コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和元年度第8回開催 戸塚記念 他

9月3~6日の開催のメインとして行われた戸塚記念は、地元凱旋出走のヒカリオーソが東京ダービー馬の貫禄を示しました。 この開催では特別戦で川崎所属騎手の勝利が少なく、ほかは一般戦から。初日第2レースの3歳戦では、酒井忍騎手のニシノライリーが4コーナー先頭から強い勝ち方を見せました。また6日第3レースの2歳戦では、藤江渉騎手のオーメイが直線での追い比べを制しました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2019年9月4日(水)戸塚記念

優勝馬 ヒカリオーソ

斎藤
好スタートのヒカリオーソは、外のトーセンボルガを行かせて2番手から。
竹見
ヒカリオーソはダッシュ力があります。楽に好位が取れるし、折り合いもつきます。それがこの馬の強みです。トーセンボルガを行かせると、すぐに外目の2番手につけました。トーセンボルガがいいペースで引っ張ってくたので、普通ならペースが緩む1周目のスタンド前でペースがそれほど緩むこともなく、ヒカリオーソにはレースがしやすかったと思います。
斎藤
向正面でうしろから笹川騎手のグリードパルフェが一気に仕掛けてきましたが、山崎騎手は前に行かせませんでした。
竹見
そこで一気に先頭に立ったのは正解です。あとは相手が来るだけ自分も前に出ればというレース運びです。
斎藤
直線を向いたあたりでは、追ってきたウィンターフェルにも勢いがありました。
竹見
ウィンターフェルが一旦は差を詰めてきましたが、ヒカリオーソは詰めさせませんでした。最後まで伸びているので、距離が伸びてもよさそうです。スタートダッシュのいい馬は掛かっていくことがありますが、この馬はすぐに折り合いがつきます。血統的にも、母の父がダッシュ力のあるサウスヴィグラスで、父が終いの粘りがあるフリオーソですから、それがいいほうに出ていると思います。

2019年9月3日(火)3歳(3)

優勝馬 ニシノライリー

斎藤
勝った酒井忍騎手のニシノライリーは控えて4番手からでした。
竹見
酒井忍騎手も最初は行く気を見せましたが、外から町田騎手がハナをとる勢いで行って、ほかに左海誠二騎手、増田騎手と3頭が競り合って行きました。酒井忍騎手はあまり仕掛けずに4番手、前が速くなったのでちょうどいい位置になりました。
斎藤
3コーナーからは一気に前をとらえにかかりました。
竹見
ニシノライリーは上がって行くときの脚色が違いました。直線では単独で先頭、強い勝ち方でした。もうひとつ上のクラスに入っても勝てるでしょう。やはり前が速かったので、先行した馬たちは3頭とも着外でした。
斎藤
大外から追い込んだ伊藤裕人騎手のキンイロノツバサが2着に入りました。8番人気でした。
竹見
伊藤騎手はスタートで躓いて最後方からになりました。躓いてなければもう少し前につけていたかもしれませんが、人気もなかったですから、無理には行かず、前が速くなって展開にも恵まれました。

2019年7月6日(金)2歳(6)

優勝馬 オーメイ

斎藤
3着ボーラーベルンの中越騎手はスタートでムチを入れて内目4番手、勝った藤江騎手のオーメイはさらにうしろ6番手からでした。
竹見
藤本騎手のディーエスラジカルが気合を入れて逃げました。外から町田騎手が競りかけて、前はハイペースになりした。中越騎手はそのうしろのラチ沿いで、いい位置につけました。
斎藤
勝った藤江騎手は、4コーナーで大外に出しました。
竹見
3コーナーまで内をまわってきて、4コーナーでは前が固まっていたので大外に出したのは正解です。前半に仕掛けていかなかったのは、末脚勝負に賭けていたのかもしれません。直線では懸命に追って差し切りました。こういう追わせる馬は藤江騎手に合っていたのではないでしょうか。
斎藤
内の中越騎手は惜しい3着でした。
竹見
中越騎手は直線を向いたところでうまく内を突いて、一旦は先頭に立って勝ったかと思いましたが、最後は外の2頭に差し切られて3着。勝てはしませんでしたが、うまく乗ったと思います。負けても思い切ったレースをしての結果なので仕方ないと思います。