コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第12回開催 報知オールスターカップ 他

正月4日間開催のメインとして行われた報知オールスターカップは、浦和のタービランスが直線で抜け出し、2年連続ハナ差2着だった雪辱を果たしました。鞍上は大井の笹川翼騎手でした。 同日第11レースの七福神特別は、デランブルが好位から抜け出して1番人気にこたえました。今年も川崎に所属して期間限定騎乗の吉原寛人騎手が存在感を示しました。 4日の第11レース、招き猫特別は、逃げ粘る吉原寛人騎手のブレークオンスルーをゴール寸前で差し切ったのは、山崎誠士騎手のロカマドールでした。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2021年1月3日(日)報知オールスターカップ

優勝馬 タービランス

斎藤
御神本騎手のシャイニングアカリが単騎で逃げて、タービランスは4番手あたりの内につけました。
竹見
川崎の2100mでは1周目のスタンド前でペースが落ちて馬群が一団になることがありますが、逃げた御神本騎手がいいペースをつくって馬群がバラけました。
斎藤
隊列はほとんど変わらず、勝負どころの3コーナー手前から御神本騎手がペースアップすると、タービランスの笹川騎手がつかまえに行きました。
竹見
タービランスは斤量(58キロ)を背負っているので、早めに差を詰めておきたいということはあったでしょう。それにしてもゴール前はよく伸びました。58キロを背負ってこの勝ち方は、横綱相撲です。この馬は笹川騎手の乗り方に合っていると思います。
斎藤
直線、馬場の真ん中を追い込んだマンガンが2着でした。
竹見
マンガンは終いの脚を生かす競馬ですから、展開やペース次第というところはあります。こういう長い距離ではどうしてもペースが緩くなりますから、それで前の馬を差し切るのは容易ではありません。それを考えると、距離は1600mくらいのほうがいいと思います。それと、勝ち切るにはもう少し前の位置でレースができるようになるといいと思います。

2021年1月3日(日)七福神特別

優勝馬 デランブル

斎藤
大外枠から藤本現暉騎手のスターギアがハナをとって、吉原騎手のデランブルはラチ沿いで閉じ込められるような形になりました。
竹見
ただ吉原騎手は行く馬を行かせて、ラチ沿いの4、5番手という位置取りは想定通りだったと思います。
斎藤
向正面ではペースが遅いと見たのか、石崎駿騎手(ナムラシンウチ)が一気に位置取りを上げていきました。
竹見
3、4コーナーではその勢いのまま石崎騎手が外からまくってきて、好位にいた本田正重騎手(ノートゥルレーヴ)もそれに連れられるように行きました。ただ2頭ともまくりきれませんでした。この2頭に4コーナーでまくりきられていたら、内にいた吉原騎手のデランブルは行き場をなくしていたかもしれません。4コーナーでも手応え十分で、前にいるのは逃げたスターギアだけ。あとは直線でこれをとらえるだけという、理想的な競馬で勝てたと思います。デランブルは、このメンバーでは能力も抜けていました。

2021年1月4日(月)招き猫特別

優勝馬 ロカマドール

斎藤
山崎誠士騎手のロカマドールは大外枠で、内の行く馬を見ながら5番手あたりにつけました。向正面に入ると吉原騎手のブレークオンスルーが後続を大きく離しての逃げとなりました。
竹見
ブレークオンスルーは人気もなかったですから(6番人気)、思い切って行けという指示あったのかもしれないし、人気がなかったからほかの馬も追いかけていかなかったのかもしれません。
斎藤
ブレークオンスルーは、直線を向いてもまだ後続を離したまま、逃げ切るような勢いでした。
竹見
さすがにこれは飛ばしすぎかと思って見ていましたが、ゴール前では尾を振って苦しくなってもよく粘っていました。雨馬場だったらそのまま逃げ切っていたかもしれません。それにしてもロカマドールは4コーナーでもまだ前とは5、6馬身ほども差のある4番手あたりで、よくその位置から追い込んだと思います。アタマ差ですが、よく差し切りました。勝ったロカマドールの山崎騎手は、焦らず追い出しのタイミングを測って、それで届かなかったら仕方ないと思っていたかもしれません。これは強い勝ち方でした。ロカマドールは上のクラスに行っても通用する力はあると思います。