コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第5回開催 ヤングジョッキーズシリーズTR川崎 第2戦 他

 7月26~29日の開催では、ヤングジョッキーズシリーズが行われました。その第2戦では野畑凌騎手が勝利、新原周馬騎手も3着に入りました。
 その直後に行われた3歳馬によるアウローラ特別では、新原騎手のエスポワールゲートが向正面から一気にまくって勝利しました。
 そして最終日の最終レースに行われたキリマンジャロ賞では、6番人気のゼンコウテイが3番手から直線で抜け出しました。鞍上の櫻井光輔騎手は、この開催5勝を挙げ、開催リーディング2位と活躍が目立ちました。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年7月27日(木)ヤングジョッキーズシリーズTR川崎 第2戦

優勝馬リオンポラリス

 勝った野畑騎手(リオンポラリス)は、行く気を見せた大木天翔騎手(トレジャーバローズ)を行かせて、無理せず好位の3番手につけました。野畑騎手は普段から積極的に前に行くのはいいと思います。3コーナーで大木騎手が一杯になって、あとは室陽一朗騎手(ウインアルバローズ)をとらえるだけという展開で、直線で抜け出しました。好騎乗だったと思います。
 1番人気の新原騎手(ノーブルキャニオン)は、外目の枠から中団につけましたが、スタート後に仕掛けてもう少し前、野畑騎手のうしろあたりの位置を取りにいってもよかったと思います。向正面では外から来られた馬が壁になって、勝負どころで動いていけませんでした。3~4コーナーではそのまま内を進むしかなく、ようやく4コーナーで外に持ち出しました。ただそのコース取りでかなりロスがありました。ここはもう少し我慢して、直線を向いたところで下がってきた大木騎手の内に行けば2着もあったかもしれません。ただそれも一瞬の判断ですから、そのあたりは川崎コースの難しいところでもあります。

2023年7月27日(木)アウローラ特別

優勝馬エスポワールゲート

 新原騎手のエスポワールゲートはスタートして行き脚がつかない感じで、1~2コーナーでは後方から2番手でした。その位置から向正面で一気にまくっていきました。前がペースアップする前に動いていったのはよかったです。3コーナーでは先頭の野畑騎手(レディーラッキー)をとらえて、直線半ばまでは抵抗されましたが、これを競り落とすという強いレースをしました。エスポワールゲートは飛びが大きいので、追っていって伸びるような感じです。馬の持ち味をうまく引き出した騎乗でした。この馬は距離が延びればもっとよくなるかもしれません。
 4番手につけていた増田騎手のコイスルシイナも直線での伸びが目立ちました。

2023年7月29日(土)キリマンジャロ賞

優勝馬ゼンコウテイ

 町田騎手(タキチャンゴー)と野畑騎手(リコーベレッタ)がハナを競り合って行きました。勝ったゼンコウテイの櫻井騎手は1番枠のスタートでやや離れた3番手。前が飛ばしていったので向正面では縦長の展開になりましたが、櫻井騎手は3番手で我慢していました。
 3コーナーでは野畑騎手が先頭に立って、櫻井騎手はこれを目標にして、直線では並ぶ間もなく一気に交わしていきました。ゼンコウテイは6番人気と案外人気がありませんでしたが、ここのところ3着の好走があって、いつ勝ってもおかしくない走りはしていました。今回は行く馬を行かせて、櫻井騎手は落ち着いた好騎乗だったと思います。
 野畑騎手は最後一杯になって3着でしたが、先行争いでは町田騎手より外でしたから、引いて2番手で正解です。それでも積極的な騎乗をしたのはよかったと思います。