コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成27年度第5回開催 カーネリアンフラワー賞 他

7月22日~25日は重賞のない変則4日間開催。 23日、JRAとの条件交流・カーネリアンフラワー賞では、JRAのトーセンアスリートに騎乗した今野忠成騎手がゴール前の接戦を制しました。 24日、3歳1組の湘南江の島海の王子杯では、瀧川寿希也騎手のヨイチビームが、1番人気サチノマリアージュの追撃をしりぞけての勝利でした。 そして25日の最終第8レースの三浦市市制60周年記念特別では、8番人気のシゲルオウミを郷間勇太騎手が勝利に導きました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2015年7月23日(木)カーネリアンフラワー賞

優勝馬 トーセンアスリート

斎藤
縦長の展開で、勝った今野騎手のトーセンアスリートは中団よりうしろからでした。
竹見
前は2頭が競り合いました。増田騎手のイナズマアリオーンが逃げて、外から中央のフクノコニャックが掛かり気味に並びかけて行ったので、イナズマアリオーンも譲らずハイペースになりました。
斎藤
2番人気、瀧川寿希也騎手のピースフォーエバーが3コーナー過ぎで先頭に立ちました。
竹見
向正面で1番人気のイシドールスが迫ってきたので、ピースフォーエバーもペースを上げましたが、前が速かったぶん、結果的に仕掛けが早かったかもしれません。
斎藤
ゴール前ではトーセンアスリートが差し切ました。
竹見
ペースが速かったので、直線では先行勢と、うしろから追い込んできた馬たちとが完全に入れ替わりました。早めに仕掛けた中では瀧川騎手のピースフォーエバーがようやく4着に残りましたが、うしろから行ったトーセンアスリートの末脚が生きる展開になりました。スタート後にすぐに下げた今野騎手が、うまく流れを読んだということもあったと思います。

2015年7月24日(金)湘南江の島海の王子杯

優勝馬 ヨイチビーム

斎藤
瀧川寿希也騎手のヨイチビームは、ぴたりと2番手からでした。
竹見
前は3頭が固まって、ペースはそれほど速くありませんでした。人気になっていた石崎駿騎手のサチノマリアージュが、そのうしろ4番手のいい位置につけていました。
斎藤
直線を向いて瀧川騎手が先頭に立って、石崎騎手を振り切ります。
竹見
瀧川騎手は、4コーナーから直線を向いたところで、外に膨れそうになるところを、逃げて内にいたセイントエンペラーにぴたりと寄せました。石崎騎手は、その間を狙っていたのでしょう。そこが空かなかったので、直線で外に切り替えることになりました。最後はそのぶん、半馬身届きませんでした。もし瀧川騎手が4コーナーで外に膨れていれば、石崎騎手が間を突いて差し切っていたでしょう。4コーナーで内に寄せたところでは、すぐうしろに石崎騎手が来ていたので(進路妨害)ギリギリのところでしたが、瀧川騎手はよく見ていたと思います。好騎乗でした。

2015年7月25日(土)三浦市市制60周年記念特別

優勝馬 シゲルオウミ

斎藤
郷間勇太騎手のシゲルオウミは、スタート後すぐに控えて中団の内を追走しました。
竹見
前半はゆったり流れていましたが、勝負どころの3コーナーからは前3頭が競り合ってペースが上がりました。4コーナー手前で、その3頭のうしろまで位置取りを上げてきていたのが郷間騎手です。手応えも楽なままでした。
斎藤
岡部誠騎手のトモノタイガも外から迫ってきていました。
竹見
郷間騎手は4コーナーを回ったところで、わずかに空いた内を突きました。対して、岡部騎手は前3頭の外を回すしかありませんでした。郷間騎手のシゲルオウミが直線半ばで見事に抜けて、岡部騎手のトモノタイガも外から伸びて、4コーナーで前にいた3頭はとらえましたが、シゲルオウミには1馬身半差でした。4コーナーで内を回ったぶんと、外を回ったぶんは、その着差以上にあったと思います。郷間騎手は人気がなかったぶん(8番人気)気楽に落ち着いて乗れたこともあったと思いますが、4コーナーで一瞬空いた内を突いたところは、川崎コースでは最高の乗り方でした。