コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第8回開催 戸塚記念 他

9月14〜18日の開催でメインに行われたのは3歳馬による戸塚記念。ハイペースの逃げから直線でも粘っていたファルコンウイングを差し切ったのは、浦和のティーズダンク。鞍上は大井の笹川翼騎手でした。 最終日第9レースに行われたB1B2選定馬による川崎2000シリーズ、かわさきミュートン記念は、最後方追走から早めに進出した7番人気のウインブルースカイが4コーナーで先頭に立って押し切りました。鞍上は櫻井光輔騎手でした。 そして最終日最終レースに行われた恒例の川崎ジョッキーズカップ第5戦は、これまた最後方を追走した今野忠成騎手のオーマイラヴが直線馬群を縫うように抜け出し快勝、1番人気にこたえました。   今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年9月16日(水)戸塚記念

優勝馬 ティーズダンク

斎藤
ファルコンウイングのやや強引な逃げで縦長の展開になりました。
竹見
外のインペリシャブルが好スタートを切りましたが、ファルコンウイングの左海誠二騎手は内からハナを主張しました。何が何でも譲らないという感じでしたが、あまり無理に行くのではなく、相手に譲って一旦下げて、外に2番手につけていく形でもよかったと思います。
斎藤
勝ったティーズダンクは中団からの追走でした。
竹見
前が飛ばしていく展開で、かなり離れた位置を追走したティーズダンクの笹川騎手は人気上位(3番人気)でも落ち着いていました。向正面からずっと追い通しで、4コーナーでもまだ前からは差のある5番手あたり、よく差し切ったと思います。こういう馬はハイペースになって末脚を生かせる展開になったほうがいい。
斎藤
インペリシャブルは直線でばったり止まってしまいましたが、ファルコンウイングは、あのハイペースでも粘っていました。
竹見
前の2頭はかなり厳しいと思って見ていましたが、ファルコンウイングのほうはゴール前までよく粘りました(2着)。すばらしいスタミナです。左海騎手は同じ小久保厩舎の馬ではノブワイルドでも強引にハナを取りに行くことがありますが、もう少し落ち着いて行ってもいいと思います。勝ったティーズダンクもですが、2着のファルコンウイングも強かった。

2020年9月18日(金)かわさきミュートン記念

優勝馬 ウインブルースカイ

斎藤
勝った櫻井騎手のウインブルースカイは7番人気、最後方からの追走でした。
竹見
川崎2000メートルらしくスタンド前でペースが落ち着いて、前の方でも行きたがっている馬が何頭かいました。ウインブルースカイは馬群から少し離れた最後方で、折り合いがついて気分良く走っています。この展開になると、逆に折り合いがつかない馬は苦しいです。
斎藤
ウインブルースカイは向正面で早めに位置取りを上げて行きました。
竹見
ほとんど馬なりのまま、うまく流れに乗って一気に行きました。3〜4コーナーで先頭をとらえるあたりでは1頭だけ脚色が違っていました。勝負どころで先頭の御神本騎手(シャイニングアカリ)もペースを上げていますが、ウインブルースカイは4コーナーで早くも先頭に立ってしまいました。
斎藤
この馬はこういう長距離のスローペースが合っているのでしょうか。
竹見
4走前にも同じ2000メートルで、櫻井騎手が乗って、やはり後ろから早めに仕掛けて2着がありました。その時のイメージがあったのでしょう。人気を落としていたところでの好騎乗でした。

2020年9月18日(金)2020川崎ジョッキーズカップ第5戦

優勝馬 オーマイラヴ

斎藤
このレースも、勝った今野騎手のオーマイラヴは最後方からの追走でした。
竹見
今野騎手はゲートを出て、ほとんど何もしないで最後方ですから、よほど自信があったのでしょう。向正面で、軽く仕掛けただけで上がって行ったときの脚色が他の馬とはまったく違いました。
斎藤
4コーナーでは馬群の中に突っ込んで行くようでした。
竹見
普通、あそこでは外に持ち出すところですが、直線では馬群の中を縫うように伸びてきました。よほど馬に力がないとできません。ここは1番人気でしたが、上のクラスに行っても通用するでしょう。
斎藤
2着の櫻井騎手(ドリームマオ)もゴール前でよく伸びました。
竹見
櫻井騎手も1番枠からラチ沿いの中団でじっとしていてうまく乗りました。直線は、狭いところを捌いてよく2着に持ってきたと思います。