コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和6年度第5回開催 アルタイル賞 他

 7月23~26日は重賞が組まれていない4日間開催。初日の第8レース、川崎ジャンプアップシリーズ・満漢全席(まんかんぜんせき)賞は、フリフリが直線で1番人気ティーストークを競り落としての勝利。鞍上の新人・佐野遥久騎手はこの開催5勝を挙げ、開催リーディング2位の活躍でした。

 同日第10レースの川崎2000シリーズ・アルタイル賞は、2番手につけたシャンパンファイトが3コーナーで先頭に立って後続を寄せ付けませんでした。鞍上の山崎誠士騎手はこの開催8勝を挙げ、ダントツの開催リーディングとなりました。

 最終日26日第2レースの3歳馬による翡翠(かわせみ)特別は、中団追走のコハナが直線大外に持ち出して豪快に差し切りました。鞍上の古岡勇樹騎手はこの開催、3勝、2着3回で開催リーディング3位でした。また、佐野騎手のアナカプリも直線一旦は先頭に立つ見せ場をつくって惜しくも2着でした。

 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2024年7月23日(火)満漢全席(まんかんぜんせき)賞

優勝馬フリフリ

 ダッシュよくゲートを出たフリフリの佐野騎手は行く気を見せましたが、外枠から森泰斗騎手(ティーストーク)が仕掛けてきて、さらに外から2頭が来たので、佐野騎手は控えて内に入れました。ラチ沿いの絶好位が取れたので、結果的には控えて正解だったと思います。

 1コーナーを回ったあたりで隊列が決まったので、すぐに流れが落ち着きました。3コーナー過ぎでは2、3番手の馬が一杯になって下がったので、佐野騎手は先頭のティーストークの外に出すだけで進路ができました。直線ではこれに並びかけて競り落としました。

 佐野騎手は170センチくらいの長身を活かしてうまく乗っていますが、直線で追い出してから上体が動きすぎるのを直せばもっとよくなると思います。

2024年7月23日(火)アルタイル賞

優勝馬シャンパンファイト

 伊藤裕人騎手(ユキグニ)が逃げて、勝ったシャンパンファイトの山崎騎手はぴたりと2番手につけました。すぐにペースが落ち着きましたが、それでも平均ペースで流れたので、最初のスタンド前でもかかって行くような馬もいませんでした。以前であれば南関東同士の2000メートルのレースともなるとスローペースになることがほとんどでしたが、最近では行く馬がしっかりペースをつくるので極端なスローペースというのもあまり見なくなりました。このレースでも伊藤騎手がレースを引っぱってくれたので、2番手の山崎騎手はレースをしやすかったと思います。ただそれでもシャンパンファイトは道中で行きたがるようなところがあって、向正面に入ったあたりでもなんとか抑えているような感じでした。

 それで3コーナー手前では早めに先頭に抜け出しました。町田騎手のヴェノムが仕掛けて上がってきましたが、山崎騎手の手応えは楽なままでした。直線で差を広げて、ゴール前では今野騎手のタイセイストラーダが迫りましたが、余裕を持っての勝利でした。勝負どころで後続勢が来る前に、早めに先頭に立って押し切るという、ペース判断がよかったと思います。

2024年7月26日(金)翡翠(かわせみ)特別

優勝馬コハナ

 スタートして外めの枠の3頭が競り合うようにハナを争って前半はややペースが速くなりました。5頭が先行集団となって、勝った古岡騎手のコハナはやや離れた6番手集団からの追走でした。

 最後の直線半ばでまず先頭に立ったのは、コハナと同じような位置を追走していた、佐野騎手のアナカプリでした。4コーナーで前3頭が並んで手応えが一杯でしたから、その外に持ち出していきました。

 勝った古岡騎手は、3~4コーナーではラチ沿いを回ってきましたが、直線を向いて前に進路がないと見ると一気に外に持ち出していって、佐野騎手よりもさらに外、馬場の中央まで持ち出して差し切りました。

 佐野騎手もうまく乗って、直線で先頭に立ったときは勝ったと思ったでしょうが、さらに外から差し切られてしまったのでは仕方ありません。これは勝った馬を褒めるべきでしょう。先行集団5頭の中では、ハナを争った3頭のうしろ、1番枠で無理することなくラチ沿いの好位につけた矢野騎手のトップエンプレスが3着に粘りました。

 それにしても、コハナはよくゴール前伸びて差し切りました。古岡騎手は追ってからも姿勢が崩れないところがいいです。