コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第3回開催 関東オークスJpnII 他

 6月12〜16日の開催では重賞が2レース行われました。スーパースプリントシリーズの川崎スパーキングスプリントは、好ダッシュから先頭に立った船橋のキモンルビーが接戦の2着争いに3馬身差をつけて完勝。昨年3着の雪辱となりました。鞍上は御神本訓史騎手でした。
 3歳牝馬によるJpnII・関東オークスは、2番手から3コーナー過ぎで先頭に立ったパライバトルマリンが勝利し、3着までJRA勢が占める結果。鞍上は戸崎圭太騎手でした。
 川崎ジョッキーズカップ第5戦は、先行勢総崩れとなって、今野忠成騎手のユラノグラフィアが直線大外から豪快に追い込みを決めました。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年6月13日(火)川崎スパーキングスプリント

優勝馬キモンルビー


勝ったキモンルビーは抜群のスタートダッシュを見せました。外枠からでも御神本騎手はハナにこだわったのでしょう。1番枠の笹川騎手(エンテレケイア)、2番枠の吉原騎手(プリモパイソン)も行く気を見せましたが、キモンルビーはダッシュ力が違いました。
 川崎900メートルでは、ダッシュ力のある馬なら、多少出遅れても好位を追走していけるので、むしろ包まれる心配がない外枠のほうがいいです。大井のように直線の長いコースであれば、内でじっと我慢していって直線勝負に賭けるということもできますが、川崎のように直線が短いと、仮に出遅れて馬群に包まれたときに、そこから抜けてくるのは難しくなります。小回りコースでは、最後の直線より、むしろスタート後の直線が勝負になります。
 キモンルビーは好スタートからスピードに乗っていったので直線でも行き脚は衰えませんでした。短距離はダッシュ力のある馬にはかないません。

2023年6月14日(水)関東オークス

優勝馬パライバトルマリン


 フェブランシェが外枠からハナをとって、勝ったパライバトルマリンは2番手の絶好位。すぐに隊列が決まったので、フェブランシェのルメール騎手はペースを落としての逃げに持ち込むことができました。
 長距離ではどこかで必ずペースが落ちますから、やはりある程度前に行ったほうが有利です。中団にいる馬はそれで包まれてしまうと動くに動けません。パライバトルマリンは抜群の手応えのまま3コーナーで前をとらえると、直線で後続を振り切りました。馬も強かったですが、戸崎騎手がうまく乗りました。
 2着のクレメダンジュは、4コーナーで一瞬外に行きかけましたが、直線を向いたところで内に切り替え、ラチ沿いを伸びてきました。これは和田竜二騎手の好判断でした。
 メイドイットマムも好位を追走して、直線は外をよく伸びてきました。3着のメイショウオーロラに惜しくもハナ差届かず4着。5着のマルグリッド(兵庫)には3馬身差をつけましたから、地方馬の中では力が抜けていたと言っていいでしょう。
 フェブランシェ以外の4頭が前残りの決着で、それだけにスローに落として逃げたフェブランシェの7着は負けすぎでした。

2023年6月14日(水)川崎ジョッキーズカップ第5戦

優勝馬ユラノグラフィア

 スタートでは岡村騎手(パンディーロ)がムチを入れて思い切って行きました。一旦は並びかけた本田騎手(テットアヴァンセ)がすぐに2番手に控えて競り合いにはならなかったので、それほど速いペースにはならず、実際、3ハロン目と4ハロン目が13秒5、14秒2というスローペースでした。それでも結果的に先行勢が総崩という結果で、先行勢の中では5番手あたりを追走した山崎騎手(メリッソ)がなんとか4着に粘っただけでした。
 勝った今野騎手(ユラノグラフィア)、2着の増田騎手(スリースター)は、縦長の後方からの追走。3着の山林堂騎手(ディーロジャー)も先行集団から離れての中団、このあたりが一番いい位置だったと思います。
 直線では先行勢がみんな止まってしまいました。最後から2ハロン目には15秒3というラップがありますから、C2というクラスの馬にはタフな馬場だったのかもしれません。
 3、4コーナーでは内がごちゃついていたので、増田騎手は大外を回して位置取りを上げてきて、今野騎手は手応え十分のまま、さらに遅れての追い出しでした。直線で一旦は増田騎手が先頭に立ちましたが、今野騎手はさらに大外から追い込みを決めました。ユラノグラフィアは前走も4コーナー11番手から追い込んで2着でしたから、今野騎手はそういう脚質をわかって乗っていたと思います。村田順一調教師は今開催5勝と好調だったので、そうした勢いもあったかもしれません。