コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成26年度第7回開催 戸塚記念 他

9月の川崎は、5・8・9日の3日間開催でした。メインとして行われた3歳馬による戸塚記念は、大井のキットピークが重賞初制覇。期間限定騎乗の岡部誠騎手は、南関東での重賞初勝利となりました。 5日の長月特別(A2以下)は、金子正彦騎手のドリームザネクストが、中央から転入しての初勝利でした。9日の最終レース、いわし雲特別(B3三組、C1一組)は、瀧川寿希也騎手のベイリービーズが、連勝中の人気馬チャンピオンゴッドを振り切っての逃げ切り勝ちでした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2014年9月9日(火)戸塚記念

優勝馬 キットピーク

斎藤
スタート後は内の2頭が競り合う形で先行して、岡部騎手のキットピークは中団よりうしろに下げていきました。
竹見
この距離(2100メートル)では、普通は1周目の直線に入ったところでペースが落ち着くのですが、前が競り合っていたのでペースが落ちませんでした。1コーナーのあたりからようやく14秒台のラップになって馬群が一団になりましたが、向正面の直線に入ると後続が仕掛けてきますから、そこでまたペースが上がって、前の馬には厳しい展開になりました。
斎藤
人気になったノットオーソリティは、向正面から後退してしまって、意外でした。
竹見
ノットオーソリティは前2頭を追いかけて行きました。この距離で、ペース的にはそのうしろ4番手あたりがちょうどよかったのではないでしょうか。
斎藤
キットピークは、3コーナー過ぎから前をとらえに行きました。
竹見
御神本騎手のノーキディングも、3コーナー過ぎではまだ楽に行っているように見えました。直線半ばでもまだノーキディングのほうが半馬身くらい前にいて、そのままかと思いましたが、最後にキットピークが交わしたのは、あそこまでいくと馬に根性があるかどうかでしょう。繁田騎手のスコペルタは3~4コーナーで一旦下がって一杯かと思いましたが、直線で内からよく盛り返してきました。

2014年9月5日(金)長月特別

優勝馬 ドリームザネクスト

斎藤
勝った金子騎手のドリームザネクストは、控えて6番手からでした。
竹見
内の馬がスタートしてすぐに控えたので、外枠でもイーサンヘイロー、ロンドンアイが楽に先行していきました。
斎藤
ドリームザネクストは、直線ですばらしい伸びを見せました。
竹見
金子騎手は4コーナーまで手ごたえ十分で、さすがにベテランらしく落ち着いて乗っていました。直線で5頭の追い比べになって、間を縫うように抜けてきたのは見事でした。
斎藤
逃げた酒井騎手のイーサンヘイローも粘って2着でした。
竹見
スタート後にすぐにペースが落ち着いて、逃げ先行の馬に有利なペースでしたから、それで最後に差し切ったドリームザネクストは、それだけ力があったということでしょう。金子騎手はうまく乗りました。

2014年9月9日(火)いわし雲特別

優勝馬 ベイリービーズ

斎藤
ベイリービーズの瀧川騎手はスタートから積極的に行きました。
竹見
真ん中の6番枠でしたが、スタートして楽にハナをとれました。すぐに抑えて自分のペースになり、競りかけてくる馬もいませんでしたから、逃げ馬としては楽なレースになりました。
斎藤
3~4コーナーでも楽な手ごたえのまま、単独で先頭でした。
竹見
楽にレースを進めていますから、勝負どころで並びかけてくる馬はいませんでした。勝因は、やはりすんなりとハナに立てたことでしょう。
斎藤
さすがにゴール前では御神本騎手のチャンピオンゴッドが迫りましたが、1馬身差で振りきりました。
竹見
チャンピオンゴッドは、いつもは2~3番手から積極的に行く馬ですが、今回は中団よりうしろからの追走でした。最後はこの馬だけがいい伸びを見せましたが、御神本騎手にしてみれば、ベイリービーズには思った以上に楽に逃げられてしまったということでしょう。