コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第4回開催 スパーキングレディーカップJpnIII 他

 7月3~7日の開催のメインとして行われたJpnIIIのスパーキングレディーカップは、JRA・レディバグが2番手から直線で抜け出して重賞初制覇。1番人気に支持された浦和・スピーディキックは、ゴール前一気に迫りましたが、惜しくもアタマ差届きませんでした。
 初日3日の声優原奈津子生誕記念STLDASHでは、中団から勝負どころで一旦は位置取りを下げた1番人気のヘレンキムゼーが直線で抜け出しました。鞍上は、この開催6勝で開催リーディングとなった町田直希騎手でした。
 川崎ジョッキーズカップ第6戦は、池谷匠翔騎手のリープが2番手から直線で抜け出し、1番人気にこたえての快勝でした。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年7月5日(水)スパーキングレディーカップ

優勝馬レディバグ


 人気のスピーディキックとグランブリッジは後方からの追走になりました。スタートして前は譲り合うような感じで流れが落ち着き、結果的に2番手につけていたレディバグは展開的に有利になりました。
 スローで流れたぶん、向正面から一気にペースアップして、後方のスピーディキックとグランブリッジはなかなか前をとらえることができず、そこで脚を使わされることになりました。
 スピーディキックの御神本騎手は、4コーナーでは馬群の中に入っていくことになって、直線を向いて外に持ち出すという、ちょっとロスの多い競馬になりました。最後はよく伸びましたが、アタマ差届きませんでした。
 御神本騎手は道中で内に入りすぎました。外枠だったので前の馬が邪魔にならない外目をまわって、ペースアップされる前に早めに位置を取りにいければよかったと思います。勝てるレースだっただけに、ちょっともったいなかった。下手に乗ったというわけではないですが、道中の位置取りですね。

2023年7月3日(月)声優原奈津子生誕記念STLDASH

優勝馬ヘレンキムゼー

 スタートして一旦は櫻井騎手(ミトグラフィア)が先頭に立ちましたが、外から森騎手(ブランコイラピド)が主張して逃げました。1~2コーナーでは外から今野騎手(オーサムワールド)も上がってきて、櫻井騎手は3番手になりました。スタートがよかったですから、あそこはもう少し主張して2番手を取ってもよかったと思います。
 勝った町田騎手のヘレンキムゼーは最内枠で互角のスタートでしたが、控えて5番手の内につけました。
 3コーナー手前から一気にペースアップとなって、後ろから仕掛けてくる馬もいましたが、勝負のポイントは4コーナーでした。前3頭がカベになったところ、そのうしろにいた櫻井騎手は4コーナーを回って外に出して行きました。対して、櫻井騎手のうしろにいた町田騎手は追い出しを待って、直線を向いて前がバラけたところから一気に抜け出しました。
 櫻井騎手のミトグラフィアもゴール前で鋭く伸びて迫りましたが、ヘレンキムゼーには半馬身届きませんでした。この1、2着は、4コーナーで通ったところの差が大きかった。
 櫻井騎手はあと一瞬待って、町田騎手が抜けてきたところを先に抜け出していれば勝っていたかもしれません。一方の町田騎手は落ち着いて仕掛けを待ったことで直線を向いて視界が開けました。ほんの少しの判断の差で、運もありましたが、町田騎手は好判断でした。

2023年7月5日(水)川崎ジョッキーズカップ第6戦

優勝馬リープ

 先行争いが激しくなって、1~2コーナーを回るあたりで前6頭、後ろ6頭と分かれて進む展開になりました。勝った池谷騎手(リープ)も外枠から押していって2番手につけました。
 向正面ではさらに縦長の展開となって、それでも先行勢には息が入るような流れで、前に行った馬たちでの決着となりました。格付けが一番下のC3ですから、能力差もあったのかもしれません。人気上位での決着になりました。
 それにしても池谷騎手のリープは直線でよく伸びました。外枠からでも思い切って2番手をとったのが勝因です。池谷騎手は追い出してからも姿勢がしっかりしています。
 4コーナーで4番手だった伊藤騎手(タカラチーター)も直線でよく伸びて2着でした。