コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成26年度第11回開催 報知オールスターカップ 他

正月開催恒例の重賞、報知オールスターカップは、川崎のドラゴンエアルが勝ちました。これでダービーグランプリ(水沢)から重賞連勝。3歳のクラシックシーズンはあと一歩のところで重賞に手が届きませんでしたが、ここにきて力をつけているようです。今回の鞍上は船橋の森泰斗騎手でした。 そして昨年、川崎所属騎手では2年連続で山崎誠士騎手がリーディングとなりました。その山崎騎手が見事な騎乗で勝利に導いた、2日のニューイヤー特別、6日の末広特別の2レースも併せて、佐々木竹見さんにお聞きしました。(聞き手・構成/斎藤修)

2015年1月3日(土)報知オールスターカップ

優勝馬 ドラゴンエアル

斎藤
ドラゴンエアルは、今回も中団よりうしろからで、森泰斗騎手は2周目の向正面から早めに仕掛けて行きました。
竹見
この距離では向正面に入って、残り半マイルから仕掛けていくというのが正攻法です。流れも落ち着いていたので、自分から動いていったのでしょう。
斎藤
3コーナー過ぎでは早くも先頭に立ちました。
竹見
外から絶好の手ごたえで上がって行きました。わりと年が上の馬が多いというメンバーで、森騎手は力の違いはわかっていたでしょう。さらに逃げた馬も早めにバテていましたから、自信を持って乗っていたと思います。川崎からも強い馬が出てきてくれてよかったです。
斎藤
カキツバタロイヤルが、ゴール前でバトードールをとらえて2着でした。
竹見
カキツバタロイヤルの中野省吾騎手もうまく乗っていました。もともと力のある馬で、明けて9歳ですが、よく走っています。

2015年1月2日(金)ニューイヤー特別

優勝馬 アイディアバイオ

斎藤
勝った山崎誠士騎手のアイディアバイオは中央からの転入初戦です。後方3番手からでした。
竹見
前が競り合ったわけでもなく、すぐに落ち着きましたが、縦長の展開になったので、テンのペースは速かったのかもしれません。
斎藤
4コーナーから直線を向いたところでは、前がずらっと壁になりましたが。
竹見
こういうふうに内外で広がると、どこかがかならず開くので、山崎騎手は仕掛けを待って、それを狙っていたのでしょう。内に行くと詰まる可能性があるので、外目に持ち出したら、うまく前が開きました。3~4コーナーあたりでは、前を見ていればどの馬がバテてくるかだいたいわかりますから、それを見てのコース取りだったのかもしれません。
斎藤
2着のマーシャルシップ(森泰斗騎手)に最後は1馬身半差をつけました。
竹見
4コーナーでは何頭かが外へ外へと行って、森騎手は大外を回すことになったので、その差はあったかもしれません。結果的に先行勢はほとんど着外だったので、やはりペースが速かったのでしょう。それにしてもアイディアバイオの力が抜けていたということもありました。山崎騎手は最近、こういういい騎乗を見せます。落ち着いて乗っているのが結果につながっていると思います。

2015年1月6日(火)末広特別

優勝馬 シゲルエチゴ

斎藤
山崎騎手はこの馬でも後方2番手から行って、転入後3連勝となりました。
竹見
山崎騎手は、3コーナーあたりでも、うまく馬群をさばいて、位置取りを上げていきました。このあたりでは、すでに他馬とは脚色が違っていました。
斎藤
4コーナー手前では前5頭が固まって、山崎騎手はその直後で、最内を突きました。
竹見
内を突いても、直線を向いたところで前が開きました。外に振れた真島騎手のジュリエットレターの動きをよく見ていました。それと、力があることがわかっていますから、タイミングを見て、開いたらいつでも抜け出せるということもあったでしょう。
斎藤
それにしても1番人気馬で、よくあれほど後ろからレースができるものと思いますが。
竹見
山崎騎手は度胸がいいというのか、馬を信じて乗っているんだと思いますが、終いの脚を生かしました。わたしの現役のころだったら、いくら終いのいい馬でも、どうしても後ろのほうからは行けずに、できるだけ先行してという競馬をしていました。それを考えると、いいタイミングで動いて、うまく乗っているなと思います。まわりの動きも見えてるんだと思います。今回も1番人気とはいえ、褒められる騎乗でした。