コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
平成25年度第11回開催 報知オールスターカップ 他
今年の正月開催は1月4日までの4日間開催。メインとして行われたのは川崎記念トライアルの報知オールスターカップで、兵庫から遠征のオオエライジンが船橋のアウトジェネラルをハナ差でしりぞけました。鞍上は、乗替った船橋の張田京騎手でした。 そのほか、同じ3日の第10レースに行われた紅梅特別は、山崎誠士騎手のラブリリックが逃げ切り勝ち。4日第10レースの門松特別は、藤江渉騎手のパワージュピターが好位から抜け出しました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)2014年1月3日(金)報知オールスターカップ
優勝馬 オオエライジン
- 斎藤
- オオエライジンは、騎乗予定だった下原騎手から張田京騎手に乗替わりました。
- 竹見
- 張田騎手は柔らかく乗るので、オオエライジンには合っていたと思います。
- 斎藤
- 2番手につけて、3コーナー過ぎで先頭に立ちました。
- 竹見
- ダッシュ力もあるし、手ごたえ十分のまま先頭に立って直線を向きました。
- 斎藤
- ゴール前は接戦になりました。
- 竹見
- ゴール前では御神本騎手のアウトジェネラルに一旦交わされそうになりましたが、最後にもうひと伸びしました。単独で先頭に立つと気を抜くところがあるようですが、ほかの馬が来れば抜かせません。直線を向いたところではラチ沿いを走っていましたが、アウトジェネラルが外から来たのがわかって、少しずつ外に出していったのは、馬を併せに行ったんだと思います。仮にオオエライジンがラチ沿いにいたままで、アウトジェネラルが離れた大外から追い込んできたら、差し切られていたのではないでしょうか。こういう馬はハナに行けばさらに強いレースをするかもしれません。後続を引き付けて逃げれば、うしろの馬が来れば来るなりに脚を使います。馬体を併せての追い比べは強いと思います。
2014年1月3日(金)紅梅特別
優勝馬 ラブリリック
- 斎藤
- 1番人気に支持された山崎騎手のラブリリックがハナを切りました。
- 竹見
- 内のグランドシャープも行く気を見せましたが、山崎騎手は譲りませんでした。1600メートルですからスタート後の長い直線で気合を入れていって、1コーナーに入るところでハナを取り切りました。外枠なので普通ならどこかで抑えるところですが、おそらくハナに行ったほうがいい馬なのでしょう。
- 斎藤
- ラブリリックが先頭に立つとペースが落ち着きました。
- 竹見
- 仕掛けて行っても掛かっていくところがなく、折り合いがつくので、思い切った騎乗ができんだと思います。掛かる馬であそこまで追っていくと、抑えがきかなくなってしまいます。この馬は騎手の指示どおりに動いてくれる乗りやすい馬なのでしょう。向正面で息を入れていますが、直後2番手、3番手の馬は手を動かしての追走でした。
- 斎藤
- 4コーナーでもまだ手ごたえは楽でした。
- 竹見
- 直線追い出されるとあっという間に突き放しました。最初に無理して行ったにもかかわらず楽勝でしたから、馬の力も違っていたと思います。
- 斎藤
- 去年、山崎騎手は川崎リーディングになりましたが、好調の要因をどう見ていますか。
- 竹見
- 最近は思い切った騎乗ぶりがいいですね。この馬のように、前に行く馬は思い切って行かせています。戸崎騎手が中央に移籍して、ある程度いい馬が回ってくるようになったこともあるかもしれません。
2014年1月4日(土)門松特別
優勝馬 パワージュピター
- 斎藤
- 藤江騎手のパワージュピターは、4番手の内を追走しました。
- 竹見
- 藤江騎手は好スタートを切ってムチを入れていましたが、外の吉原騎手のナスノクラスにハナを譲って、ラチ沿いに控えました。外にさらに2頭いて、内の4番手はいい位置取りです。
- 斎藤
- 4コーナー手前から仕掛けて、直線すぐに抜けだしました。
- 竹見
- 逃げていたナスノクロスが4コーナーまで手ごたえが残っていて、2番手の外にいた繁田騎手のシナノテイオーがバテて下がりましたから、藤江騎手はそこをうまく抜け出しました。前の馬が2頭ともバテてしまうと行き場をなくすことがありますが、藤江騎手は前の馬の手ごたえをよく見ていたのでしょう。直線を向いて一気に行きました。後方を追走していた石崎駿騎手のトウカイマルシェが迫ってきましたが、パワージュピターは1番人気に支持されていたように、それだけ力がありました。このC2クラスのあたりのメンバーは、馬の力差がはっきりしているということもあったと思います。