重賞レース

第19回 鎌倉記念(SII)

2020年10月14日

レースガイド RACE GUIDE

南関東では、今年新設の大井・ゴールドジュニアに続く2歳重賞。地方全国交流となった2007年以降、過去13回の勝ち馬は南関東9頭、北海道4頭。うち10回ではデビューから複勝圏内を外していない馬が勝利している。19年インペリシャブル(川崎)ら3頭は無敗でこのレースも制しており、勢いある馬を狙いたい。【1着馬及び2着馬に全日本2歳優駿、1〜3着の牝馬にローレル賞の優先出走権を付与】

コースガイド

ゴール手前300mから発走しコーナー4つを経てゴールイン。地元馬は経験済のことが多い舞台ですが、鎌倉記念の北海道勢にとっては門別とは逆の左回りが鬼門になりがちです。

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地元馬の躍進目立つ2歳重賞

※データは過去10年分(10~19年)を対象にした。

人気薄の台頭もある

単勝9→6→3番人気で決まった11年を除く9回では、1、2番人気のどちらかは3着以内に入線。1、2番人気がともに3着以内に入ったのも5回ある。しかし6番人気以下が9頭も馬券に絡んでおり、2歳戦らしく伏兵にも警戒が必要。その11年の23万660円が3連単では最高配当で、その他は4桁配当が5回、5桁配当も4回あり、大荒れは稀だが、伏兵の馬券圏内も考えておきたい。

【単勝人気別成績】(過去10回)

  1着 2着 3着 着外
1番人気 3 2 2 3
2番人気 3 4 0 3
3番人気 1 0 2 7
4番人気 0 0 0 10
5番人気 0 1 3 6
6番人気以下 3 3 3 66

近年は川崎が好成績

3勝ずつの船橋と北海道が好成績。11~13年、16年、18年には両所属馬がワンツーを決めている(14年は船橋が1、2着)。なお川崎所属で3着以内に入った8頭中6頭は15年以降のもの。その15年以降の3着以内馬の頭数では、北海道(4頭)、船橋(3頭)、浦和と大井(各1頭)より多く成績を伸ばしている。川崎所属の勝ち馬は15年のポッドガイと19年のインペリシャブルで、19年には3着にもミナミンが入っている。
北海道の3勝はすべて堂山芳則厩舎で、【3-2-0-2】の好成績。同じ北海道で出走頭数が多いのは田中淳司厩舎だが、【0-0-1-5】と苦戦している。

【所属別成績】(過去10回)

所属 1着 2着 3着 着外
船橋 3 5 1 13
北海道 3 4 1 18
川崎 2 0 6 35
浦和 1 1 1 12
大井 1 0 1 8
上記以外 0 0 0 9

前走大敗馬は厳しい

3着以内馬30頭中、前走1~3着馬が24頭で、うち16頭が前走1着。過去3回の3着以内馬はすべて前走でも3着以内と大敗からの巻き返しはほぼない。
また連勝中の馬が17年を除き3着以内に1頭以上入線。15年ポッドガイ(川崎)、18年ミューチャリー(船橋)、19年インペリシャブル(川崎)は無敗でこのレースを制している。

【3着以内馬の前走着順】(過去10回)

前走着順 頭数
1着 16
2着 5
3着 3
4着 4
5、7着 各1

若武者賞組が3年連続で3着以内

本番と同じ川崎1500mで実施されているトライアルの若武者賞組は、7頭が3着以内に入線。すべて4着以上から臨んでいた。近年は地元川崎勢が好成績なこともあるが、15年、17~19年には、若武者賞組のうち1頭が馬券絡み。19年はインペリシャブル(川崎)が若武者賞から連勝を決めている。

ライター: 栗田勇人

 

金子正彦

金子正彦

1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。

中川明美

中川明美

競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

プロフィール_2

第19回鎌倉記念(SII)

注目馬情報

■ナジャ (牝2歳 川崎・高月賢一厩舎)

写真:真鍋元

キャリアは2戦2勝。ノーステッキで49秒台を弾き出した能力試験からスケールの大きさを感じさせたが、デビュー戦は9馬身、前走は2秒の大差をつけて逃げ切った。2戦とも直線半ばからは馬なりで、ゴール前は流す程度。まだ目一杯の競馬をしていない。

「この馬の良さはなんと言ってもスピード。内枠を引いたのも有利だね。追い切りで抑えても大丈夫だったから2番手でも競馬はできそう。ハナにこだわるわけではないが、速いから行っちゃうんじゃないかな」と高月賢一調教師。

枠順からしてもハナを切るのはこの馬か。
今年のダービーグランプリを制した兄フレッチャビアンカに続く重賞制覇となるか。

■ピースフラッグ (牡2歳 川崎・山崎尋美厩舎)

写真:真鍋元

前走の鎌倉記念トライアル若武者賞では1分35秒8と、昨年圧勝したインペリシャブルの鎌倉記念よりコンマ3秒速い。
新馬戦ではスタートの遅れが響いて2着も、その際に砂をかぶった経験が生きそうだ。2戦目、3戦目は逃げ切り勝ちでスピード値も高い。

「前走は時計も良かったね。普段はヤンチャな面も見せるが競馬になると素直で真面目に走るんだ。台風を考慮して一日早く追い切りをしたが、それ以外はすこぶる順調に調整できた。最初思っていた以上に1戦ごとに強くなっている。まだ緩い面もあって、前走で八分の状態。それであれだけ強い競馬ができるんだから、まだまだ伸びしろありそうだよ。距離延びても良さそう」と山崎尋美調教師。

目下3戦2勝。山崎厩舎ゆかりの血統で、距離経験もプラスに働くだろう。

■ジョーロノ (牡2歳 浦和・小久保智厩舎)

写真:真鍋元

デビューから無傷3連勝。
2戦目では、のちにJBC2歳優駿チャレンジを大差勝ちしたランリョウオーをクビ差封じている。
スタートが上手で二の脚が速いぶんまだ前での競馬しかしていないが、枠が外なこともあり、今回は砂をかぶる可能性も大。試金石にの一戦になる。

「状態は引き続きいいが、もう少しレースで集中して走れるようになるといいね。他馬が来れば走る気を出す根性はある。番手の競馬も経験していて問題ないし、重賞でどこまでやれるか期待したい」と小久保智調教師。

道中はまだ遊び遊び走っていて後ろから馬が来るとまた反応してハミを取るという幼さはまだあるが、集中して走るようになればさらに楽しみだ。

■リーチ (牡2歳 北海道・林和弘厩舎)

写真:山下広貴

キャリア5戦2勝で参戦する道営所属馬。栄冠賞を3着し、前走のイノセントカップでは道中内で脚をためて直線で開いたインをスルスルと抜け出して優勝したタイトルホース。札幌競馬場で行われたすずらん賞にも挑戦するなどの実績から1番人気に推されていた。

「前走はヒヤッとした場面もあったが、ちょうど内が開いてくれた。ゲート出が解消してからは距離延びていいと思っていた。坂路と並行して馬場では左回りを意識した調教を重ねてきたし、スピードと切れの両方を持ち合わせた馬。追ってからいい脚を使ってくれる」と林和弘調教師。

芝もダートもこなし、スピードと切れの両方を持ち合わせたレース巧者。長距離輸送と初めての左回りにも対応できるはず。

■セイカメテオポリス (牡2歳 大井・渡邉和雄厩舎)

写真:真鍋元

前走の重賞ゴールドジュニアでは好位内をロスなく追走し4着。ひと息入っていたこともあり、叩いた上積みは十分見込める。スパッと切れる脚はないが、じわじわと伸び、併せるかたちになればまた伸びてくる。
10日には川崎競馬場に運んでの最終調整をした。

「精神的にどっしりしているから初馬場でも大丈夫だと思う。左回りも初めてなので川崎競馬場でスクーリングをしたが、小回りでもスムーズにこなせたので心配はないだろう。ひと息入った前走は少し重め感があったので一週前にもビシッと追っている。1戦ごとに経験したことを吸収している段階で、成長が楽しみ」と渡邉和雄調教師。

馬場見せで少し外に張ったのは問題ない範囲。
2歳馬らしくない落ち着きがあり、レースでも折り合いがつくタイプ。距離が延びてからの楽しみは大きい。

■ヴァヴィロフ (牡2歳 川崎・高月賢一厩舎)

写真:真鍋元

鎌倉記念トライアルの若武者賞では2着。
初めて砂をかぶる競馬になったことで怯んでしまい、先行していたそれまでの3戦とは違って中団位からに。それでも最後は力強く伸びてきて優先出走権をゲットした。

「砂をかぶった前走はスムーズさを欠いていたが、いい経験にはなったと思うよ。背中が柔らかく、乗り役のゴーサインに反応して操縦性がいい。先行にこだわらずに競馬ができるはず」と高月賢一調教師。

昨年の勝ち馬インペリシャブルと併せ馬をして互角の動きを見せたこともある素質馬。メンコをつけるようになってムキになることもなくなった。

■トーセンウォーリア (牡2歳 浦和・小久保智厩舎)

写真:真鍋元

スピードを武器に6戦3勝。
負けた3戦はいずれもハナに行けなかったときで、当初は課題のあったゲートも尾っぽを取るようにしてから我慢できるようになり持ち味を発揮している。

「内枠の方が良かったね。競馬できないことはないと思うけど、切れるタイプではないからね。1500mはちょうど良いから、ハナに行って自分のかたちに持ち込めればいいんだけど」と左海誠二騎手。

4戦目の浦和・若竹特別で8馬身ぶっちぎった走りが印象的で、まだ遊びながら走っていたと言うから驚きだ。スピードはもちろん、良い意味での緩さがある未完成さが魅力。

金子正彦

金子正彦

1962年11月12日 神奈川県出身。
1979年に川崎競馬で騎手デビューし16,482戦1,227勝を挙げて2017年3月に引退。重賞勝ちは東京ダービー(サイレントスタメン)、浦和記念(モエレトレジャー)、桜花賞(ミライ)、ハイセイコー記念(ソルテ)など11勝。
引退後は競馬ブック南関東版でコラム、週刊競馬ブックにて重賞回顧等を執筆。

中川明美

中川明美

競馬ブック南関東担当記者。
新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。
グリーンチャンネルにて『アタック地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

プロフィール_2

写真:真鍋元

2歳馬の地方全国交流重賞・第19回鎌倉記念。
全日本2歳優駿JpnIのトライアルレースで1、2着馬には優先出走権が与えられる。また、1~3着の牝馬はローレル賞への優先出走権を手にする。

今年は北海道から2頭が参戦して、13頭での争い。
キャリアの浅い2歳馬同士でここまでスピード勝負をしてきた馬も多く、熾烈な先行争いは必至。それを横目で見ながらまくり気味に主導権を握ったのはジョーロノ。2番手にはピースフラッグがつけ、1番人気のナジャは5、6番手の位置取り。
道中はペースが落ちることなく、流れに動きのない状態だった。
4コーナーを回り、逃げ切りを図るジョーロノを、中団にいたリーチとセイカメテオポリスが内と外に分かれて襲いかかる。最後はリーチがクビ差でこの勝負をものにした。

北海道所属馬の勝利はストーンリバー以来、4年ぶり5頭目となった。

写真:小川慎介

1着 リーチ

スタート直後に進路が狭くなる場面もあったが、うまく控えて中団を追走。勝負どころからの反応良く、直線もしっかり伸びた。
長距離輸送に加え、初の左回りコースと初物づくし。左回りの調教を積んでいたとはいえ、すぐに対応するなど精神面の強さを感じさせる。

<林和弘調教師>
本田騎手には北海道の時のことを伝えてあとは任せました。
1~2コーナーに入るところで狭くなっても、そこからうまく外に出すことができた。
今後のことは北海道に帰ってからオーナーと相談して決めますが、全日本2歳優駿JpnIの権利がもらえたので来たいと思っています。


 

<本田正重騎手>
この馬の力を出せて良かった。またがった瞬間にいい馬だなというのが第一印象。テンションを上がらせないように返し馬で気をつけていましたが、競馬では思った以上に乗りやすかった。
前半、狭くなる場面もあったんですが、力があって、着差以上に強い競馬でした。操縦性のいい馬ですね。道営から輸送もあって、条件はラクではなかったでしょうが、外を回っても大丈夫な手応えで最後は余力もあったくらい。


2着 セイカメテオポリス

できるだけ距離のロスを避ける乗り方をしていたが、馬群でも嫌がらず、最後まで集中した走りを見せた。
初コースも無難にこなし、将来性がありそうな走り。この一戦の収穫は大きそうだ。

<今野忠成騎手>
左回りは少しぎこちなかったね。一回使って変わってくるんだろう。
もう少し流れが速くなると思ったんだが意外と落ち着いてしまったが、最後はうまく脚を使ってくれた。
コーナーでトモが流れるので、そこで行けるようならレースがしやすい。頭の良さそうな馬だから将来性は高い。

3着 ジョーロノ

ペース的には楽な逃げではなかったが、最後までしぶとい走りを見せていた。タイムも前走から大幅に短縮した。

<森泰斗騎手>
行くつもりはなかったんですがスタートが速かった。内には4頭くらいいたので、これで控えたらずっと外を回されてしまうかとハナを主張した。
最後は手応え一杯になってはいたが、よく我慢していた。

4着 サンエイウルフ

今回は控える競馬で後方から。
ためたぶんの脚を使えたが4着まで。

<繁田健一騎手>
本当に乗りやすい馬。スタートでは前がごちゃごちゃしていたが操作性があるし今後が楽しみ。
距離はもっとあってもいい。

5着 ナジャ

これまでのように先行できず、初めて追う立場になった。厳しいかたちではあったが、それほど崩れず入着確保。
まだ荒削りではあるが、この経験は必ず生きてくるだろう。

<矢野貴之騎手>
馬が若いね。ゲート入りといい、癖を掴んでひとつうまくいっても、またひとつ問題が出てくる。
それでも2列目で辛抱して走っていたし、直線やり返そうというようなところもあって収穫もありました。
男馬に混ざるとテンも速いけど、牝馬同士だったら上でしょう。ここで揉まれた経験も生きるはず。

6着 ヴァヴィロフ

積極的に先団に取りつき、見せ場は十分な競馬も、直線半ばでは力尽きてしまった。

<笹川翼騎手>
ちょっと展開的に厳しい競馬でしたね。
1コーナーでぶつけられて外に振られる不利があって、それを考えればいいファイト。身体はそんなに大きくないけど、思った以上に走ってくれるいい馬です。

7着 ピースフラッグ

無理なく2番手を追走。
4コーナーでは先頭を捕らえる手応えだったが、追ってからの反応が今ひとつ。ゴール前では脚が上がっていた。

<山崎誠士騎手>
競馬はすんなりと理想的だったから、2コーナーくらいでは期待したんだけどなあ。追ってから伸びなかった。4コーナーまでは良かったけど直線を向いたらもう手応えがなかった。
もう一列後ろで競馬しても良かったのかも。

回数 施行年 馬名 性・年齢 騎手
18 令和元年 インペリシャブル 牡2 矢野 貴之
17 平成30年 ミューチャリー 牡2 御神本 訓史
16 平成29年 リコーワルサー 牡2 森 泰斗
15 平成28年 ストーンリバー 牡2 井上 幹太
14 平成27年 ポッドガイ 牡2 矢野 貴之
13 平成26年 オウマタイム 牡2 繁田 健一
12 平成25年 ニシノデンジャラス 牡2 今野 忠成
11 平成24年 インサイドザパーク 牡2 左海 誠二
10 平成23年 ニシノファイター 牡2 小国 博行
9 平成22年 キスミープリンス 牡2 戸崎 圭太
8 平成21年 ナンテカ 牡2 坂井 英光
7 平成20年 ノーステイオー 牡2 左海 誠二
6 平成19年 ヴァイタルシーズ 牡2 左海 誠二
5 平成17年 カネショウマリノス 牡2 今野 忠成
4 平成16年 エスプリフェザント 牡2 久保 勇
3 平成15年 トキノコジロー 牡2 山田 信大
2 平成14年 パレガルニエ 牝2 今野 忠成
1 平成13年 ジェネスアリダー 牡2 桑島 孝春