重賞レース
第18回 鎌倉記念(SII)
2019年10月22日
レースガイド
南関東でシーズン最初に行われる2歳重賞で、07年から地方全国交流戦。全日本2歳優駿(JpnI)のトライアルとして、17年からSIIに格上げされた。東海地区などからも遠征があるが、07年以降過去12回の勝ち馬は南関東(8頭)か北海道(4頭)のどちらかとなっている。【1着馬及び2着馬に全日本2歳優駿、3着以内の牝馬にローレル賞の優先出走権を付与】
コースガイド
ゴール手前300mから発走しコーナー4つを経てゴールイン。地元馬は経験済のことが多い舞台ですが、鎌倉記念の北海道勢にとっては門別とは逆の左回りが鬼門になりがちです。
北海道と船橋が強い
※データは過去10年分(09~18年)を対象にした。
1、2番人気は堅調だが
2番人気が3勝、2着4回と好成績。1番人気は2勝、2着2回、3着3回。1、2番人気がともに3着以内に入ったのは5回ある。3連単が23万円だった11年ほど荒れることは少ないが、5、7番人気が計9頭も馬券に絡んでおり、2歳戦らしく伏兵の台頭も。
【単勝人気別成績】(過去10回)
1着 | 2着 | 3着 | 着外 | |
---|---|---|---|---|
1番人気 | 2 | 2 | 3 | 3 |
2番人気 | 3 | 4 | 0 | 3 |
3番人気 | 1 | 1 | 2 | 6 |
4番人気 | 0 | 0 | 0 | 10 |
5番人気 | 1 | 1 | 3 | 5 |
6番人気 | 0 | 2 | 0 | 8 |
7番人気 | 2 | 0 | 2 | 6 |
8番人気以下 | 1 | 0 | 0 | 54 |
北海道と船橋が好成績
4勝の北海道、3勝の船橋が好成績。両所属馬でのワンツーが6回、船橋同士のワンツーも1回あり、3着以内馬30頭中19頭を占めている。北海道では堂山芳則厩舎が3勝、2着1回(着外2回)と好相性。浦和所属で3着以内に入った3頭はすべて小久保智厩舎だ。
【所属別成績】(過去10回)
所属 | 1着 | 2着 | 3着 | 着外 |
---|---|---|---|---|
北海道 | 4 | 3 | 2 | 19 |
船橋 | 3 | 6 | 1 | 14 |
浦和 | 1 | 1 | 1 | 9 |
大井 | 1 | 0 | 1 | 8 |
川崎 | 1 | 0 | 5 | 36 |
上記以外 | 0 | 0 | 0 | 9 |
前走上位着順馬に注目
3着以内馬30頭中、前走1~3着馬が24頭を占めており、うち17頭が前走1着。大敗からの巻き返しは考えにくい。2連勝以上で臨んだ馬が17年を除き3着以内に入線。15年ポッドガイ、18年ミューチャリーは無敗でこのレースを制覇した。
【3着以内馬の前走着順】(過去10回)
前走着順 | 頭数 |
---|---|
1着 | 17 |
2着 | 3 |
3着 | 4 |
4着 | 4 |
5、7着 | 各1 |
トライアル組は?
トライアルの若武者賞(川崎1500m)組から勝ち馬は出ておらず、2着か3着に入ったのは6頭のみ。ただ、17年はゴールドパテック、18年はグラビテーションがともに3着と近2年は馬券に絡んでいる。
ライター: 栗田勇人
金子正彦
1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。
中川明美
競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。
第18回 鎌倉記念(SII)
注目馬情報
■インペリシャブル (牡2歳 川崎・高月賢一厩舎)
無傷3連勝とまだ底知れぬパワーを秘める逸材。
新馬戦で9馬身突き放す圧勝はインパクト大きかったが、衝撃的だったのは前走のトライアル若武者賞。
あっさり先手を取ると最後は後続に2秒2差をつけぶっちぎりで逃げ切った。
「無理してハナに行こうとしているわけではないんですが現段階ではスピードが一枚上。前走ではもう2コーナーあたりで勝ったなと思いながら乗っていた。ただ、まだ幼さもあって、抜け出してからササるのだけが心配。馬体はまだ緩くて硬いので、腰がもっとパンとしてくればさらに強くなりそう」と矢野貴之騎手。
同型も多く、その兼ね合いがレースの鍵になるが、加速力の速さで何なく主導権を握ることになりそう。
■スティローザ (牝2歳 船橋・矢野義幸厩舎)
ここまで5戦3勝のキャリア。前走は園田の園田プリンセスカップでグランダム・ジャパン2歳シーズンの皮切り戦に挑んだ。
抜群のダッシュ力で飛び出すと正攻法の逃げ。最後は余裕のゴールだった。
「スタートセンスが抜群ですよね。逃げられないイメージがまったくないくらいのスピードがあります。追ってからもしっかり反応してくれる器用な馬。川崎コースにはぴったり合うと思います」と吉原寛人騎手。
3戦目で砂を被るレースをして凡走していることを考えると現時点では逃げられるかどうかが焦点。
あとは遠征で12キロ減らしていた馬体がどこまで戻っているかだろう。
■ヒイロメープル (牡2歳 大井・森下淳平厩舎)
4月の新馬戦は行き脚がつかなかったものの、その後3連勝。
特に前走は後続を引きつけながらの逃げで着差以上の強い内容だった。
同日の古馬戦よりタイムが速かったことも評価できる。
「昨年の勝ち馬ミューチャリーとはまたタイプは違うが、僕が乗っている2歳の中では上位のポテンシャルを持っている。
身体がまだ完成途中なので伸びしろありそうだし、ここは来年のクラシックを意識した大事な一戦だと思っている。
メンバー的にこれまでとは違った競馬になると思うが、賢い馬だから精神的にも克服してくれると思う」と御神本訓史騎手はすでに来春を見据えている。
3戦目のあとにリフレッシュ休養に出されたことで、馬体もひと回り大きくなり精神面の成長もうかがえる。
初めての遠征競馬になるが、逃げにこだわるわけではなく、川崎の小回りへの対応力はありそうだ。
■イッキカセイ (牡2歳 北海道・林和弘厩舎)
道営では4戦2勝、2着1回という成績。イノセントカップでは人気の一角にあったがゲートの課題もあって好位が取れずコンマ5秒差の4着という結果だった。
「長距離輸送や左回りの競馬は初めて。未知数の部分も多いが、調教時には左回りでのトレーニングも積んできた。あとは課題のゲート。テンション上がってうるさい面を出さなければいいが」と林和弘調教師。
距離経験は1200mまで。ゲートのうるさい面があって注目はつくが、五分に出られれば自在に立ち回れそう。
今回のレースぶり次第では全日本2歳優駿JpnIもしくは兵庫ジュニアグランプリJpnIIを考えているという。
■レイワデジタル (牡2歳 浦和・小久保智厩舎)
3戦2勝、2着1回。
前走のシーチャリオット・メモリアルは平和賞トライアルレースだったが、2番手から早めに抜け出す小気味良い競馬。
初コースながら動じない精神面のタフさをうかがわせるものだった。
「まだ4戦目で手探りの段階。性格がおっとりしていて、ゲートでボケッとしてタイミングが合わないこともあった。もう少し闘争心が出てもいい感じ。一頭になるとフワッとするが、馬が来ればもうひと頑張りする。将来性はかなりあると思っています」と森泰斗騎手。
出遅れたときも外を回っていたぶんレースで揉まれた経験がなく、先行できない可能性の高い今回のメンバー相手にどう対応できるかが鍵。
■アベニンドリーム (牡2歳 北海道・角川秀樹厩舎)
キャリアは7戦と豊富で、距離も1700mまで経験している。
一線級のメンバーに混ざるのは初めてになるが、豊富なキャリアがどう生きてくるか。試金石となる一戦になりそうだ。
「逃げなくても2番手あたりで、ある程度は先で競馬をしたいですね。左回りのレースが初めてなのはやはり不利ですが、普段の稽古ではスムーズにこなしています。あとはこの相手関係でどれだけやれるかですね」と角川秀樹調教師。
母は大井で連勝したこともある先行馬アベニンプラナス。
レースに安定感があるのは魅力。
■ブルームヴォーグ (牡2歳 船橋・佐藤賢二厩舎)
2連勝で臨んだトライアル若武者賞では、初遠征、初コースが響いて後方からの競馬になり、最後追い上げたものの4着まで。
「競馬のうまい馬です。前走は初物づくしで物見してしちゃって進んでいかなかった。一回経験したぶんのプラスはありそう」と繁田健一騎手。
先に行きたい馬が多いメンバーの中で控える競馬ができるのは強みになりそう。展開嵌まれば末脚が炸裂する。
金子正彦
1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。
中川明美
競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。
鎌倉記念は2019年最初の南関東2歳重賞となるが、全日本2歳優駿JpnIのトライアル競走でもあり、1、2着馬には優先出走権が与えられる地方交流戦。今年も北海道から2頭の参戦があった。
台風の影響により、本馬場を使って調教が行われていたこともあってか馬場の砂をやや厚めに補充。不良馬場にしては時計がかかる力のいる馬場状態になっていた。素質を期待された精鋭が激突するレースとはいえ、キャリアの浅い2歳馬たちにとっては厳しい条件だったのではないだろうか。
レースは抜群のスタートを決めたインペリシャブルが無理なく先頭へ。マイペースでレースを進め、最後は北海道のアベニンドリームにクビ差まで迫られるも、わずかに凌いで無傷の4連勝で重賞初制覇。2着のアベニンドリームとともに全日本2歳優駿JpnIへの優先出走権を獲得した。
1着 インペリシャブル
これで4連勝。デビューから楽勝続きも今回はクビの差の勝利。直線はササる面もあり、もうひと息伸びきれないところは距離が延びてくる今後の課題になりそうだが、今の時点ではスピードが光る。
小向トレーニングセンターが冠水により使えず調整は難しかっただろうが、きっちり仕上げた陣営の見事な勝利でもある。
<高月賢一調教師>
前半のレースを見ていたら逃げ馬には不利な馬場だと思ったんで、矢野騎手には無理に行かなくてもいいと話をしたんですが、スピードの違いでハナに立ちましたね。ゲートでいつもより少しイレ込んでうるさい面も出したんですが、うまいタイミングで出てくれた。
川崎の直線は短いんですが、500mくらいあるような気がして早くゴールが来いという気持ちで見ていました。
素直で折り合いもつき、騎手に逆らわないところがこの馬の魅力。全日本2歳優駿を使うかはオーナーと相談して決めたいと思います。
<矢野貴之騎手>
前走が強い勝ち方だったのでさすがに緊張しました。
調子の良さは返し馬の動きからも伝わってきた。台風の影響で練習馬場を使えない中で調整してくれたことに感謝ですね。
現段階ではスピードが一枚上。前走ほどラクに逃げてはいないんですがスピードはさすがです。
(迫られたのは)道中力みすぎて走っていたのが直線で影響したのかも。最後はよく凌いでくれました。
メンタルは相当強いものを持っていると思うんですが、まだ馬体には緩い面があるのでこれからの成長が楽しみ。
さらに大きい目標に向けて期待しています。
2着 アベニンドリーム
逃げ馬の後ろでうまく折り合い、直線ではあわやという場面もあったほど。
最後は勝ち馬と脚いろが一緒になってしまったが、初の左回りも苦にせず、経済コースでうまく立ち回っていた。
<赤岡修次騎手>
4コーナーで(先頭に)代わるかと思ったくらいだったんだけどなあ。
最後は脚いろが一緒になってしまった。
左回りに慣れていないというか、スムーズに手前を替えてくれるといいですね。
ここまで逃げるレースをしてきた馬だし、まだ競馬を覚えている段階。今回、初めて抑えるレースができたことは収穫だと思います。
3着 ミナミン
中団につけた道中から直線ではいい追い上げを見せたが3着まで。
前走より大幅にタイムを詰めてきており、キャリア3戦目にしてはレースの上手さを感じる。
ただ、ゲート出の反応が今ひとつなのが気になるところ。
次走は牝馬同士のローレル賞を予定しており注目したい。
<今野忠成騎手>
レースセンスが良く乗りやすい馬ですね。
反応も素直で、(砂を)かぶっても怯まないので、カイバをもっと食べるようになって成長すれば先々も楽しみ。
牝馬同士なら面白いと思います。
4着 イッキカセイ
スタートのタイミングが合わず後方を追走。
じょじょにポジションを上げ、最後はきっちり伸びてきた。
力はありそうなだけにスタートの不利は痛かった。
<岡部誠騎手>
ゲートでガタガタして一番タイミングの悪いときにスタートが切られるかたちになった。五分に出られれば良かったのですが。
左回りも苦にしていなかったし、スタートがすべて。
カーッとなってしまう面があって、道中もハミを噛んで、それでもあれだけ伸びてくるんだから、もっとリラックスして走れればいいですね。
5着 チョウライリン
今回は先手にこだわらず、控えて中団からの競馬。
それでも入着を果たすのだから、脚質の幅を広げた今後は距離延長にも対応していきそう。
<的場文男騎手>
砂かぶる競馬もできたね。
どんどん良くなるタイプの馬だから、これからが楽しみ。
6着 レイワデジタル
すんなり2番手の絶好位を位置取ったものの、早めに脚いろが鈍った。集中して走っていないのは明かで、現段階での完成度の差だろうか。
<森泰斗騎手>
ラクに2番手のポジションにつけて行けたんですが、内にもたれたりして道中は幼さを出していた。
今日は現状での差ですね。もっと力をつけてくれば走ってくると思います。
7着 スティローザ
自分のかたちで逃げると強いが、今回は大外枠の不利。
さらにスタートでモタついて主導権が握れず、モロい面が出てしまった。
前走の園田プリンセスカップで圧勝しているように、先手を取れることが好走の条件になりそうだ。
<吉原寛人騎手>
道中の走りづらさはなかったんですが今日はこの馬の持ち味が出せなかった。
内側からガタガタする音が聞こえたらそっちを見ているタイミングでのスタート。ハナが切れればまた違うと思います。
9着 ヒイロメープル
3連勝が強い内容だっただけに、初めての遠征競馬と左回りでも期待は大きく2番人気に推されていたが、テンから進んでいこうとしなかった。馬場の悪さも影響したのかまったく競馬をしていない。
<御神本訓史騎手>
返し馬の感じもよく、左回りを気にする様子もなかった。
いつもは引っかかって行くくらいの馬なんですが、不良馬場が合わないのか行きっぷりがよくなかった。
今日はひと脚も使えていない。
回数 | 施行年 | 馬名 | 性・年齢 | 騎手 |
---|---|---|---|---|
17 | 平成30年 | ミューチャリー | 牡2 | 御神本 訓史 |
16 | 平成29年 | リコーワルサー | 牡2 | 森 泰斗 |
15 | 平成28年 | ストーンリバー | 牡2 | 井上 幹太 |
14 | 平成27年 | ポッドガイ | 牡2 | 矢野 貴之 |
13 | 平成26年 | オウマタイム | 牡2 | 繁田 健一 |
12 | 平成25年 | ニシノデンジャラス | 牡2 | 今野 忠成 |
11 | 平成24年 | インサイドザパーク | 牡2 | 左海 誠二 |
10 | 平成23年 | ニシノファイター | 牡2 | 小国 博行 |
9 | 平成22年 | キスミープリンス | 牡2 | 戸崎 圭太 |
8 | 平成21年 | ナンテカ | 牡2 | 坂井 英光 |
7 | 平成20年 | ノーステイオー | 牡2 | 左海 誠二 |
6 | 平成19年 | ヴァイタルシーズ | 牡2 | 左海 誠二 |
5 | 平成17年 | カネショウマリノス | 牡2 | 今野 忠成 |
4 | 平成16年 | エスプリフェザント | 牡2 | 久保 勇 |
3 | 平成15年 | トキノコジロー | 牡2 | 山田 信大 |
2 | 平成14年 | パレガルニエ | 牝2 | 今野 忠成 |
1 | 平成13年 | ジェネスアリダー | 牡2 | 桑島 孝春 |