コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和元年度第5回開催 ゴールデンルーキー賞 他

7月後半は18・19・22・23日の4日間開催。19日に行われたJRA認定のゴールデンルーキー賞を勝ったのはマンガン。4コーナー6番手から豪快に差し切りました。鞍上は山崎誠士騎手でした。 同日第10レースのみうらレンタサイクル特別は、中団で脚を溜めた3番人気アーリーサプライズが直線半ばで抜け出しました。鞍上は川崎で期間限定騎乗中の赤岡修次騎手でした。 そして最終日のメインに行われた文月オープンは、先に仕掛けて直線先頭に立ったセンチュリオンを、ゴール前でとらえたのがヤマノファイトでした。これも鞍上は赤岡修次騎手で、この開催7勝、2着6回で、開催リーディングとなりました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年7月19日(金)ゴールデンルーキー賞

優勝馬 マンガン

斎藤
逃げたのは赤岡騎手のスティローザ。勝ったマンガンは、3コーナーでもまだ後方2番手という位置取りでの差し切りでした。
竹見
スティローザはスタート後すぐにハナに立って赤岡騎手が抑えようとしていましたが、岡村騎手のポピュラーソングが競りかけてきたこともあって、馬が行きたがってしまいました。向正面では3番手が7、8馬身も離れていたように、前が飛ばしたために上がりもかかりましたが、それにしてもマンガンはあの位置からよく届きました。
斎藤
ゴール前はあっという間に、1馬身半差をつけました。
竹見
4コーナーを回ってあの位置では、普通では間に合わないような感じです。前の2頭も、前半速かったとはいえゴール前でそれほどばったり止まったわけではなく、それでも余裕で差し切りました。ゴール前では勢いが1頭だけ違っていました。2歳馬とは思えないレースぶりです。クラスが上がっても、距離が伸びてもやれそうです。馬も強いですが、山崎誠士騎手も流れを読んでうまく乗りました。
斎藤
1番人気に支持されていたスティローザはそれでも2着に粘りました。
竹見
スティローザはスタート後にポピュラーソングにからまれて厳しいペースになりました。マイペースでゆったり行ければ逃げ切りもあったかもしれません。

2019年7月19日(金)みうらレンタサイクル特別

優勝馬 アーリーサプライズ

斎藤
赤岡騎手のアーリーサプライズは控えて5、6番手からの追走でした。
竹見
赤岡騎手はスタート後、気合を入れて行きましたが、内からも外からも速い馬が来て、1コーナーを回るところでは、前4頭が集団になっての単独5番手。結果的にラチ沿いにいい形でいい位置につけることができました。
斎藤
3コーナー過ぎでは前の集団に接近して、どこから抜けようかという感じでした。
竹見
すぐ前にいた矢野騎手(フィーユドトネール)の手応えがよかったですから、前が詰まることはありません。その矢野騎手が4コーナーで外に行きましたから、赤岡騎手はちょうどそこに進路ができました。さらに直線を向いて、本田騎手(コパノメンデス)も外に行きましたから、目の前が完全に開きました。勝ったアーリーサプライズは、馬に力があったのも確かですが、赤岡騎手のコース取りもよかった。

2019年7月23日(火)文月オープン

優勝馬 ヤマノファイト

斎藤
赤岡騎手のヤマノファイトは好スタートでしたが、3番手に下げました。
竹見
真島騎手のジャーニーマンがハナを主張したので、3番手のラチ沿いは一番いい位置です。スタンド前はスローペースに落ちました。
斎藤
向正面では、まず岡部騎手のタマモネイヴィーが仕掛けて、さらに3コーナー手前で1番人気センチュリオンの左海騎手も動いて行きました。
竹見
人気になった左海騎手は道中、ヤマノファイトをマークしていたと思います。それで勝負どころでは先に動きました。赤岡騎手は前走もこの馬(ヤマノファイト)に乗って勝っていて、終いの脚がいいのはわかっていますから、そこではまだ我慢したのでしょう。急にペースが上がっても対応できるのがヤマノファイトのいいところです。ゴール前はセンチュリオンとの追い比べとなって、競り落としました。
斎藤
この距離(2000m)になると、騎手同士の駆け引きも重要になりますか?
竹見
そうですね。ただ僕だったらもう少し早く動いていったかもしれません。1周目のスタンド前で、3番手でも内ではなく外にいれば、もう少し早く仕掛けていって、そのまま押し切ったと思います。対して左海騎手のほうは、スタンド前では赤岡騎手のうしろ。外に出したくても出せず、位置取りを悪くしてしまいました。それでスローペースですから、3コーナー手前で仕掛けてから追い通しとなって、最後に競り負けたのはそのぶんがあったかもしれません。