コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和元年度第6回開催 川崎ジョッキーズカップ 他

8月の前半、2・5・6日の開催では重賞は組まれず、初日には恒例の2019夏・川崎ジョッキーズカップが行われ、6月の大井・優駿スプリントで重賞初制覇を果たして以降好調の伊藤裕人騎手が勝利しました。 5日の最終レースに行われたやまなみ五湖「宮ヶ瀬湖」杯は、2番手につけた赤岡修次騎手のセイクルーガーが直線で抜け出しました。また6日の川崎ヴィーナスシリーズ・アマテラス賞でも赤岡騎手のミスダイテンが直線外から豪快に差し切りました。赤岡騎手はこの3日間開催で7勝を挙げ、7月後半の開催に続いて開催リーディングを獲得、南関東での期間限定騎乗を終えました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年8月2日(金)2019夏・川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 スエヒロドラ

斎藤
ここのところ活躍が目立つ伊藤裕人騎手です。
竹見
伊藤騎手のスエヒロドラは、外枠でもダッシュ力がありますから、内に切れ込みながら5番手、うまくいい位置につけました。騎手選抜戦ではどうしてもペースが速くなることが多く、向正面では前3頭が競り合っていました。伊藤騎手はそこからやや離れて5番手、理想的なポジションです。
斎藤
4コーナー手前では先行勢の行き脚が鈍り、外からは田中涼騎手に来られて、伊藤騎手は囲まれてしまう場面がありました。
竹見
ただ田中騎手の馬はすぐに勢いをなくしましたから、直線では外に進路が開けました。道中で同じような位置を進んでいた藤江渉騎手と併せる形になって、直線は2頭の追い比べになりました。一旦は藤江騎手が前に出る場面もありましたが、伊藤騎手が差し返しました。伊藤騎手は追ってからも慌てるところがないのがいいです。藤江騎手のほうも、これで負けたのでは仕方ありません。

2019年8月5日(月)やまなみ五湖「宮ヶ瀬湖」杯

優勝馬 セイクルーガー

斎藤
1番枠の浦和の新人・福原杏騎手が逃げて、赤岡騎手のセイクルーガーはぴたりと2番手につけました。
竹見
前4頭が競り合う形になって、1コーナーを回るところでは5番手以下が大きく離れました。内の2頭、福原騎手と赤岡騎手は無理せず先行できたのに対して、外の2頭、エクセレンワールド、1番人気のブルベアダイズは、結果的に10着、11着沈んでいますので、外枠からその位置を取るには無理があったのかもしれません。この2頭は前に行けという指示があったのかもしれません。
斎藤
直線を向くまで福原騎手のリオヴァンクールが先頭でしたが、すぐにこれをとらえた赤岡騎手のセイクルーガーが突き放しました。
竹見
ゴール前は福原騎手も一杯になって、勝ち馬以外はがらりと入れ替わりました。3馬身差で2着に入った石崎駿騎手のニヨドハンターは3コーナーで最後方、3着の伊藤騎手・エスプリロブも4コーナーでほとんど最後方の位置からの直線一気でしたから、前はやはりハイペースだったと思います。それでも、先行して直線でも後続を寄せ付けなかったセイクルーガーは力が抜けていました。それにしても赤岡騎手は3、4コーナー中間から追い通しで、終いまでよく脚を使ったと思います。

2019年8月6日(火)川崎ヴィーナスシリーズ・アマテラス賞

優勝馬 ミスダイテン

斎藤
勝った赤岡騎手のミスダイテンは仕掛けていかず、前半は縦長の中団からの追走でした。
竹見
この流れであれば、赤岡騎手なら普通はもっと位置を取りに行くと思います。それがゲートを出ても仕掛けず、抑えて行きました。この馬には2走前に一度乗ったことがあって、抑えいったほうがいいとわかっていたのではないでしょうか。赤岡騎手ほどになれば、一度乗った馬にはどう乗ればいいかわかっていての作戦でしょう。
斎藤
じわじわと位置取りを上げてきて、4コーナー5番手から直線で差し切りました。
竹見
道中はずっと抑えたまま、外々を回ってきました。4コーナーを回って、直線でもミスダイテンはあまり反応がよくありません。それでもゴール前ではしっかり脚を使うというのがわかっていたと思います。仕掛けたからといってすぐに反応できる馬ではなく、惰性で行って最後に伸びる。山崎誠士騎手のシゲルアサツキのほうが直線では反応よく先に抜け出しましたが、ミスダイテンはゴール前50メートルからの脚色が違いました。山崎騎手のほうは道中、先行勢のうしろにつけて抜群のタイミングで抜け出しているので、これで負けたのはしかたありません。