コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成22年度第12回開催 佐々木竹見カップ・マイスターチャレンジ杯 他

1月下旬の開催は、恒例の佐々木竹見カップ・ジョッキーズグランプリと、年明け最初のJpnIとなる川崎記念が行われました。 佐々木竹見カップは、第1戦を制した大井の戸崎圭太騎手が総合優勝。今野忠成騎手が2位に入る活躍を見せました。 川崎記念は実績断然のフリオーソが完勝。川崎期待のボランタスは2番人気に支持されましたが、3着という結果でした。 今回は、佐々木竹見カップの2戦と、川崎記念についてうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2011年1月25日(火)佐々木竹見カップ・マイスターチャレンジ

優勝馬 ジュウクリュウオウ

斎藤
戸崎圭太騎手のジュウクリュウオウはスタートで後手を踏みました。
竹見
スタートで右のトモを完全に落としてしまいました。後方からになりましたが、前がやや競り合う形で速めのペースになったのが、この馬にはよかったかもしれません。
斎藤
戸崎騎手は向正面から早めに仕掛ました。
竹見
あの勢いでまくっていくと、普通は4コーナーあたりで一杯になってしまうのですが、このメンバーでは力が違っていました。中央から移籍して2連勝ですが、このクラスでは時計ひとつくらい違う感じです。出遅れていなければもっと楽に勝っていたかもしれません。戸崎騎手は出遅れながらもうまく乗りました。この馬はB3クラスあたりまでは楽に上がれるでしょう。
斎藤
2着の繁田健一騎手は内を突いてきました。
竹見
繁田騎手はスタート後、前の3頭を見る位置で、ラチ沿いの絶好位を進みました。好スタートでしたが、前が速いと思って下げたのでしょう。
斎藤
直線では、よく狭いところから抜けました。
竹見
4コーナーでは外にも馬がいたので、内を突くしかありませんでした。一瞬出られないところがあって苦しくなりましたが、よく抜けてきたと思います。もう少し早めに抜け出すところがあれば勝っていたかもしれません。

2011年1月25日(火)佐々木竹見カップ・ヴィクトリーチャレンジ

優勝馬 スズツルギオー

斎藤
勝ったのは、乗替りになった本橋孝太騎手のスズツルギオーでした。
竹見
最初に選ばれていた坂井英光騎手が怪我で出られなくなって、代わりの的場文男騎手も前日の落馬で出られなくなったのは残念でした。
斎藤
2100メートル戦らしく、1周目のスタンド前でペースが落ち着きました。
竹見
かなりスローペースで、ほとんどの騎手が抑えるのに苦労していました。あそこで動く馬がいても面白かったかもしれません。
斎藤
最初に仕掛たのは今野忠成騎手のアップローでした。
竹見
今野騎手は最後方にいましたが、2コーナーを回ったあたりから一気に行きました。人気がなかったから(10番人気)思い切ったレースができたということもあったでしょう。結果的に4着に粘りましたから、好判断だったと思います。このレースを勝った本橋騎手にはポイントがつきませんから、今野騎手はこの思い切った騎乗で総合で2位になりました。
斎藤
今野騎手が一気にまくってきたときも、勝った本橋騎手はハナを譲りませんでした。
竹見
本橋騎手にとっては、あそこでまくりきられてしまっては巻き返せなくなります。先頭を譲らなかったのはいい判断でした。本橋騎手は前々走からこの馬に乗っていたので、馬をよく知っていたというのもあったでしょう。結果的には楽勝という内容でした。
斎藤
町田直希騎手のナイトシアターが2着に来ました。
竹見
町田騎手は4コーナーでも中団よりうしろの位置どりでしたが、直線では馬群を捌いてよく追い込んできたと思います。

2011年1月26日(水)川崎記念

優勝馬 フリオーソ

斎藤
今回はフリオーソが逃げる形になりました。
竹見
フリオーソは、じわっとハナに立ってマイペースでレースができれば強いです。さすがに力が違いましたから、どの馬も競りかけては来ませんでした。すんなりと行けたので、馬も気持ちよく走っています。自分のレースをして勝った感じで、今回のメンバーでは力の差がありました。
斎藤
山崎誠士騎手のボランタスは、3~4コーナーで2番手に上がりましたが、最後はメイショウタメトモに差し返されてしまいました。
竹見
ボランタスはいつもどおり中団よりうしろを追走という展開でした。仮に早めにフリオーソを追いかけて行ったとしても厳しかったでしょうから、この馬の力は十分に発揮したと思います。よく走ってると思いますよ。メイショウタメトモの福永祐一騎手は、3番手でずっと楽に走っていたので、直線でも余力がありました。今回が重賞は初めてでしたが、こういうレースでもまれていけば、もっと強くなると思います。