コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和5年度第9回開催 ロジータ記念SI 他

 11月6~10日の開催はダブル重賞。2歳牝馬によるローレル賞、3歳牝馬によるロジータ記念が行われましたが、ここではメイドイットマムが春の桜花賞以来の勝利となったロジータ記念を振り返ります。
 8日の最終レースに行われた2023川崎ジョッキーズカップ・ファイナルは、直線の混戦から神尾香澄騎手のミュークレグルスが抜け出しました。そしてゴール前一気に迫って2着に入った中越琉世騎手が、今年のこのシリーズでは1勝、2着2回という成績で総合優勝となりました。
 9日の第10レースに行われた「ご縁の国しまね」特別は、中団のうしろでじっくり構えた古岡勇樹騎手のコスモマルーンが馬群をさばいて抜け出しました。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2023年11月8日(水)ロジータ記念

優勝馬メイドイットマム


 メイドイットマムは2番手、マテリアルガールはそれをマークするようにぴたりと3番手につけました。逃げたリコシェの森泰斗騎手が緩みのないペースで引っ張ったので、メイドイットマムの本橋騎手にとってはレースがしやすかったと思います。そのペースについていった後続勢には厳しいレースになりました。
 メイドイットマムが3コーナーで前をとらえにいったあたりで3番手以下の馬たちは鞍上の手が盛んに動いて、このあたりで手応えが違っていました。直線では追い比べになるかと思いましたが、メイドイットマムは直線半ばで突き放しました。
 前走のサルビアカップはマテリアルガールに8馬身も離されて2着でしたが、57キロの斤量と休み明けもあったと思います。今回はしっかり仕上げてきたぶん、能力を発揮しました。
 2着はサルビアカップで3着だったスギノプリンセスでした。メイドイットマムのうしろ、馬群の中で揉まれる厳しい位置取りで、ペースアップした3コーナーあたりでも外から被されて外に出すこともできず、鞍上の和田譲治騎手は内で我慢のかなり苦しいレースだったと思います。それでも直線では内からよく伸びてきました。
 サルビアカップの圧勝で1番人気に支持されたマテリアルガールは、メイドイットマムをぴたりとマークしていたわりに、直線は伸びませんでした。連勝してきての前走がピークだったのかもしれません。

2023年11月8日(水)2023川崎ジョッキーズカップファイナル

優勝馬ミュークレグルス

 勝った神尾騎手のミュークレグルスは、スタート後は行く馬を行かせて5番手。外目のいつでも仕掛けられる位置につけたのが、ひとつ勝因だったでしょう。4コーナーでは視界が開けて、前の2頭をとらえるだけという態勢になりました。最後は外から2頭が迫ってきましたが、よくしのぎました。
 神尾騎手は追ってから手綱が緩まなくなったし、姿勢が崩れなくなったあたりに上達を感じます。
 中越騎手のヴォーグセレナイトがゴール前で一気に迫りましたが、クビ差2着でした。後方からの追走はいつもどおりで、3コーナー過ぎでもまだ仕掛けを我慢していました。4コーナーで思い切って内を突いたのはよかったと思います。直線では、ちょうど神尾騎手のうしろに進路ができて抜けてくることができました。中越騎手は、手綱の持ち方や、最後追ってくるところはよくなりましたが、道中の姿勢をもう少し直したほうがいいと思います。
 ヴォーグセレナイトと馬体を併せるようにさらに外から岡村騎手のアドヴェントイヴも伸びてきましたが3着でした。4コーナーで中越騎手が内を突いたのに対して、岡村騎手は外に持ち出して、2着、3着はそのぶんの差でした。

2023年11月9日(木)「ご縁の国しまね」特別

優勝馬コスモマルーン

 1番枠の古岡騎手(コスモマルーン)はスタートで気合を入れていきましたが、行き脚がつかず中団よりうしろから。前2頭が競り合ってのハイペースでかなり縦長の展開になりましたから、先頭とはかなり離れた位置になりました。それでも3コーナーから馬群の中を縫うように位置取りを上げてきて、直線を向いたところで前が開いて抜け出しました。
 人気薄(8番人気)で気楽に乗れたということもあると思いますが、ペースや展開にも恵まれて、行くところ行くところ進路ができて、勝つときはすべてがうまくいくものです。思い切った進路取りができる度胸も好騎乗につながりました。コーナーがきつい川崎コースでこそというレースでもあったと思います。
 古岡騎手はこの日3勝で、この開催では5勝を挙げる活躍でした。