コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成26年度第3回開催 関東オークス 他

6月9日~13日の開催のメインとして行われたのは関東オークス。梅雨入りで水の浮く馬場でのレースとなり、JRAのエスメラルディーナがスローに持ち込んでの逃げ切り圧勝。鞍上はオーストラリアのクレイグ・ウィリアムズ騎手でした。 同日のJRAとの条件交流、ムーンストーンフラワー賞では、地元川崎の伏兵アトムオークスが勝利。鞍上は今野忠成騎手でした。そして最終日に行われた大磯海水浴場開設130年記念は、山崎誠士騎手のディーエスゲインが、直線力強く抜け出す強い競馬を見せました。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2014年6月11日(水)関東オークス

優勝馬 エスメラルディーナ

斎藤
エスメラルディーナがハナに立つと、1周目の3~4コーナーあたりで早くも流れが落ち着きました。
竹見
こういう馬場状態だと、普通は前が速くなるんですが、最初からスローペースでした。最初のスタンド前から向正面に入るまで、どの馬も鞍上ががっちりと抑えていました。向正面の中間あたりでようやくペースが上がりました。
斎藤
2着に残った兵庫のトーコーニーケは、絶好のスタートを決めましたが、すぐに控えました。
竹見
あのスタートなら逃げようと思えば逃げられたはずで、おそらく好位の内で、ということは決めていたのでしょう。勝ち馬には離されましたが、よく2着に粘りました。川原騎手は好騎乗でした。
斎藤
エスメラルディーナは、最後の直線だけで7馬身突き放しました。
竹見
ウィリアムズ騎手は自信もあったでしょうし、余裕もありました。直線ではぐんぐんと差を広げました。道悪のわりには道中のペースがあまり上がらず、それだけにエスメラルディーナの強さが目立ちました。

2014年6月11日(水)ムーンストーンフラワー賞

優勝馬 アトムオークス

斎藤
勝った今野騎手のアトムオークスは、中団よりうしろからでした。
竹見
こういう雨の不良馬場ではどうしても前のペースが速くなります。今野騎手は、ペースが落ち着いた向正面から3コーナーで、楽な手ごたえのまま前との差を詰めていっています。
斎藤
4コーナーでは迷わず内を突きました。
竹見
4コーナーあたりでもまだ手ごたえに余裕がありました。馬群の何頭かが外に振られていましたから、アトムオークスにとっては、ちょうど行くところが開いてくれた感じです。うしろから行っても、川崎コースの場合は内が開く場合があります。
斎藤
直線では馬群を割るように抜け出しました。
竹見
直線を向いて、一旦はラチ沿いを突きましたが、前に2頭いたので外に切り替えて、ぐんぐんと伸びてきました。うまくハマったこともありますが、今野騎手は好騎乗でした。馬が、道悪が得意というのもあったと思います。

2014年6月13日(金)大磯海水浴場開設130年記念

優勝馬 ディーエスゲイン

斎藤
勝ったディーエスゲインの山崎騎手は後方からの追走でした。
竹見
内の2頭、御神本騎手と見澤騎手が出ムチを入れて、外から森騎手も行く気を見せました。これで1番人気ビーユアエンジェルの的場騎手は、あきらめたような感じで控えてこの3頭のうしろから。前は競り合ってペースが速かったようです。山崎騎手は後方4番手の位置取りです。
斎藤
3コーナー手前でもまだ縦長でした。
竹見
普通なら前で競り合った3頭のうしろ、的場騎手のあたりが絶好の位置取りですが、このあたりでもペースが速かったかもしれません。的場騎手も向正面から追い通しでした。
斎藤
山崎騎手は、3~4コーナーでは外からまくってきました。
竹見
先行した馬がバテて下がってくるのを考えて外を回したのかもしれません。直線では前の馬に並びかける間もなく突き放しました。ディーエスゲインはもともと中団よりうしろから行く馬ですから、この馬に流れも向いたと思います。山崎騎手は3コーナーあたりで勝てると思ったのではないでしょうか。この勝ち方を見ると、このあたりのクラスにいる馬ではないように思います。上のクラスにいっても勝負になるのではないでしょうか。山崎騎手は、最近では今回のように控えていって直線一気に差し切るというような騎乗が目立っています。