重賞レース

第11回 川崎マイラーズ(SIII)

2019年5月15日

レースガイド RACE GUIDE

南関東で3歳牡馬が古馬にはじめて挑む重賞。17年、的場文男騎手がリアライズリンクス(浦和)で地方通算7000勝目となる差し切り勝ちを収めたのは記憶に新しい。14年のNARグランプリ最優秀短距離馬サトノタイガー(浦和)、16年の年度代表馬ソルテ(大井)はともにこのレースが古馬重賞初制覇。飛躍を期す馬たちの戦いに注目だ。

コースガイド

4コーナーのポケットから発走し最初のコーナーまで500mあり、さほどハイペースにはなりません。差し馬にとってはカーブがきつい3コーナーでうまく立ち回ることが求められます。

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4~7歳が活躍しリピーターは少ない

※データは、過去10年分(09~18年)を対象にした。

大荒れは少ない

単勝1番人気は5勝、2着1回だが、3着はなし(複勝率60.0%)。3着以内30頭のうち24頭が5番人気以内で、単勝5→8→13番人気で3連単107万円となった17年、3→9→7番人気で3連単42万円の12年を除いては、比較的堅く収まっている。

【単勝人気別成績】(過去10回)

  1着 2着 3着 着外
1人気 5 1 0 4
2人気 2 2 0 6
3人気 1 2 3 4
4人気 1 1 2 6
5人気 1 1 2 6
6番人気以下 0 3 3 76

船橋、浦和、大井が互角

船橋5勝、浦和3勝、大井2勝で、川崎は3着3回が最高。複勝率でみれば、勝利がある3場が27~30%台でほぼ互角の成績を挙げている。浦和の3着以内はすべて小久保智厩舎で、船橋では2勝、3着1回の川島正一厩舎、大井では2着4回、3着1回の荒山勝徳厩舎が好成績を残している。

【所属別成績】(過去10回)

  1着 2着 3着 着外
大井 2 5 3 23
船橋 5 4 3 29
浦和 3 1 1 13
川崎 0 0 3 37

6歳が勝率トップ

5勝の6歳が勝率では断然。勝利があるのは4~7歳で、8歳以上は43頭出走し3着3回があるのみで、高齢馬は不振傾向。
なお前年3着以内馬が翌年も3着以内に入ったのは、14年2着、15年1着のソルテ(大井)のみ。リピーターの活躍は少ない。

【年齢別成績】(過去10回)

  1着 2着 3着 着外
4歳 1 4 0 8
5歳 2 2 5 16
6歳 5 1 2 15
7歳 2 3 0 23
8歳以上 0 0 3 40

牝馬はダートグレード級でも苦戦

3着以内30頭のうち28頭が牡馬・セン馬。牝馬は出走頭数そのものが9頭と少ないにせよ1勝、3着1回。16年にはマリーンカップJpnIII・2着ブルーチッパー(大井)、10年にはTCK女王盃JpnIII・1着ユキャン(川崎)がともに1番人気で着外になるなど、実績馬でも苦戦している。

【性別成績】(過去10回)

  1着 2着 3着 着外
牡・セン 9 10 9 93
1 0 1 9

前走マイル戦好走馬

前走1600m戦で勝利していた4~7歳の牡馬・セン馬が出走16頭で5勝、2着1回、3着2回(複勝率66.7%)の好成績。近年好相性のステップは隅田川オープン(大井1600m)。同レースで3着以内だった馬は、過去4年で3勝、2着1回、3着1回で複勝率100%となっている。
 
ライター: 栗田勇人

金子正彦

金子正彦

1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。

中川明美

中川明美

競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

プロフィール_2

第11回川崎マイラーズ(SIII)

注目馬情報

■キャプテンキング (牡5歳 大井・的場直之厩舎)

写真:真鍋元

年末のゴールドカップ、3月のフジノウェーブ記念、4月のブリリアントカップと重賞3連勝で勢いづいている。
中央からの移籍緒戦だった羽田盃では逃げを打ち、いきなり戴冠。その後は距離短縮を図られてマイル前後を使われてきた。

「一戦ごとに力をつけているし、すごく高いレベルで安定している。初コースになるが左回りは上手なので期待は大きい」と的場直之調教師。

すっかり軌道にのり、逃げて良し差して良しと自在な脚も魅力。
川崎コースは初めて走るが、小回り、左回りはゴールドカップですでに結果を出しており不安材料にはならない。
58キロも経験済みだ。

■ベンテンコゾウ (牡5歳 船橋・川島正一厩舎)

写真:真鍋元

船橋に再転入後は3連勝。
岩手とのスライドを繰り返したが、岩手所属時代には北海道に遠征して道営二冠を勝ち取ったタフな実力馬。

「スピードもあるし、とにかく競馬が上手だね。前走後も順調に乗り込んで調整もうまくいった。ハナにこだわらずに競馬ができるのも強み」と川島正一調教師。

前走のオープン特別勝ちも鮮やかで、まだ底を見せていない印象だ。

「砂をかぶったことがないので気をつけるのはそこだけ。距離マイルも丁度いいし、南関重賞を獲れる力は持っていると思う」と御神本訓史騎手。

レース巧者だけに、初めての川崎コースにもあっさり対応しそう。
距離マイルは丁度いい。

■トキノパイレーツ (牡4歳 川崎・八木正喜厩舎)

写真:真鍋元

昨夏に中央より移籍。
中央2勝馬で、ユニコーンステークスGIIIでは6着だったが勝ち馬ルヴァンスレーヴにコンマ9秒差の競馬。レパードステークスGIII、白山大賞典JpnI勝ちグリムにも先着しているように最強世代の一角にあった。

実力はありながらも、ササリ癖や手前を替えようとしない課題がつきまとい、川崎入厩当初は手前を替える調教に重点を置いたが、試行錯誤で矯正に取り組んだのが森下博騎手。
コンビで重賞制覇を目指していたが、森下騎手は4月開催の落馬事故によりもっか療養中。
手綱を委ねられたのは町田直希騎手で、戸塚記念2着以来の騎乗になる。

「難しい面はありますが力のある馬。このところ早め先頭に立って負けているのでそこに気をつけて乗ろうと思います。前に馬を置いてレースができるといいですね」と町田騎手

肝の据わった騎乗で定評のある町田騎手が、タメて切れる脚を引き出してくれるかもしれない。

■ハセノパイロ (牡4歳 船橋・佐藤賢二厩舎)

写真:真鍋元

中央競馬に違わず南関東でも最強の呼び声高い明け4歳世代の中で、東京ダービー制覇という世代の頂点に輝いた。
2歳時にはハイセイコー記念を勝ち、全日本2歳優駿JpnI3着の実績でNARグランプリ2017では2歳最優秀牡馬にも選出されている。

「ジャパンダートダービー後の休養で大きく増量した馬体が絞りきれずにいた上に、ゲートの課題があってなかなか自分のレースができていない。スタート五分にさえ出ればこの馬らしさが出せるんだが」と佐藤賢二調教師は近走をふり返った。

年明けの復帰からの古馬戦も4戦走ってきたが、前走のブリリアントカップでも致命的な出遅れで大敗。
この中間の調教では首をしっかり使えるようになり、実績のある川崎コースでリズムを取り戻したい。

■クリスタルシルバー (牡4歳 大井・村上頼章厩舎)

写真:真鍋元

昨年のクラシックでは羽田盃7着、東京ダービーで2着。そしてジャパンダートダービーJpnIでは勝ち馬ルヴァンスレーヴにコンマ3秒差で地方馬最先の4着入線を果たし、NARグランプリでは3歳最優秀牡馬に選ばれた。
古馬との初対戦となったマイルグランプリでは並み居るSI馬を抑えてレース最速の上がりで突き抜け、初めてのタイトルを手にした大物食い。

「距離適性を探ってきたがマイル前後が走りやすそう。ここまで地元大井から出ることなく使ってきた内弁慶。初めての遠征競馬になるが調教の動きからも左回りは問題ないだろう」と村上頼章調教師。

叩き3戦目で馬体もさらに良化。
血統背景からも古馬になっての充実が見込まれ、初コースへの対応がクリアできれば今後の幅も広がる。

■バンドオンザラン (牡5歳 川崎・内田勝義厩舎)

写真:真鍋元

前走は名古屋の東海桜花賞に遠征するも、スタートで後手を踏んで後方からの競馬。直線は追い込んできたが3着までが精一杯だった。
いつになくイレ込んでいる仕草も見せていた。

「名古屋では自分のレースができなかったね。レース後は長距離輸送の反動も見られなかった。今回は一週前にビシッとやって直前は軽めの調整にしたが良い具合に仕上がっている。マイルは守備範囲なので今度こそスムーズな競馬をしてチャンスをつかみたい」と内田勝義調教師。

3歳時には1200mの優駿スプリントを制覇したようにマイル以下がベスト。ハミを替えてからレースにも幅が出てきた。
重賞制覇もこの時季だったように暑さ増す前の今の時節に調子を上げるタイプ。

■ゴールデンバローズ (牡7歳 大井・藤田輝信厩舎)

写真:真鍋元

今年の正月開催から南関東に仲間入りすると、緒戦の川崎・大師オープンでいきなり快勝。
2015年にはドバイに遠征しUAEダービー3着した強者であり、東京コースのマイル中心に使われていたことから小回りの競馬への対応がひとつの鍵だった。

「川崎では勝っていますが、この馬の持つ本来の能力はまだ出し切れていないように感じています。ここは目標にしてきたレース。距離は1600mくらいが一番合っているのかもしれません。普段は大人しいのに競馬場に来るとスイッチが入ってしまうようで、返し馬でテンションが上がらないように加減が難しいですね」と藤田輝信調教師。

ここ2戦は距離1800m、大井の右回りと条件が合わず敗戦したが、これまでの6勝すべてが左回りの距離マイル。
適条件に変わり本領発揮といきたい。

■ウェイトアンドシー (セン8歳 浦和・小久保智厩舎)

写真:真鍋元

中央時代は1000万条件を走っていたが、昨年初めに転入するとトントン拍子に4連勝で川崎マイラーズを優勝。
スピード値の高さでスパーキングサマーカップも制し、秋には名古屋に遠征してゴールド争覇を勝っている。
マイルを中心のローテーションで使われてきたが、初めて走る環境では物見をして集中力を欠くこともあった。

「スタートセンスの良い馬。最初のコーナーまでの加速が速いので思った位置が取れるのは強み。横に馬が並んでくるとまた反応して差し返すような勝負根性もある」と今野忠成騎手。

川崎コースならこれまで5戦して4勝と適性抜群。
昨年のようなロケットスタートを期待したい。

金子正彦

金子正彦

1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。

中川明美

中川明美

競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

プロフィール_2

写真:真鍋元

これから夏場にかけて続く古馬のマイル戦。
川崎マイラーズはその序章であり、タイトルを持つ実力馬が揃うなか、重賞3連勝中のキャプテンキングが1.8倍の1番人気に支持された。

注目の先行争いは、バンドオンザランがダッシュ良く飛び出してレースを引っ張り、2番手はベンテンコゾウ。イン3番手にキャプテンキングが続いた。
よどみない流れで、レースは縦長状態。
終始好位でレースを進めていたキャプテンキングが直線ラクに抜け出して重賞4連勝を飾った。
中団で脚をタメていたトロヴァオ、クリスタルシルバー、さらにはトキノパイレーツが猛追するが、わずかに及ばなかった。

写真:小川慎介

1着 キャプテンキング

今回は好位から抜け出すかたちだったが、自在な脚質を武器に完勝。
58キロのトップハンデも何のそので、ペース問わず立ち回るレース巧者ぶりを発揮した。
暑さに弱いことからこのあとは休養に入り、復帰プランは秋のマイルグランプリから。その先には浦和コースが舞台のJBCスプリントJpnIに向かう予定だ。

<的場直之調教師>
すごく頑張ってくれましたね。スタートして包まれたんで、外に出せるかと心配したんですが、外からいい脚を使ってくれました。直線はもっと伸びるかと思ったくらい。なんとかしのいでくれました。右回りも左回りもどんなレースもできるのがこの馬の強み。このあとひと休みして秋のJBCを目標にしたい。


 

<坂井英光騎手>
自信はあったんですけど、競馬は何があるかわからないので今はホッとしています。正直いえばもっと楽勝するかと思ったんで最後は危なかった。前走は距離が長かったので馬のリズムを重視しましたが、今回はハナに行ってもいいかなというくらいの気持ちで乗りました。4コーナーで仕掛けた反応も良かったですね。ただ脚音が聞こえてきて一瞬ヒヤッと。初コースは気にしませんでしたが、暑さに弱いので今日の最後の伸びを考えると少しずつ影響が出ているのかもしれません。どんな競馬もできること、ジョッキーの指示に順応なところはこの馬のセールスポイント。秋のJBCをぜひ使いたい。楽しみです。


2着 トロヴァオ

道中は中団でじっくり脚をため、最後は勝ち馬キャプテンキングに半馬身差まで迫る力走だった。
今回は短期放牧明けだったが、休養明けに好走するパターンの持ち主。
ハイセイコー記念、ダービーグランプリを制した実績馬が8番人気の評価を払拭し、ようやくトンネルを抜け出した感がある。
テン乗りの矢野貴之騎手もうまく持ち味を引き出した。
暑さや道悪を苦にする面があることから、次は京成盃グランドマイラーズ、もしくはひと息入れてサンタアニタトロフィーというプランが上がっている。

<矢野貴之騎手>
力ありますね。悔しい。
考えていた通りの位置取りで競馬ができましたが、最後は決め手の分かな。外からでもいい感じで伸びてはいたんですが、4コーナーで内を狙っていたら結果は違っていたのかも。

3着 クリスタルシルバー

クラシックでの好走から距離適性を探っていたが、いきなりSI級の古馬を下したマイルグランプリでの勝利は印象が強い。今後もマイル前後を使われることになりそうだ。
初の遠征競馬にしては馬場を気にすることなく左回りへの対応力も見せた。

<的場文男騎手>
58キロで差がないところまで来るんだから走るところあるよね。
利口な馬だし、初めての左回りにしてはうまく走っていた。

4着 トキノパイレーツ

近走の先行から策を講じて、後方からじっくりと脚をタメる競馬。
あとひと息届かなかったものの終いの伸びはよく、持ちタイムも大幅に詰めた。
こういう競馬ができるなら、重賞戦線でもメドが立ったと言えそうだ。

<町田直希騎手>
最後は脚いろが一緒になってしまった。
こう乗ろうと思った通りではあったんですが、もうちょっと前で競馬できたらよかったのかな。1番枠がアダになって次々と前に行かれてしまった。スタートが決まって中団くらいで競馬ができるとよかったんだけど。時計も(1分)40秒台で走ってるんだからメドは立った感じ。この馬はマイルくらいの方が良さそうです

5着 アンサンブルライフ

4着馬とは8馬身離されての5着入線と力の差は感じさせられたが、10番人気ということを考えれば善戦と言っていいだろう。

<繁田健一騎手>
この馬なりによく走ってくれたと思う。
調子の良い時期だし今回の走りがきっかけになると良いね。

6着 ベンテンコゾウ

初コースの川崎では2番手を追走。
4コーナーでいったんは先頭に立つも直線半ばで脚が上がってしまった。

<御神本訓史騎手>
オープンのメンバーでやっていくにはもう少し力をつけたいですね。1~2コーナーで苦しそうなこともあってノドの影響があるのかもしれません。

8着 ゴールデンバローズ

勝ち鞍すべてがマイルで得意としている距離だが、序盤からハミ掛かりが悪く、スイッチが入りきらない走りだった。
以前のようなテンションの高さも見られず、精神面の課題があるのかもしれない。

<吉原寛人騎手>
落ち着きすぎていましたね。まったく脚を使ってくれなかった。
前に川崎マイルを勝った時は(1分)41秒9なんで、時計的にも乗り越えなければならない壁がありそうですね。
気持ち、重い気もしたので絞れたらいいのかも。

13着 ウェイトアンドシー

昨年の覇者。
前回のように自分のかたちに持ち込めなかったのもあるが、ここ数戦を見ても本来の走りができているとは思えない。

<今野忠成騎手>
今日も出たんですけどそこから内にササっちゃって。自分のレースができなかった。いったん崩れた調子を戻している途中なのかもしれません。

回数施行年馬名性・年齢騎手
10平成30年ウェイトアンドシー セ7今野 忠成
9平成29年リアライズリンクス 牡7的場 文男
8平成28年モンサンカノープス 牡5矢野 貴之
7平成27年ソルテ 牡5吉原 寛人
6平成26年サトノタイガー 牡6町田 直希
5平成25年スマートジョーカー 牡6御神本 訓史
4平成24年カキツバタロイヤル 牡6石崎 駿
3平成23年ザッハーマイン 牝6的場 文男
2平成22年イーグルショウ 牡6坂井 英光
1平成21年ノースダンデー 牡4左海 誠二