コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第8回開催 鎌倉記念SII 他

 10月9~13日の開催では、全日本2歳優駿トライアルの鎌倉記念が行われました。勝ったのは北海道から遠征のサントノーレ。北海道勢はこのレース近4年で3勝となりました。
 9日に行われたローレル賞トライアルの小町特別では、離れた最後方を追走したウインアザレアが直線大外から豪快に差し切りました。鞍上は古岡勇樹騎手でした。
 12日の影武者賞では、1番人気のクリコマが4コーナー4番手の一線からゴール前で抜け出しました。鞍上は野畑凌騎手でした。
 今回は2歳戦3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年10月11日(水)鎌倉記念

優勝馬サントノーレ


 外枠から勢いよくモンゲースパイがハナを取りましたが、サントノーレも互角のスタートからすぐに2番手の好位をとりました。ライゾマティクスが外の3番手に控えてくれたので、サントノーレは枠順もよかったと思います。
 3コーナーあたり、サントノーレの服部騎手の手応えはまだ楽なままで先頭に立ちました。ただ初めての左回りだったからなのか、4コーナーあたりでフワフワするところがあって、直線を向いてもまだ馬が遊んでいるようでした。ライゾマティクスが一旦は先頭に立って、サントノーレはそのまま下がってしまうのかと思いましたが、最後の150mくらいからグングン伸びて抜け出しました。
 初めての遠征だったこともあるでしょうが、まだまだ馬が子供なので、それが解消すればもっと強くなると思います。

2023年10月9日(月)小町特別

優勝馬ウインアザレア

 勝ったウインアザレアの古岡騎手は、大外からのスタートで、下げて内に進路をとって最後方から、それもかなり離れた位置からの追走でした。
 水の浮く不良馬場では前残りになることがあるので、それを意識してか前の馬たちはペースが速くなりました。競り合った3頭は早めに一杯になって、山崎騎手のシントーユタカが9着、森騎手のサクラギは最下位でした。その中では町田騎手のテルオールが粘るかと思いましたが、それでも最後は一杯になってしまいました(5着)。
 4番手を追走していた岡村騎手のトレイルリッジが直線半ばで一旦は先頭に立ちましたが、古岡騎手が並ぶ間もなく大外から一気に差し切りました。最後は1頭だけ脚色が際立っていました。
 位置取りやタイミング的には、岡村騎手がうまく乗って、勝ってもおかしくなかった展開でしたが、最後の直線で脚を使うウインアザレアには展開がうまくはまりました。人気になればこういうレースはなかなかできませんが、4番人気という気楽さもあったかもしれません。古岡騎手の好騎乗というより、さまざまに展開が向いたと思います。

2023年10月12日(木)影武者賞

優勝馬クリコマ

 勝ったクリコマはスタートしての直線では無理せず、野畑騎手はまわりの出方を見ながら3番手の好位につけていきました。ところが2コーナーあたりで山口騎手のファイナルハートに外から被せられると、クリコマは向正面でずるずると下がって先行集団から置かれてしました。野畑騎手は追っていますから、馬に走る気がなかったのか、砂をかぶって嫌がったのかもしれません。
 野畑騎手はずっと追い通しでしたが、3コーナー過ぎからようやく前を追いかけていって、直線を向いて外に持ち出してムチを入れると一気に伸びて差し切りました。能力のない馬であれば、向正面で下がったらそのままになってしまいますが、まだこれで3戦目ですから、まじめに走れるようになれば能力は相当高いと思います。終いの脚がいいので将来的に期待できると思います。