重賞レース

第24回 スパーキングレディーカップ(ホクトベガメモリアル)(JpnIII)

2020年7月15日

レースガイド RACE GUIDE

1996、97年に川崎記念連覇するなど川崎競馬のレースで活躍した女傑ホクトベガ(1997年死亡)を偲ぶメモリアル競走となっている。JRAが11連勝中だが、過去4回では地方馬も3頭が3着以内に健闘。なお19年3着のローレライ(船橋)は川崎所属で活躍した名牝ロジータのひ孫にあたる。【地方所属の1着馬にレディスプレリュードの優先出走権を付与】

コースガイド

4コーナーのポケットから発走し最初のコーナーまで500mあり、さほどハイペースにはなりません。差し馬にとってはカーブがきつい3コーナーでうまく立ち回ることが求められます。

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牝馬DG出走馬狙いが基本

※データは過去10回分(10~19年)を対象にした。

荒れることは少ない

単勝1番人気が4勝、2着1回、3着3回で、10頭中8頭が3着以内に入線。2、3番人気も各7頭が3着以内で、上位人気が強い。10~18年の1、2着はすべて4番人気以内で、3着も5番人気以下は2回だけ。19年は勝ったのは1番人気だが、2着6番人気、3着11番人気で3連単27万6110円と荒れた。

【単勝人気別成績】(過去10回)

  1着 2着 3着 着外
1番人気 4 1 3 2
2番人気 3 3 1 3
3番人気 2 3 2 3
4番人気 1 2 1 6
5番人気以下 0 1 3 78

JRAが断然だが、南関東の人気馬も警戒

JRAが10勝、2着7回、3着8回と圧倒し、1~3着を独占したのが5回。それを阻んだ地方馬5頭はすべて南関東勢(大井3頭、浦和、船橋各1頭)で、うち3頭は4番人気以内で地方馬のなかでもっとも人気が高かった。

【所属別成績】(過去10回)

  1着 2着 3着 着外
JRA 10 7 8 14
大井 0 2 1 11
南関東その他 0 1 1 47
地方他地区 0 0 0 20

JRAの5歳以下が活躍

5歳6勝、4歳3勝、3歳1勝で、勝ち馬は5歳以下。5歳は出走数が多いが、JRA馬に限れば【6・4・1・6】で17頭中11頭が3着以内に入線。19年は1~3着を独占(3着は川崎所属)と好相性だ。4歳はJRA馬に限れば3勝、3着1回(着外1回)で、出走数が少なくても好成績を残している。

【年齢別成績】(過去10回)

  1着 2着 3着 着外
3歳 1(1) 1(1) 2(2) 9(4)
4歳 3(3) 1(0) 3(3) 21(1)
5歳 6(6) 5(4) 2(1) 30(6)
6歳 0 3(2) 3(2) 16(1)
7歳以上 0 0 0 15(2)

※カッコ内はJRA所属

前走以前の戦歴を要確認

18年こそ、芝路線を使われてきた馬が1、3着だったが、基本的にはその年に牝馬限定のダートグレード(TCK女王杯JpnIII、エンプレス杯JpnII、マリーンカップJpnIII、3歳は関東オークスJpnII)を使われていた馬が好相性。15~17年、19年の4回では3着以内に入った12頭中9頭が該当する。残り3頭中2頭は前走がJRAダートのオープン特別戦(天保山ステークスか天王山ステークス)。なお18年の2着馬も前走が天王山ステークスだった。
3歳にとっては、古馬と初対戦となることが多いダートグレード。関東オークスJpnII組は、15年以降では5頭出走し、JRA馬に限れば1、3着各1回(着外1回)で古馬と互角に渡り合っている。

ライター: 栗田勇人

 

金子正彦

金子正彦

1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。

中川明美

中川明美

競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

プロフィール_2

第24回スパーキングレディーカップ(JpnIII)

注目馬情報

協力:競馬ブック

■ファッショニスタ(牝6歳 JRA・安田隆行厩舎)

写真:真鍋元

デビューから一貫してダートを走り、昨年の当レース優勝を機に牝馬ダートグレードに本格参戦。タイトルこそスパーキングレディーカップJpnIIIのみだが、レディスプレリュードJpnII・2着、JBCレディスクラシックJpnI・3着と着実に実績を積んできた。昨年の4馬身突き抜ける快勝はインパクトが大きく、今年も上位争いは必至だろう。

「立て直した前走は2走前より内容が良かったし、暖かい季節が合うのかもしれない。短期放牧から帰ってきてさらに良くなっていますし、昨年、上手に競馬をした舞台なら」と安田隆行調教師。

大型馬ゆえに当初は心配された小回りでコーナーを4つ回る競馬への対応も難なくこなし適性を見せた。
前走ではシャドーロールに加えブリンカーを着用。より集中力を高めている。

■サルサディオーネ(牝6歳 大井・堀千亜樹厩舎)

写真:真鍋元

昨年のスパーキングレディーカップJpnIIIには中央所属として出走してファッショニスタの2着に逃げ粘った。
今年のTCK女王盃JpnIIIから大井に移籍すると2戦目の報知グランプリカップでは強力な男馬を封じ、マリーンカップJpnIIIでも逃げ切ってダートグレード制覇と充実一途。今年も主導権を握りそうだ。

「とにかく気分良く走れることがこの馬にとっては大事。距離問わず、逃げて自分の競馬ができるのかどうか。川崎コースは何度も経験しているし、今年はそんなに行きたい馬がいないようなので楽しみの方が大きい」と堀千亜樹調教師。

中央在籍時の走りを見ると、メンバー強化でも好走したり、相手が楽でも大敗したりと成績は極端。いかに単騎逃げに持ち込めるかがカギになるようだ。
6歳になってからの充実ぶりは際立ち、逆転を狙っている。

■メイクハッピー(牝4歳 JRA・新開幸一厩舎)

写真:真鍋元

4歳夏でキャリア10戦4勝。
10馬身差突き放す圧勝だった牝馬らしからぬデビュー戦が印象的。全日本2歳優駿JpnIにも出走して4着だった。
前走の下総ステークスでは楽に好位につけると直線では抜け出して完勝とも言える勝利。
3勝クラスを勝ちきって牝馬ダートグレードに挑む。

「前走あたりから馬体に芯が入ってきた感じ。勝ちっぷりも良かったからね。2歳で川崎のJpnⅠを使った時はテンから仕掛けていったが今は先行力が出ているしコースは問題ないはず。オープンでも牝馬戦なら好走も可能でしょう」と新開幸一調教師。

川崎コースは全日本2歳優駿JpnI・4着時以来2度目にはなるが、フットワークの大きな馬だけに小回りコースへの対応は成長分を含め、気になるところ。
実力牝馬の今後を占う意味でも注目したい。

■メモリーコウ(牝5歳 JRA・松永幹夫厩舎)

写真:真鍋元

初の重賞挑戦となった今年のTCK女王盃JpnIIIで3着に善戦。地方の馬場も初めてでコーナーリングはややスムーズさを欠いていたが最後は瞬発力を発揮。マリーンカップJpnIIIでは的場文男騎手とコンビを組み、スローな展開でも直線は弾けるような脚を使って2着。

「外を回されるかたちでも最後はよく伸びていた。力をつけているし、地方でも走れている。牝馬限定戦に戻ればチャンスはある」と松永幹夫調教師。

川崎コースは初参戦となるが、4月の前走は左回りの東京コースで強力な男馬相手に3着に好走。左回りも苦にしないとなれば牝馬同士の適距離マイルで今回も弾けるか。

■サラーブ(牝5歳 大井・藤田輝信厩舎)

写真:真鍋元

中央2勝クラスを勝って、昨年秋に大井に移籍。
重賞3勝馬シャケトラの妹という血統で、跳びの軽さがあって転入戦のレディスプレリュードJpnIIでは地方の深いダートに戸惑いを見せていたが、徐々に順応していった。自己条件(A2)の朧月賞をきっちり勝ってオープン入りすると、しらさぎ賞では3着に好走した。

「浦和コースをこなしていたので初コースや左回りも苦にはしないはず。普段は大人しくてパドックも牛みたいにおっとりしているタイプ。このメンバーならたぶん先行するでしょうが十分チャンスはあると思います」と藤田輝信調教師。

意外にも川崎コースは初めてになるが、きつい流れになっても自在に立ち回るタフな面があり、十分対応できそうだ。

■ワンダーアマービレ(牝6歳 JRA・杉山晴紀厩舎)

写真:小金井邦祥

キャリア豊富な6歳馬が初の牝馬ダートグレード参戦。
前走の天満橋ステークスで3勝クラスを勝ち上がったところだが、展開がハマったとはいえインを狙った末脚は決め手十分。

「前走はジョッキーの好判断でした。使った後も順調に来ています。終いは確実なんですが、そこそこの位置で流れに乗ってほしいところですね。引っ掛からないのでマイルはこなせるでしょう」と杉山晴紀調教師。

川崎コースは初めてになるが、3歳時には佐賀に在籍したことがあり小回りは経験済み。3戦3勝で中央に戻っている。
短距離を中心に使われていたため、3歳時以来となる距離マイルを上手く捌くことができれば。

■マルカンセンサー(牝5歳 大井・高野毅厩舎)

写真:真鍋元

昨年のTCK女王盃JpnIIIではC1クラスからの格上挑戦で、ノーマークの9番人気ながら2着に飛び込んで波乱の立役者になった。その後は自己条件を着実に勝ち上がりながら昨年のスパーキングレディーカップJpnIIIにも出走。中団から鋭く伸びて5着入線とフロックではない力量を見せた。

「前走の大井記念では男馬相手に良い競馬をしてくれた。牝馬同士なら中央相手でもやれる力はあると思う。若いときは足長に見えて細く映るタイプだったけど、馬体全体にバランス良くボリュームが出てきた。今回は川崎コースでの距離マイルがカギになりそう」と高野毅調教師。

川崎コースは昨年のスパーキングレディーカップJpnIII以来になるが、ベストは右回りで直線の長い大井コース。距離的にもマイルはギリギリで、もっと距離があった方が持ち味が生きそうだが、これまでの良い意味で期待を裏切る走りを考えると軽視はできない。

金子正彦

金子正彦

1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。

中川明美

中川明美

競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

プロフィール_2

写真:真鍋元

第24回スパーキングレディーカップJpnIIIは夏のマイル女王決定戦。
サブタイトルには、かつて“砂の女王”と称されたホクトベガの名がつけられているメモリアル競走でもある。
地方所属馬にとってはグランダム・ジャパン古馬シーズンの第2戦にもなる。

頭数は少ないが、昨年の1、2着馬が揃って出走。
ファッショニスタにとっては連覇の懸かる一戦となった。
今年も不良馬場のなか、予想通りサルサディオーネの逃げからレースはスタートした。
2番手はファッショニスタと昨年と同じ展開。
差がなくワンダーアマービレ、メイクハッピー、メモリーコウと中央勢が好位グループに続く。
3コーナーから徐々にペースが上がり、直線ではサルサディオーネ、ファッショニスタ、メイクハッピーの3頭が追い比べ。
ゴール前サルサディオーネを捕らえたファッショニスタが、迫るメイクハッピーを抑えて連覇を達成した。
偶然にも優勝馬からしんがりの10着まで、ほぼ人気通りに入線する結果となった。

写真:小川慎介

1着 ファッショニスタ

好スタートから楽に2番手のポジション。
理想通りの競馬で、最後は勝負強さも見せていた。同じ不良馬場でスパーッと切れた昨年とそう変わらない(コンマ3秒遅い)走破タイムで連覇を決めたが、508キロと過去最高体重の影響なのか、楽をしていたわりに前を捕らえるのに苦労しているようにも見えた。
昨年の優勝を機に牝馬ダートグレードに本格参戦して惜しいレースが続いていたが、この連覇で弾みをつけ、秋の大一番でも期待が持てそうだ。

<安田隆行調教師>
去年、この川崎で勝たせてもらって2連覇できるかと思っていたので強い競馬ができてホッとしました。暖かくなって、馬の雰囲気が良くなってきていたし、川田騎手も返し馬で『雰囲気が良かった』と言ってくれて走れる状態にあったと思います。3コーナーを過ぎて、ルメール騎手(メイクハッピー)が外からかぶせてきたので、ヒヤッとしましたが、最後は川田騎手の好判断でしっかり勝ってくれました。今後夏はひと息入れて、去年同様に、また秋からということになります。できれば、来年3連覇したいですね。


 

<川田将雅騎手>
無事に勝ち切ってくれて何よりです。ハナを主張する馬がいたので、こちらは2番手で。その後はリズムよく追走できていました。(直線では外から並びかける馬もいたが)この馬の特長を考えながら、レースを組み立てました。直線では並ばれてからも底力を見せ、今日は走る気を出してくれました。これからも気持ちひとつ。走る気持ちを出してくれればいい内容で走ってくれると思います。


2着 メイクハッピー

外からモマれず好位に取りつき追走。
直線の伸びもよかったが、あと一歩及ばなかったのは小回りコースへの経験値の差か。力のあるところも見せたし今後が楽しみ。

<C.ルメール騎手>
外枠でしたが無理なく行き脚がついて、良いポジションが取れました。終始手応えも良かったですし、直線では逃げた馬を捕まえて先頭に立つことができましたが、最後は差されてしまいました。この馬にとって小回りのコーナーがきつかったですが、頑張ってくれました。今日は勝った馬が一番強かったですが、今後重賞を勝てると思います。

3着 サルサディオーネ

先手を取れるかがこの馬にとってひとつのカギだが、56キロの斤量もあるのか、内枠馬のスタートダッシュが良かったことでハナに立つまで少し脚を使わされた感じ。
その後はしっかり自分のかたちに持ち込み、最後まで粘り強い走りを見せた。

<矢野貴之騎手>
ハナにこだわりました。船橋(マリーンカップ)と違い若干リズムが悪かったですが、よく粘っていました。抵抗していました。今後も展開次第ではチャンスがあると思います

4着 メモリーコウ

4、5番手の外めを追走し、勝負どころから徐々に前との差を詰めてきた。初の川崎コースを気にしている様子はなかったが、直線は思ったほど伸びきれなかった。

<古川吉洋騎手>
もう一列前に行きたかったのですが、前が速かったので行けなかった。前で決まる展開になって、その分だけ負けました

5着 ワンダーアマービレ

短距離の差し馬というイメージだったが、無理なく好位インを位置取る。道中ペースが上がると追走に手間取って、末脚勝負には持ち込めなかった。馬場の影響も大きかったのだろう。

<長岡禎仁騎手>
スタートも良く、道中もロスなく上手に競馬をしてくれましたが、このような馬場だったので前が残ってしまいました。馬はとても良くなっていますし、着実に成長していると思います

6着 サラーブ

先行したかったようだが、進んでいかずポジション取りに苦労し中団からの競馬。初の川崎コースで不良馬場のなかモマれた影響もあり、いつものひと脚を使う場面がなかった。

<森泰斗騎手>
馬場が合わなかった。ノメってしまって行きっぷりも良くなかったですし今回は条件が合わなかったですね。

7着 マルカンセンサー

昨年は終いよく伸びて5着だったが、どちらかというと大井の外回り向き。先行馬に有利な馬場状態で、追い込み馬には厳しい条件だった。1コーナーで狭くなる不利もあった。

<的場文男騎手>
スタートが今ひとつだったし、思ったようなレースができなかった。この馬としても力はつけているんだが、中央の馬は強いね。

回数施行年馬名性・年齢騎手
23令和元年ファッショニスタ 牝5川田 将雅
22平成30年リエノテソーロ 牝4吉田 隼人
21平成29年アンジュデジール 牝3横山 典弘
20平成28年ホワイトフーガ 牝4蛯名 正義
19平成27年トロワボヌール 牝5戸崎 圭太
18平成26年サウンドガガ 牝5武 豊
17平成25年メーデイア 牝5濱中 俊
16平成24年スティールパス 牝5蛯名 正義
15平成23年ラヴェリータ 牝5武 豊
14平成22年ラヴェリータ 牝4岩田 康誠
13平成21年ラヴェリータ 牝3岩田 康誠
12平成20年トーセンジョウオー牝7戸崎 圭太
11平成19年メイショウバトラー 牝7武 豊
10平成18年レマーズガール 牝6内田 博幸
9平成17年トーセンジョウオー 牝4後藤 浩輝
8平成16年グラッブユアハート 牝4安藤 勝己
7平成15年レマーズガール 牝3武 豊
6平成14年ジーナフォンテン 牝4張田 京
5平成13年プリエミネンス 牝4柴田 善臣
4平成12年トシザミカ 牝6河内 洋
3平成11年ファストフレンド 牝6蛯名 正義
2平成10年ホクトロビン 牝5佐藤 祐樹
1平成9年オートメンデス牝4岡村 裕基
1平成9年ブンブンラリー牝4桑島 孝春