コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和6年度第2回開催 エンプレス杯(キヨフジ記念)JpnII 他

 5月6~10日の開催でメインとして行われたのは、開催時期が変更されたJpnIIのエンプレス杯で、ナイターでの実施は7月に行われていた2001年以来。武豊騎手を背に逃げ切ったのはJRAのオーサムリザルトで、重賞初挑戦ながら、デビューから無傷の6連勝としました。

 その日の最終レースに組まれた川崎ジョッキーズカップ第4戦は、池谷匠翔騎手のスプライトが6番人気にながら直線後続を置き去りにして5馬身差圧勝となりました。

 そして最終日、10日のメインとして行われた綾瀬市「オリジナルばら」できたよ!記念(B1二組、B2一組)は、8番人気のブラックネロが直線豪快に大外一気の追い込みを決めました。鞍上は古岡勇樹騎手でした。なお2着にはブービー人気のクールファイブが入り、馬単13万円、3連単は248万円という大波乱の決着となりました。

 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2024年5月8日(水)エンプレス杯(キヨフジ記念)JpnII

優勝馬オーサムリザルト


 武騎手のオーサムリザルトは、スタート後は2番手でしたが、内から先頭のキャリックアリードが抑えていたので、1周目の4コーナーで先頭に立ちました。1~2コーナーあたりから徐々にペースアップしていって、向正面では馬群はかなり縦長になしました。オーサムリザルトは3コーナーあたりからまたペースアップしたので、直後につけていたアイコンテーラー以外、好位の有力勢は追っても追ってもついていけませんでした。直線ではそのアイコンテーラーも振り切り、最後はグランブリッジに詰め寄られましたが、逃げ切りました。武騎手は2日前の名古屋グランプリもノットゥルノで逃げ切っていましたが、長距離戦でのペース判断は見事です。好騎乗でした。

 2着だったグランブリッジは、スタート後は差のない内の4番手につけていました。最初のスタンド前の直線で外に持ち出せるようなタイミングがあったので、そこで持ち出せばよかったと思いますが、川田騎手は内でじっとしていて、1~2コーナーから徐々に縦長となって前との差がかなり開いてしまいました。これは結果論になりますが、最後の直線ではしっかり伸びて勝ち馬に迫っていますから、1周目の直線で外に持ち出して、もう少し前についていければチャンスはあったのではないでしょうか。

 3着に入った大井のキャリックアリードは互角のスタートでしたが、やはり中団まで下げての追走でした。4コーナーではまだ6番手の位置から伸びて来ましたが、グランブリッジとは2馬身差。前の2頭は力が抜けていました。

2024年5月8日(水)2024年 川崎ジョッキーズカップ第4戦

優勝馬スプライト

 本田紀忠騎手のガールズドリームが先頭に立つと、前3頭が競り合うようにハイペースとなって、2コーナーあたりで縦長の展開になりました。

 勝った池谷騎手のスプライトは躓いてのスタートでしたが、それでも13番枠から一気に内に切れ込んで4番手、絶好位で折り合いをつけての追走でした。スタート後のコース取りと、位置取りが勝因になったと思います。飛ばした前3頭にはついていかず、控えてやや離れた4番手を追走したこともよかった。2着の山林堂騎手(メリッソ)もそのうしろ5番手でじっと我慢していました。

 池谷騎手は3コーナーあたりから仕掛けていって、4コーナーで先頭に立ちました。タイミングとしては早すぎたような気もしますが、ついてこられる馬もいなかったので、直線では独走となっての圧勝でした。山林堂騎手も追ってきましたが5馬身差がつきました。
 3着に入った今野騎手のクイーンラブソングは縦長の後方からの追走となって、4コーナーでもまだ7番あたり、中団から直線よく伸びました。

 前で飛ばした3頭ではガールズドリームの5着が最先着という結果を見ても前の流れが速く、前半に脚を溜めていた馬たちが末脚を生かせる展開になりました。

2024年5月10日(金)綾瀬市「オリジナルばら」できたよ!記念

優勝馬ブラックネロ

 このレースも前が競り合って、最初の直線から縦長になりました。勝った古岡騎手のブラックネロは後方3番手からの追走でした。

 上位3頭は中団よりうしろにつけていた馬たちでしたが、前で飛ばした馬たちが4コーナー手前で一杯になったことでうしろが渋滞するような形になりました。古岡騎手は直線を向いても前がカベになっていたので、思い切って大外まで持ち出すと一気に伸びてきました。展開もありましたが、うしろから行って得意の末脚を生かす競馬がうまく嵌まりました。古岡騎手は今回のように、前半ゆっくり行って、終いの脚を生かすような馬でいいレースをすることがあります。

 増田騎手のクールファイブ(2着)、笹川騎手のキョウエイメジャー(3着)も、4コーナー手前では行き場をなくして追い出しを待つような場面がありました。それでも直線を向いて進路を見つけて伸びてきましたが、ブラックネロのキレのほうが一枚上手だったということでしょう。

 1番人気ベラールの山崎騎手は3コーナーから早めに動いて行って、直線では逃げていたミュステーリオンをとらえればという競馬でしたが、勝ちに行ったぶん、最後は甘くなって4着でした。