コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第6回・7回開催 スパーキングサマーカップ 他

8月後半の第6回開催は新型コロナウイルスの影響で前半3日間が取止めとなり、後半27、28日を実施。取止めとなった3日間は8月31日~9月2日に第7回開催として出馬再投票のうえで実施されました。陽性者との濃厚接触者に該当せず、かつPCR検査で陰性が確認された騎手に限定しての開催となりました。 28日のメイン第11レース、はだの表丹沢森林セラピーロード認定記念は、田中涼騎手のデランブルが直線半ばで抜け出しました。 31日の凌霄花(のうぜんかずら)特別は、1番人気のブレイブウォリアーが直線で馬群をさばいて抜け出しました。鞍上は伊藤裕人騎手でした。 代替開催となって9月2日に実施されたスパーキングサマーカップは、伊藤裕人騎手が鞍上となった大井のグレンツェントがゴール前で差し切り、見事1番人気にこたえました。伊藤騎手は9月2日に3勝、第7回開催は3日間で6勝を挙げる活躍でした。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年9月2日(水)スパーキングサマーカップ

優勝馬 グレンツェント

斎藤
ミキノトランペットと、出馬再投票での出走となったエスケイアリュール以外の11頭が、当初予定されていた騎手とは乗替りになりました。
竹見
スタート後、トキノパイレーツの櫻井騎手が内に切れ込んでいって、内の何頭かが狭くなる場面がありました。あそこは少し危なかった。ただ、ラチ沿いの4番手をとってからはうまく乗っていました。
斎藤
勝った伊藤騎手のグレンツェントは1番枠で、中団よりうしろからの追走になりました。
竹見
スタートで一瞬内によれて、その間に外から一気に来られてしまい、位置取りを悪くしてしまいました。
斎藤
直線では、一旦はリッカルドが抜けましたが、グレンツェントが大外から差し切りました。
竹見
前3頭が競り合って速い流れになったのもグレンツェントには向いたと思います。4コーナーでは前の5、6頭が固まっていましたから、そこで一気に外に持ち出しました。伊藤騎手は自信を持って乗っていたと思います。ゴール前で差し切るときの脚が際立っていました。馬も強いですが、前の流れをよく見て思い切って外に出した判断もよかったです。

2020年8月28日(金)はだの表丹沢森林セラピーロード認定記念

優勝馬 デランブル

斎藤
前2頭が飛ばして、田中涼騎手のデランブルは離れた3、4番手でした。
竹見
先行2頭は向正面でも競り合ったまま。こういうときは1番人気でも外の馬が譲るべきでしょう。田中騎手は好スタートを切りましたが、外から2頭が行くのを見てすぐに控えました。
斎藤
デランブルと併走していた赤津騎手のステリファラスが3、4コーナーで仕掛けて一気に先頭に立ちました。
竹見
赤津騎手の仕掛けはちょっと早かった。田中騎手はスタートで控えたのもそうですが、仕掛けるタイミングを待って、落ち着いていました。ゴール前は並ぶまもなく前を交わして行きました。馬も強かったと思いますが、田中騎手はレースの流れを読んでうまく乗りました。好騎乗だったと思います。

2020年8月31日(月)凌霄花特別

優勝馬 ブレイブウォリアー

斎藤
勝ったブレイブウォリアーは1番人気。中団ラチ沿いの追走でした。
竹見
6番の櫻井騎手(ラソワドール)がスタートしてすぐに内に入れて4番手の好位を取りました。伊藤騎手(ブレイブウォリアー)はそれを前に見ての追走でした。
斎藤
4コーナーでは櫻井騎手が外に持ち出したところ、伊藤騎手は内に進路をとりました。
竹見
櫻井騎手は、4コーナー手前で前2頭が並んでいましたから、あそこは外に出すしかありませんでした。ロスがあったというほどではないんですが、結果的に内を突いた伊藤騎手に差し切られてしまいました。一方の伊藤騎手は、よく内を抜けてきたと思います。直線を向いたところで前に山本聡紀騎手(トーケンマコット)がいて、その外に行くか迷ったような場面がありましたが、その山本騎手が、外から伸びてきた櫻井騎手に馬体を併せに行ったことで、そこに進路ができました。ただ、馬に力があるから抜けて来られたともいえます。着差は半馬身ですから、伊藤騎手も櫻井騎手も、どちらもうまく乗りました。