コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和元年度第11回開催 全日本2歳優駿 他

12月16~20日の開催メインとして行われた全日本2歳優駿JpnIを制したのは高月賢一厩舎のヴァケーション。中央との交流になった1997年以降では、川崎所属馬による初勝利となりました。鞍上は吉原寛人騎手でした。 16日に行われたB3級・梅の宴特別は、山崎誠士騎手のウインポプリが直線大外から差し切りました。2着にブラウローゼットが入り、河津裕昭厩舎のワンツーでした。 開催最終日に行われた恒例の2019冬・川崎ジョッキーズカップは、阪上忠匡騎手のディーエスバイタルが1番人気にこたえて逃げ切りました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年12月18日(水)全日本2歳優駿

優勝馬 ヴァケーション

斎藤
逃げたのは1番枠のアイオライト。鎌倉記念を逃げ切ったインペリシャブルが競りかけていきました。
竹見
インペリシャブルも行くつもりでいたでしょうから、その勢いで来られたアイオライトは少しかかっていました。さらに3番手外のテイエムサウスダンも行きたがっていました。それだけに前は厳しいペースになりました。アイオライトの武藤騎手は3コーナーから後続を離しましたが、あそこはもう少し我慢してもよかった。仕掛けるのは4コーナー手前か、4コーナー回ってからでもよかったと思います。それでも最後までよく粘りました。
斎藤
勝ったヴァケーションは、吉原騎手が鞍上でした。中団からの追走で、直線での伸びは抜群でした。
竹見
人気があまりなかったことで思い切った騎乗ができたこともあったかもしれません。向正面での行きっぷりも良かった。勝因は4コーナーです。3、4コーナーから2番手グループの3頭が前を追いかけて、内のゴールドビルダーは直線を向くまで勢いがあったので、直線を向いてヴァケーションはそのうしろ、空いたところをうまく抜けてくることができました。アイオライトに逃げ切られたかと思いましたが、ゴール前100mくらいのキレも素晴らしかった。吉原騎手はこの秋、南部杯(サンライズノヴァ)を勝って、船橋のクイーン賞(クレイジーアクセル)も勝って、そうした勢いもあったと思います。
斎藤
北海道の石川倭騎手が騎乗したティーズダンクも最後、大外をよく伸びていました。
竹見
差し切るような勢いもありましたが、勝ち馬とは、4コーナーで通ったところの差ですね。ヴァケーションと同じように内を突けばよかったかとも思いますが、外をまくってきて馬に勢いがついていますから、あそこは外を回すしかありませんでした。

2019年12月16日(月)梅の宴特別

優勝馬 ウインポプリ

斎藤
勝ったウインポプリは先行争いには加わらず、山崎騎手はほとんど最後方からの追走でした。
竹見
スタート後の直線は先行争いになって、前半のペースは速くなりました。1番人気のオクタヴィウスは、道中は楽に逃げているように見えましたが、やはりテンに無理したぶん、最後は苦しくなりました。山崎騎手は流れを見て落ち着いて乗っていたのがよかった。
斎藤
ウインポプリは、前走も前々走も2番手か3番手の好位を追走していました。
竹見
今回はメンバーを見て、うしろからという作戦だったのかもしれません。8番枠の藤本現暉騎手(スターギア)が逃げるような感じでしたが、その外から矢野騎手(オクタヴィウス)が行って、さらに大外から町田騎手のブラウローゼットも来ましたから、矢野騎手の馬は1、2コーナーで掛かって行っていました。山崎騎手はこのあたりもじっとして動きませんでした。
斎藤
山崎騎手が仕掛けたのは4コーナーの手前。直線は7番手あたりから差し切りました。
竹見
レースの上りが41秒3とかかったところ、ウインポプリは39秒9。ゴール前はぜんぜん脚色が違いました。あの位置取りで勝つということは、前がよほどバテたと思います。2番手につけた町田騎手のブラウローゼットはよく2着に粘りました。2番手をとったところで流れに乗って折り合いをつけたぶんでしょう。

2019年12月20日(金)2019冬・川崎ジョッキーズカップ

優勝馬 ディーエスバイタル

斎藤
スタート後は先行争いが激しくなりました。
竹見
森下騎手が出ムチを入れて行く気を見せましたが、外から阪上忠匡騎手が行きました。やや強引に内に切れ込んで行ったのは、あまり感心できません。2頭の間には中越騎手もいて、内の2頭が狭くなって行き場をなくすようなところがありました。
斎藤
阪上騎手のディーエスバイタルは、直線後続を突き放して逃げ切りました。
竹見
先頭に立ってからはうまくペースを落としたので、直線を向くまで手応えは楽なままでした。1番人気だったこともありますが、これは馬が強かった。
斎藤
2着は本田紀忠騎手のギャップオブリアルでした。
竹見
1コーナーを回るあたりでは縦長の中団よりうしろでしたが、向正面でペースが落ち着いたところで位置取りを上げていきました。これは本田騎手はうまく乗りました。勝ち馬には4馬身離されましたが、無理せず位置取りを上げていったぶん、最後は2着争いでよく粘りました。