コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第6回開催 スパーキングサマーカップ 他

 8月21~25日の開催でメインとして行われたのは、マイル重賞のスパーキングサマーカップ。3コーナー過ぎで先頭に立った船橋のスマイルウィが直線後続を寄せ付けず完勝。鞍上は金沢の吉原寛人騎手でした。
 同日第9レースに行われた川崎2000シリーズ・カノープス賞は、スタートでやや出遅れ最後方から進めたタイセイストラーダが、町田直希騎手の落ち着いたレース運びで直線抜け出しました。
 最終日の第10レース、やまなみ五湖「宮ケ瀬湖」「奥相模湖」賞では、1番人気に支持されたベラールが2着に5馬身差をつけて圧勝。昨年騎手を引退し、厩舎を開業した酒井忍調教師の初勝利となりました。また、鞍上の山崎誠士騎手は、この開催9勝を挙げ開催リーディングとなりました。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年8月23日(水)スパーキングサマーカップ

優勝馬スマイルウィ


 勝ったスマイルウィは、外枠だったこともよかった。ダッシュが速いのでほとんど馬なりのまま3番手の外につけて、理想通りのレースになったと思います。3コーナーで前をとらえて先頭に立つときの脚色が際立っていました。吉原騎手もうまく乗りましたが、それ以上に馬が強かった。
 2着のリンゾウチャネルは、スタートでスマイルウィを前に行かせたあと、安藤洋一騎手は外に出して、中団からの追走でした。小回りの川崎コースは、あまり内に入らずにできるだけ外に出していったほうがいいです。流れ的にもいい位置につけたと思います。
 3着のコパノジャッキーも後方から直線追い込んで来ました。先行2頭が着外に沈んで、2・3着馬は中団または後方から直線脚を使いましたから、好位3番手から直線で突き放したスマイルウィは、展開的にも力が抜けていました。

2023年8月23日(水)カノープス賞

優勝馬タイセイストラーダ

 これはネフィリムの森泰斗騎手が逃げたペースがちょっと速かった。(1周目の)スタンド前でペースが落ち着きましたが、ネフィリムは最初の3コーナーまでにハナをとるのにかなり脚を使ってしまいました。(2周目の)3コーナーで後続を離したのでそのまま逃げ切るような感じでしたが、直線半ばで止まってしまいました。
 勝ったタイセイストラーダはスタートで出遅れて最後方からになりましたが、先行勢が速くなったぶん、展開が向いた面もありました。ただ町田騎手は出遅れても慌てず、うしろからじっくり進めたのがよかったと思います。前半は内目で我慢させて、向正面の中間あたりで外に持ち出して位置取りを上げていきました。直線での末脚が1頭だけ違っていました。終いの脚がいいこの馬には展開も向きましたが、町田騎手の好騎乗でした。
 1番人気、吉原騎手のエアセイランは2着。前から離れた4番手あたりを追走して、直線で一旦は先頭に立つ場面がありました。完全に勝ちパターンでしたが、これで負けたのでは仕方ありません。

2023年8月25日(金)やまなみ五湖「宮ケ瀬湖」「奥相模湖」賞

優勝馬ベラール

 勝ったベラールは1番枠でもスタートで下げて後方3番手からでした。山崎騎手は前回も乗って、この馬のことはわかっていますから、自信を持っての騎乗だったのでしょう。
 外から増田騎手のモエヨドラゴンが一気に行って4頭が競り合うように後続を離して行きましたから、前はペースが速くなりました。
 山崎騎手は向正面から徐々に位置取りを上げて行って、3コーナー過ぎで前を射程圏にとらえる4番手。まだ手応えも十分で、前の馬たちはバテてきていますから、あとはどこからでも抜けていければという感じでした。前が飛ばしていって先行勢総崩れになったこともありましたが、直線突き放して強い勝ち方でした。ベラールは、もうひとつ上のB1あたりでも勝負になるのではないでしょうか。
 2着の新原騎手(フィスラー)も4コーナー6番手から大外を追い込んできました。8番人気でした。これも前半控えていったのがよかったと思います。