コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和3年度第6回開催 スパーキングサマーカップ 他

 8月27・29〜31日の変則4日間開催でメインとして行われたスパーキングサマーカップは、ダートグレード3勝の実績を誇る牝馬、大井のサルサディオーネが断然人気にこたえて逃げ切りました。鞍上は矢野貴之騎手でした。  その日、第4レースに行われた3歳馬によるライジングサン特別は、3コーナーから一気にまくった古岡勇樹騎手のカリューウコンが直線で突き抜け、6番人気での完勝。3馬身差の2着には町田直希騎手のフォーリボスが入りました。  恒例の川崎ジョッキーズカップ第7戦は、山林堂信彦騎手のエリートバイオが逃げ切り、伊藤裕人騎手が2着、町田直希騎手が3着。11、4、7番人気という波乱の決着となりました。  今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(インタビュー・構成/斎藤修)

2021年8月31日(火)スパーキングサマーカップ

優勝馬 サルサディオーネ

 サルサディオーネはとにかくスタートダッシュが速い。今回もゲートを出てすぐに2馬身くらい差をつけていました。内枠だったこともあり、それで外枠の馬が競りかけてくるのも無理があるので、矢野貴之騎手は最初のゴール板のあたりでペースを落として自分の形に持ち込むことができました。  マイルグランプリを勝ったティーズダンクも和田譲治騎手が4番手の内でいいところにつけました。3コーナー過ぎではティーズダンクがサルディオーネの直後につけて、直線では交わせるような勢いでしたが、サルサディオーネが半馬身差で振り切りました。抜群のスタートを切って、すぐにペースを落としてマイペースに持ち込んだので、最後まで粘れたのはそのぶんでしょう。  ティーズダンクは和田騎手がこれ以上ない騎乗をしました。普通なら完全に勝ちパターンですが、強い逃げ馬に楽に逃げられてはどうしようもありません。矢野騎手はずっとサルサディオーネに乗っていてよくわかっていますし、中央から移籍してからさらに強くなった印象です。

2021年8月31日(火)ライジングサン特別

優勝馬 カリューウコン

 1番枠から中越琉世騎手のピンチガチャンスがハナを主張し、外から2〜3頭が競りかけてきて前はハイペース。向正面では中越騎手が単騎先頭のまま、縦長の展開でした。  勝った古岡勇樹騎手(カリューウコン)は、前を追いかけず、後方から進めたのがよかった。前の馬たちが追い通しとなった3コーナーから一気に仕掛けていって、それがうまくはまりました。それにしても直線ではいい脚を使ってよく伸びました。古岡騎手は追ってからも姿勢がぶれません。デビューしてまだ1年半ですが、たいしたものです。  2着の町田直希騎手(フォーリボス)は、勝ち馬より前の中団を追走していましたが、古岡騎手に一気に行かれたあと追いかける形になりました。脚を溜めたぶん、直線よく伸びて、勝ち馬とは差がありましたが、バテた先行馬をつかまえました。  このレースは前が飛ばしたぶん、控えた馬たちに展開が向きました。

2021年8月31日(火)2021川崎ジョッキーズカップ第7戦

優勝馬 エリートバイオ

 山林堂信彦騎手のエリートバイオがダッシュ良く先頭に立ちました。近走は逃げていませんでしたが、出ムチを入れて行ったところを見ると、調教師から逃げるように指示があったのかもしれません。うまくペースを落として、人気薄(11番人気)だったこともあり、競りかけてくる馬もいませんでした。3コーナー過ぎあたりでは、後続が追い通しになって並びかけてくる馬もいませんでしたから、このあたりで勝ちが見えた感じでした。今回は逃げの作戦がハマった感じです。それにしても11番人気でよく勝ちました。  2着争いは、今野忠成騎手(オビワンズドーン)がラチ沿いから伸びて一旦は2番手でしたが、うしろのほうにいた伊藤裕人騎手(デルマダイヤモンド)、町田直希騎手(コンステレーション)が馬体を併せて大外から伸びてきました。やや早めのペースで、前半脚を溜めていたぶん、この2頭は直線での伸びが目立ちました。