コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
平成23年度第10回開催 全日本2歳優駿 他
今年最後の川崎開催では、恒例のダート2歳チャンピオン決定戦、全日本2歳優駿(JpnI)が行われました。勝ったのは断然人気となったオーブルチェフで、ダートでは無敵の4連勝を達成。しかしレース後に骨折が判明。目標としていたドバイ遠征が白紙となったのは残念でした。 そのほかでは、酒井忍騎手のクールバニヤンが最後方からまくって差し切ったシンフォニー特別、伊藤裕人騎手のカネツパワーが2番手から直線抜け出して勝利したサンタクロース特別と、今回はこの3レースについて佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)2011年12月14日(水)全日本2歳優駿
優勝馬 オーブルチェフ
- 斎藤
- オーブルチェフは躓いたようなスタートでした。
- 竹見
- 中舘騎手はよく落ちなかったと思います。出遅れても一気に行かず、中団あたりで抑えたのはよかったと思います。あれで行ってしまったら、おそらく勝てなかったでしょう。ここで我慢できたのが勝因だと思います。
- 斎藤
- 前は、戸崎騎手のヘヴンズパワーと、蛯名騎手のメジャーアスリートが競り合うように先行しました。
- 竹見
- それでテンのペースも速くなったと思います。それでも蛯名騎手も川崎コースをよく知っていますから、いい位置につけて行っています。
- 斎藤
- オーブルチェフは3コーナーで先頭に並びかけています。
- 竹見
- 仕掛けのタイミングとしては早いですが、自信もあったのでしょう。一杯に追っているわけではないので、馬の力も抜けていました。これで普通にゲートを出ていれば、5~6馬身くらい差をつけて勝っていたと思います。骨折は残念でしたが、無事に行っていればドバイ(UAEダービー)に行ってもいいところまでいったかもしれません。
2011年12月14日(水)シンフォニー特別
優勝馬 クールバニヤン
- 斎藤
- 酒井忍騎手のクールバニヤンは、スタート後は最後方からでした。
- 竹見
- 向正面中間でも最後方で、3コーナー手前で一気に仕掛けていきました。4コーナーから直線を向くところでは大外からまくりきって先頭に立っています。
- 斎藤
- そのまま押し切りました。
- 竹見
- 前で2頭が競り合ってペースが速くなったこともありますが、クールバニヤンは3コーナー手前からの脚色が他馬とはまったく違っていました。ただこの馬は早めにハナに立つと、ソラを使うようなところがあって、残り50メートルのあたりでは頭を上げてしまっています。好位につけていた岩田騎手のミヤビコンクエストがゴール前で迫ったきたら、また首を使った走りになって粘り込みました。この馬はいつも後方から行って、こういう走りをしていますから、終いの脚はしっかりしていますね。
2011年12月16日(金)サンタクロース特別
優勝馬 カネツパワー
- 斎藤
- 勝ったカネツパワーの鞍上は、デビュー3年目の伊藤裕人騎手でした。
- 竹見
- 伊藤騎手はうまく乗りましたね。カネツパワーは、ここのところあまりいいレースをしていなかったので、人気はありませんでしたが、以前は強い勝ち方もしていた馬です。
- 斎藤
- そのカネツパワーは、2番手を追走しました。
- 竹見
- スタートしてすぐに流れが落ち着いて、ペースはそれほど速くはなりませんでした。どの馬も折り合いがついていました。伊藤騎手は最初少し仕掛けていって、2番手の絶好位につけました。そこでペースが落ち着いてくれたことが最大の勝因ではないでしょうか。向正面でペースアップした時も、離されずについていったところもよかったです。
- 斎藤
- 最後は2頭に迫られましたが、的場騎手のカネショウスタイルを半馬身差でしりぞけました。
- 竹見
- 結果的に1番人気だった町田騎手のダルタニヤンだけが中団から差を詰めて差のない4着まできましたが、それ以外は前に行った馬での決着でした。流れもカネツパワーに向いていたと思います。