその4頭が1〜4着という決着。シゲルルビーは徐々に位置取りを上げてきましたが、4コーナーではまだ中団の外、2着に入った笠野騎手のホーカスポーカスは、3コーナー手前あたりでは最後方でついていけないような感じにも見えましたが、シゲルルビーを追っていくように位置取りを上げて、直線ではこの2頭が外から伸びて抜け出しました。  不良馬場だったので、騎手たちはどうしても早めに前に行ったほうが有利という思いがあるでしょうから、我先にとなった前の馬たちはオーバーペースになったと思います。前の馬たちは向正面でもほとんどが手を動かしっぱなしでした。4、5番手あたりにつけていた1番人気グラデュエイトの森騎手だけは4コーナー手前あたりでも比較的楽な手ごたえでしたから、この馬が抜け出すのかと思いましたが、それでも速かったんでしょう(8着)。この開催は馬場自体が速かったですから、それで有力勢は前へ前へと行ってしまったのかもしれません。  上位4頭はもともとうしろからレースをしていた馬ですし、人気もなかったことで、展開に恵まれたことはあったと思います。それにしてもうしろから行った4頭での決着というのはめずらしいです。