コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
平成24年度第12回開催 川崎記念 他
1月28日~2月1日の開催のメインは、年明け最初に行われるJpnI、川崎記念。ハタノヴァンクールがワンダーアキュートを半馬身差でしりぞけ、ジャパンダートダービー以来の勝利となりました。 この開催では恒例となった佐々木竹見カップ・ジョッキーズグランプリが行われ、初出場だった山崎誠士騎手が見事総合優勝を果たしました。またその日の第8レースには、本企画をレース名に冠した『王者の眼差し賞』も行われました。 今回はこの4レースについて佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)2013年1月30日(水)川崎記念JpnI
優勝馬 ハタノヴァンクール
- 斎藤
- グラッツィアはスタートのタイミングが合いませんでした。
- 竹見
- すべってトモ脚を落としてしまったようです。そのあとグラッツィアは2コーナー過ぎまでずっと掛かりどおしでた。
- 斎藤
- 逃げ馬不在でタカオノボルが逃げる展開になりましたが、2コーナーあたりで急に下がってしまいました。
- 竹見
- タカオノボルは、(内馬場の)ゲートが気になったようです。それで前が空いたところで、グラッツィアの岩田騎手は一気に行かせました。
- 斎藤
- ハタノヴァンクールが3コーナーから仕掛けて行きました。
- 竹見
- 四位騎手は3~4コーナーで一気にまくりきりました。これは好判断です。ここで勝負がありました。直線まで追い出しを待っていたら、ワンダーアキュートのほうが粘っていたかもしれません。ハタノヴァンクールは、前回の東京大賞典で内田博幸騎手が乗った時に、前のほうでレースをさせたこともよかったと思います。
- 斎藤
- ワンダーアキュートも、最後は差を詰めましたが届きませんでした。
- 竹見
- 3~4コーナーでハタノヴァンクールに外からかぶされてしまいまいた。あそこで譲らずに一緒に行けていれば、もしかして最後まで粘れたかもしれません。直線では外に持ち出して、ゴール前では差を詰めましたが、この馬は一瞬の切れる脚がありません。和田騎手はいい乗り方をしていると思いますが、2着、3着と、なかなか勝ち切れないところがあります。
2013年1月29日(火)王者の眼差し賞
優勝馬 エイアイファン
- 斎藤
- 山崎誠士騎手のエイアイファンがすんなりとハナをとりました。
- 竹見
- おそらく逃げるつもりだったのでしょう。エイアイファンはダッシュ力もあるし、スタートだけ気合を入れて、すぐにすっと控えて、単騎でマイペースの逃げになりました。他馬に競りかけられずにすんなり行けたので、楽なレースになったと思います。
- 斎藤
- 直線ではストロングネオが迫って来ました。
- 竹見
- ゴール前で迫られましたが、最後まで粘れたのは、ブリンカーをしていたこともあったでしょう。このレースは逃げて正解でした。
2013年1月29日(火)マイスターチャレンジ
優勝馬 ハクユウシャンティ
- 斎藤
- スタートでは、1番人気になった坂井英光騎手のハクユウシャンティが大外枠から一気に行きました。
- 竹見
- かなり無理してハナを取りに行きましたが、それだけ自信を持ってのことでしょう。調教師からも指示があったのかもしれません。最後はやや一杯になりましたが、よく粘りました。これは勝った馬が強すぎました。
- 斎藤
- それでもゴール前はきわどい勝負になりました。
- 竹見
- 最後は赤岡騎手のイフポッシブルが外からよく追い込んできました。速めのペースを読んで、道中は中団に控えたんだと思います。赤岡騎手くらいになると、いろいろなコースで何度も乗っていて、川崎コースにも慣れていたということもあったでしょう。それにしてもここに出てくるくらいになると、どの騎手も技術は確かです。
2013年1月29日(火)ヴィクトリーチャレンジ
優勝馬 コウエイクレスト
- 斎藤
- 勝った山崎誠士騎手のコウエイクレストは、中団からの追走でした。
- 竹見
- 2100メートルの長丁場でしたが、スタンド前でもペースはそれほど緩まず平均ペースでした。山崎騎手は、3コーナーの手前あたりからスーッといい手応えで上がって行きました。他の馬を先に行かせて、それを見る形で外に持ち出して行きました。4コーナーでは一気に先頭に並びかけて、そのまま抜けるような勢いでした。
- 斎藤
- ゴール前は4頭、5頭が広がっての激戦となりました。
- 竹見
- 外の岡部誠騎手のマイネジェシカが差し切るかと思いましたが、コウエイクレストはよく残しました。これはいいレースでした。展開にも恵まれた面はありましたが、山崎騎手は焦らずに仕掛けを遅らせて、うまく乗りました。去年あたりから乗れていますね。それにしても岡部騎手はこのシリーズ総合で2位は4回目ですか。